製造業の国内回帰で伸びる派遣需要と狙うべき職種

市場動向

2026/10/8

製造業の国内回帰で伸びる派遣需要と狙うべき職種

工場の国内回帰が進めば、製造派遣の需要も戻る。そう語られることがあります。

この記事では、2025年のデータでその見立てを検証します。そのうえで製造派遣の実像を数字で確認し、狙うべき職種と提案の軸、少人数配置に伴う営業効率の問題まで扱います。

目次

結論:国内回帰は「製造業の雇用増」として現れていない

先に数字を確認します。総務省統計局の労働力調査(基本集計)2025年平均結果によれば、2025年平均の就業者数は6,828万人で前年比47万人の増加でした。5年連続の増加です。

ところが産業別に見ると、「製造業」は1,033万人で13万人の減少。最も増えたのは「医療,福祉」の947万人(25万人増)で、「情報通信業」も302万人(10万人増)と伸びました。一方で「卸売業,小売業」は1,029万人(16万人減)です。

つまり国内に仕事が戻っているとしても、製造業で働く人の数としては増えていないということになります。

増えたのは、正規雇用だった

もう一つ、同じ調査で押さえておきたい数字があります。2025年平均の正規の職員・従業員は3,708万人で54万人の増加、11年連続で増えました。これに対し非正規の職員・従業員は2,128万人で2万人の増加にとどまっています。

役員を除く雇用者に占める非正規の割合は36.5%で、0.3ポイントの低下でした。人手が足りない局面で増えているのは正社員のほうです。

区分

2025年平均

前年からの増減

就業者総数

6,828万人

+47万人

うち製造業

1,033万人

▲13万人

正規の職員・従業員

3,708万人

+54万人

非正規の職員・従業員

2,128万人

+2万人

出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」

国内へ生産を戻す判断は、数年から十数年の回収を前提にした投資です。その担い手を短期契約で組むことは考えにくい。戻ってきた仕事は、正社員で埋められていると読むのが自然でしょう。

多数の工場が点在し、それぞれに少人数だけが配置されている様子を見渡すイラスト

見落とされている論点──製造業は「広く薄く」派遣を使う

では製造業は派遣を使っていないのか。そうではありません。使い方が独特なのです。

厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査(事業所調査の有効回答8,686事業所)によれば、派遣労働者が就業している事業所の割合は全産業で12.3%。産業別では製造業が23.6%と最も高く、情報通信業23.1%、金融業・保険業21.0%と続きます。

ところが、全労働者数に占める派遣労働者の割合を見ると順位が入れ替わります。

産業

派遣が就業している事業所の割合

全労働者に占める派遣の割合

全産業

12.3%

4.0%

製造業

23.6%

7.8%

情報通信業

23.1%

9.5%

サービス業(他に分類されないもの)

14.9%

11.5%

金融業,保険業

21.0%

5.7%

運輸業,郵便業

13.9%

2.8%

出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査

製造業は、使っている事業所の割合は最も高いのに、労働者に占める比率では3番手です。サービス業11.5%、情報通信業9.5%に対して7.8%。多くの工場が派遣を使っているが、1か所あたりの人数は多くないということになります。

受入人数の分布も同じことを示しています。製造業で派遣を受け入れている事業所のうち、「1~4人」が51.6%。「100人以上」はわずか2.8%にとどまります(情報通信業5.0%、サービス業9.7%)。大量投入は例外なのです。

ひとつの大きな箱と、数え切れない小さな箱の群れを見比べる担当者のイラスト

1~4人の配置は、1社あたりいくらになるのか(試算)

少人数が実像だとして、それは売上としてどの程度の大きさになるのか。公表値から試算してみます。

令和6年度の職種別データでは、製品製造・加工処理従事者の派遣料金は8時間換算で16,883円、賃金は11,406円でした。差額は1日あたり5,477円です。

配置の形

人数

年間差額(240日で試算)

