人材派遣のビジネスモデルは今後も続くのかを考察

業界コラム

2026/9/15

人材派遣のビジネスモデルは今後も続くのかを考察

人材派遣というモデルは、これから先も成り立つのか。スポットワークの台頭とともに、この問いを聞く機会が増えました。

この記事では、契約期間の分布と働く側の意識調査から、モデルがどう変わりつつあるのかを整理します。あわせて、件数と粗利と管理工数のずれを試算し、どちらの端に寄せるかの判断材料まで扱います。

目次

結論:モデルは続く。ただし「いまの形」では続かない

先に結論を書きます。人材派遣というモデルは続きます。ただし、いまの形のままでは続きません。

すでに契約は、日単位の方向と、無期・専門型の方向へ分かれ始めています。細っていくのは、その真ん中にある「月単位・登録型・汎用職種」という、これまで最も一般的だった形です。

厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によれば、派遣労働者は約220万人、業界全体の年間売上高は9兆9,005億円でした。市場そのものは縮んでいません。問われているのは総量ではなく、その中身がどう入れ替わっていくかです。

契約はすでに日単位へ寄っている

最初の手がかりは、契約期間の分布です。

派遣契約の期間

割合

1日以下

25.7%

1日超7日以下

2.6%

7日超1月以下

8.1%

1月超2月以下

20.9%

2月超3月以下

28.4%

3月超6月以下

10.2%

6月超12月以下

3.2%

1年超3年以下

0.6%

3年を超えるもの

0.2%

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)。件数ベース

最も多いのは2月超3月以下の28.4%です。しかしその次に多いのが、1日以下の25.7%でした。件数ベースの集計なので短期契約が構成比を押し上げる点には注意が要りますが、それにしても4件に1件が1日以下という数字は目を引きます。

一方、3か月を超える契約は合計しても14.2%しかありません。1年を超えるものは0.8%です。派遣契約の大半は、すでに四半期以内で完結している。長期の人員計画を派遣で埋めるという使われ方は、件数の上では少数派になっているということです。

多数の小さな箱より、ひとつの大きな箱のほうへ傾いた天秤を見る担当者のイラスト

件数の25.7%は、粗利の何%なのか(試算)

ここで注意したいのは、件数と粗利はまったく別の話だという点です。1日の契約も3か月の契約も、件数としては同じ1件と数えられます。

令和6年度の全業務平均では、派遣料金26,257円に対して賃金は16,735円でした。差額は1日あたり9,522円です。この数字を使って、年間1,000件を受注する会社を想定して試算してみます。

区分

件数

1件あたり稼働日数

差額の合計(試算)

構成比

1日以下

257件

1日

約245万円

約1.5%

2月超3月以下

284件

60日

約1億6,225万円

約98.5%

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)の全業務平均をもとに試算。稼働日数は仮定値

件数では25.7%と28.4%でほぼ並ぶ二つの区分が、差額では約66倍の開きになります。件数の構成比を事業の構成比と読み替えると、判断を誤ります。

もちろん実際には職種も単価も違いますし、1日以下の契約は同じスタッフが繰り返し稼働することもあります。それでも、件数の多さがそのまま収益の柱を意味しないことは押さえておきたいところです。売上と利益がかみ合わない構造は「売上が伸びても利益が残らない理由と対策」でも扱いました。

働く側も、時間を細かく配分する方向へ動いている

では、働く側はどうか。日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査(有効回答5,523人)に、スポットワークについての設問があります。

スポットワークについて

割合

派遣としてしたことがある

28.7%

アルバイトとしてしたことがある

26.5%

派遣やアルバイト以外としてしたことがある

5.2%

したことがない

49.7%

(参考)今後したいと思う・計

41.5%

出典:日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」(有効回答5,523人)。経験の3項目は複数回答

「したことがない」は49.7%。裏を返せば、半数はすでにスポットワークを経験していることになります。今後したいと思う人も41.5%です。

理由の最多は「追加収入を得るための副業として」で71.8%、次いで「休日や夏休みなど都合のよい時にできるので」が57.9%でした。まとまった期間を一社に預ける働き方から、時間を細かく配分する働き方へ。その意向が、はっきり数字に出ています。

見落とされている論点──スポットワークは、すでに派遣の内側にある

ここで注目したいのは、経験の内訳です。スポットワークを「派遣として」経験した人が28.7%、「アルバイトとして」が26.5%。アルバイトより派遣のほうが多いのです。

これは、スポットワークが派遣の外側にある競合ではなく、すでに派遣の一形態として内側に入っていることを示しています。先ほどの契約期間で1日以下が25.7%を占めていた事実とも、きれいに符合します。

「スポットワークに市場を奪われる」という語られ方をよく聞きます。しかしデータを見る限り、そう単純ではありません。奪われているのではなく、派遣会社自身がその担い手になっている。

だとすれば問うべきは、そこで得られる粗利が、従来の月単位契約と同じ管理体制で回せるのかという点です。契約書も勤怠も請求も、件数に比例して増えていきます。

机の上に積み上がった同じ書類の山を見上げる担当者のイラスト

管理工数は、契約の長さではなく件数で増える

ここが、日単位へ寄るときの実務上の要点です。1件あたりの事務は、契約の長さにあまり依存しません。

個別契約書の作成、就業条件明示書の交付、抵触日の管理、勤怠の確認、請求書の発行。これらは3か月契約でも1日契約でも、原則として1件ごとに発生します。

仮に1件あたりの事務処理に合計30分かかり、内勤者の時間あたり人件費を2,500円とすると、1件につき約1,250円です。先ほどの試算で1日以下が257件なら、年間で約32万円になります。この区分の差額合計245万円に対して、13%ほどが事務処理で消える計算です。

これは自動化できていない場合の数字で、数値はすべて仮定を置いた試算です。それでも、日単位へ寄せるなら処理の自動化が前提条件になる、という方向は見てとれます。件数が増えるほど利益が減る構造を避けるには、ここを先に設計する必要があります。

両端が太く中央だけが細くなった帯の、その細い部分に立つ担当者のイラスト

もう一方の端も伸びている──中間が細る

日単位とは反対の端も伸びています。同じ集計では、無期雇用の派遣労働者が前年度比7.9%増、有期雇用は1.3%増でした。稼働に占める無期の比率は41.3%です。

伸びているのは両端で、細るのは中間という構図が見えてきます。

背景には、労働力そのものの制約もあります。リクルートワークス研究所の未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる(2023年)は、2040年に1,100万人の労働供給不足が生じると推計しました。

人が希少になるほど、働き手は自分の時間の使い方を選べるようになります。中間の形が選ばれにくくなるのは、自然な流れなのかもしれません。人材不足を追い風と呼べるかは「「人材不足」は派遣会社にとって本当に追い風なのか」、生き残る条件は「派遣会社は淘汰の時代へ」でも整理しています。

無期41.3%は、守りではなく別のリスク

無期雇用の比率が上がることを、安定の証と読むのは早計です。構造としては、むしろリスクの置き場所が変わっただけです。

有期・登録型では、契約が終われば雇用も終わります。稼働の空白は会社の損益に直接は乗りません。一方、無期雇用では稼働が途切れている間の賃金も会社が負担します。

つまり無期へ寄せるという判断は、案件の連続性を自社が保証するという判断です。次の派遣先を常に用意できるか、できないときの待機コストを吸収できるか。ここが成立しなければ、無期化は収益を圧迫します。

日単位は件数の管理が勝負、無期・専門は稼働の連続性が勝負。同じ「両端へ寄る」でも、必要な能力はまったく違います。専門性をどう設計するかは「派遣会社の未来は専門性で決まる理由」で扱いました。

両端に寄せるとき、何が要るか

二つの方向で必要になるものを並べると、違いがはっきりします。

項目

日単位・スポット型へ寄せる

無期・専門型へ寄せる

勝負どころ

件数をさばく処理能力

稼働の連続性

必要な仕組み

契約・勤怠・請求の自動化

訓練の設計と案件の確保

営業先

繰り返し発注してくれる取引先

一定期間と単価が見込める取引先

主なリスク

件数が増えるほど事務費で粗利が溶ける

待機期間の賃金を自社が負担する

見るべき指標

1件あたりの処理時間と粗利額

無期比率と稼働率、職種別の粗利

どちらを選ぶかは、いまの契約構成と社内の体制で決まります。両方を同時に追うと、どちらの条件も満たせないまま中間に残ることになります。

想定ケース|同じ結論から別の端を選んだ二社

以下は、ここまでの数字から組み立てた想定ケースです。実在の企業ではありません。

U社は契約の6割が1か月以内でした。粗利額で見ると全体の2割ほどしかありません。そこで日単位側へ寄せると決め、まず請求書の発行と勤怠の集計を自動化します。1件あたりの事務を30分から10分に縮め、同じ内勤体制で件数を1.8倍まで伸ばしました。