同額に必要な社数

少人数の常時配置

2人

約263万円

25社

大量投入

50人

約6,572万円

1社

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)の職種別データをもとに試算。稼働日数は仮定値

2人配置の取引先を25社集めて、ようやく50人規模1社と並びます。少人数で成立するという事実は、同時に社数が要るという事実でもあります。

少人数配置は、営業効率とのトレードオフになる

社数が増えれば、事務も増えます。契約書も勤怠も請求も、人数ではなく取引の件数に比例するからです。

25社と取引するということは、25本の基本契約と、少なくとも50本の個別契約を管理するということです。訪問も請求も25社分になります。1社あたりの売上が小さいほど、1円あたりの管理コストは重くなります。

それでも少人数の側を狙う理由は、母数の差にあります。100人以上を受け入れている事業所は2.8%、1~4人は51.6%。2.8%を追うより、51.6%の側に合わせるほうが確率は高いという判断です。

ただし確率が高いことと、利益が出ることは別です。件数が増える前提なら、請求と勤怠の処理を先に軽くしておく必要があります。件数と管理工数の関係は「人材派遣のビジネスモデルは今後も続くのか」で詳しく扱いました。

狙うべき職種をどう絞るか

ここから先は、公開データから導ける考察です。断定ではないので、自社の取引先で確かめてください。

手がかりは二つあります。ひとつは、製造派遣の実像が少人数の常時配置であること。もうひとつは、派遣を使う理由の分布です。最も高いのは「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」で76.5%。「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」は37.2%にとどまります(同調査、複数回答3つまで)。

狙いどころの職種

データから読める根拠

提案の切り口

品質検査・測定

少人数で常時必要。工程とは別の人手が要る

検査記録の様式ごと引き受ける

設備保全の補助

自動化が進むほど設備あたりの手間が残る

夜間・休日の当番を含めた枠で

生産管理・生産事務

欠員補充の需要が最も大きい領域

納期調整の窓口として置く

購買・調達事務

国内調達への切替で取引先が増える

見積・発注の一次処理から

出荷・構内物流

工程が自動化しても出荷は人が残る

波動対応と合わせて提案

共通しているのは、1~4人で成立し、かつ長く置ける仕事である点です。50人規模のライン要員を狙う提案は、データ上そもそも母数が小さいといえます。職種の見極め方そのものは「労働人口の減少で需要が伸びる派遣職種・業界の見極め方」で整理しました。

3年の期間制限を、提案の中に先に組み込む

労働者派遣法上、同一の組織単位で働ける期間は原則3年です。少人数を長く置く形を前提にするなら、必ずこの論点に当たります。

検査員を1人、3年置いたとします。代替が効かない配置であるほど、期間満了は派遣先にとっても痛手です。だからこそ、到達の数か月前ではなく、提案の段階で出口を示しておくほうが信頼されます。

選択肢は二つです。無期雇用へ切り替えて同じ人を置き続けるか、後任への引き継ぎ期間を契約に織り込むか。どちらを採るかで、必要な人件費も採用計画も変わります。

少人数配置では、この設計が抜けると3年目に一気に崩れます。年次の一覧を作り、到達時期と切替方針をセットで持っておいてください。

かみ合う歯車の列から小さな歯車を一つ取り外し、空いた隙間が残っているイラスト

提案の形も変わる

人数で勝負できないとなると、提案の軸は別のところに移ります。その1人が抜けたときに工場が止まるかどうかです。

検査員が1人しかいない工程、保全の夜間当番、出荷の締め処理。いずれも人数は少ないのに、欠けると全体が止まります。欠員補充が派遣を使う最大の理由であるという調査結果は、この見方と符合します。

止まると困る場所に、確実に1人を置き続ける。これが製造派遣で売るべき価値だと考えられます。

だとすれば、定着の設計がそのまま提案力になります。少人数配置では代替が効かないぶん、途中交代の影響が大きいからです。就業初期の設計は「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」でも整理しています。

想定ケース|同じ工場を訪問した二社

以下は、ここまでの数字から組み立てた想定ケースです。実在の企業ではありません。

Y社は従業員180人の部品工場に、ライン要員20人の枠を提案しました。先方の回答は「いまは増産の予定がない」。受入実績を聞くと、過去に入れたのは検査1人と出荷2人だけでした。

Z社は同じ工場で、先に「いま1人しかいない持ち場はどこか」を聞きました。出てきたのは外観検査の担当者で、その人が休むと出荷が止まるとのことでした。検査記録の様式づくりまで含めて2人体制を提案し、受注します。年間の差額は約263万円でした。

差を生んだのは価格でも人数でもなく、どこが止まるかを先に聞いたかどうかです。製造業への新規開拓そのものの進め方は「製造業の派遣案件を獲得する方法」も参考になります。

今日から備えるために

まず、自社の製造系取引先を受入人数で分類してください。1~4人の取引先が何社あるかを数えるところから始めます。全国の分布と比べて自社が偏っていれば、狙う層を見直す余地があります。

次に、稼働中の案件について「この人が抜けたら止まるか」を確認します。止まる案件は単価交渉の余地があり、止まらない案件は入れ替えが起きやすい領域です。

そのうえで、提案する職種を検査・保全補助・生産事務など少人数で成立するものに絞り込みます。同時に、1社あたりの事務にかかる時間も測っておいてください。社数が増える前提なら、ここが利益を決めます。

最後に、3年の期間制限に到達する時期を一覧にします。新規の接点づくりについては「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」も参考になります。

今日から実践するためのチェックリスト

製造系の取引先を、受入人数(1~4人/5~29人/30人以上)で分類した

各区分の社数と売上を集計した

1社あたりの年間差額を試算し、目標額に必要な社数を出した

1社あたりの事務処理にかかる時間を測った

稼働中の案件を「抜けたら止まる/止まらない」で仕分けた

止まる案件について、単価改定の優先順位を付けた

提案職種を検査・保全補助・生産事務などに絞り込んだ

各職種で提案できる人数の目安を決めた

初回訪問で「いま1人しかいない持ち場」を聞く質問を標準化した

同一組織単位での3年到達時期を一覧化した

無期雇用への切替候補を、職種ごとに洗い出した

まとめ

製造業の国内回帰が派遣需要を押し上げるという見方は、2025年のデータでは確認できませんでした。製造業の就業者は13万人減り、増えたのは正規雇用(54万人増)です。国内へ戻った仕事は、正社員で埋められていると読めます。

一方で製造業は、派遣を使っている事業所の割合が23.6%と全産業で最も高い産業でもあります。ただし受入人数は1~4人が51.6%。実像は大量投入ではなく、少人数の常時配置です。

少人数は確率が高い代わりに社数が要ります。試算では、2人配置25社でようやく50人1社と並びました。事務の負担を先に軽くしておかないと、社数が増えるほど利益は薄くなります。

狙うべきは、1人が抜けると止まる仕事。まずは取引先を受入人数で分類するところから始めてみてください。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 2025年平均の製造業就業者数について、労働力調査は何を示していますか?

A. 1,033万人で前年比13万人の減少。全産業の就業者は47万人の増加
B. 製造業だけが大きく増加した
C. 全産業・製造業ともに減少した

正解:A
解説:「結論」の章のとおりです。最も増えたのは「医療,福祉」の25万人増でした(総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」)。

Q2. 製造業の派遣の使われ方について、調査はどのような特徴を示していますか?

A. 派遣が就業している事業所の割合は23.6%と全産業最高だが、労働者に占める割合は7.8%で情報通信業やサービス業より低い
B. 事業所の割合も労働者に占める割合も、全産業で最も高い
C. 派遣をほとんど使っていない

正解:A
解説:「見落とされている論点」の章のとおりです。受入人数は「1~4人」が51.6%を占め、「100人以上」は2.8%にとどまります(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査)。

Q3. 少人数配置を狙う方針には、どのような副作用がありますか?

A. 1社あたりの売上が小さいため社数が必要になり、契約・勤怠・請求の件数が増える
B. 社数が減るため、管理の手間は軽くなる
C. 単価が自動的に上がるため、負担は生じない

正解:A
解説:「少人数配置は、営業効率とのトレードオフになる」の章のとおりです。試算では2人配置25社で50人1社と並びました。事務の処理を先に軽くしておく必要があります。

ハケンバンクについて

少人数で成立する職種は、求人として表に出にくい傾向があります。検査員が1人、保全の夜間当番が1人といった枠は、募集広告より先に既存の取引で埋まることが多いためです。

ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均結果」

・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査の有効回答8,686事業所)

・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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