V社は同じ分析をして、逆の結論に至ります。3か月超の契約が粗利の7割を占めており、職種も技術系に偏っていました。無期・専門型へ寄せると決め、既存の派遣先3社と年間の枠を先に握ってから、無期雇用を増やします。待機が出る月もありましたが、枠があるため吸収できました。

分かれ目は、件数を増やす力があるか、稼働を切らさない力があるかです。どちらも無いまま中間に留まるのが、いちばん苦しい形になります。

今日からできる改善策

自社がどちらへ寄っているかは、契約データを見ればすぐに分かります。直近1年の契約を、1か月以内、1か月超3か月以内、3か月超の三つに分けてください。

件数だけでなく、粗利額でも分けることが要点です。件数は多いのに粗利が薄い区分があるなら、そこは管理の設計そのものを変えるべき領域です。

同じ集計では派遣先件数が861,926件と前年度から7.9%増えており、取引の細分化は業界全体で進んでいます。件数の増加に管理体制が追いつかなければ、伸びるほど利益が減ります。

逆に3か月超の比率が高い会社であれば、専門型へ寄せる余地があるということです。職種構成の考え方は「派遣会社は専門特化と総合型どちらを目指すべきか」、毎月追うべき数字は「派遣会社の経営者が毎月確認すべき経営指標一覧」が参考になります。

今日から実践するためのチェックリスト

直近1年の契約を、1か月以内・1か月超3か月以内・3か月超の三区分で件数集計した

同じ三区分で、粗利額の構成比を算出した

件数の構成比と粗利額の構成比のずれを確認した

区分ごとに、1件当たりの管理工数(契約・勤怠・請求)を見積もった

1件あたりの事務コストを金額に換算し、区分ごとの粗利と比べた

1日以下の契約が自社の件数と粗利に占める割合を確認した

稼働人数に占める無期雇用の比率を算出した

無期雇用の待機が出た場合に負担できる月数を見積もった

3か月超の契約が多い職種を特定した

短期契約の事務処理で、自動化できる工程を洗い出した

自社が両端のどちらへ寄るのかを、経営会議の議題として設定した

まとめ

派遣というモデルが消えるという見立てには、いまのところ根拠が乏しいと感じます。市場は9兆円台を保ち、取引件数はむしろ増えています。変わっているのは形のほうです。

日単位へ寄る流れと、無期・専門へ寄る流れ。両端が伸び、中間が細っていきます。ただし件数の構成比と粗利の構成比は一致しません。試算では、件数で並ぶ二つの区分が差額では約66倍の開きになりました。

日単位に寄るなら件数をさばく仕組みが、無期・専門に寄るなら稼働を切らさない力が要ります。どちらの端に立つのかは、いま決めておいたほうがよさそうです。まずは契約を期間別に分け、粗利額と管理工数を並べてみてください。答えは、自社のデータの中にあります。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 派遣契約の期間について、令和6年度の集計で二番目に多い区分はどれですか?

A. 1日以下(25.7%)
B. 3月超6月以下(10.2%)
C. 1年超3年以下(0.6%)

正解:A
解説:「契約はすでに日単位へ寄っている」の章のとおり、最多は2月超3月以下の28.4%で、次いで1日以下が25.7%です(厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和6年度、件数ベース)。

Q2. 派遣スタッフのスポットワーク経験について、調査はどのような内訳を示していますか?

A. アルバイトとしての経験が派遣としての経験を大きく上回る
B. 派遣としての経験が28.7%で、アルバイトとしての26.5%を上回る
C. 経験者はごく少数にとどまる

正解:B
解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおり、スポットワークはすでに派遣の一形態として内側に入っています(日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」有効回答5,523人、複数回答)。

Q3. 無期雇用の比率を上げるという判断には、どのような負担が伴いますか?

A. 契約が終われば雇用も終わるため、稼働の空白は損益に乗らない
B. 稼働が途切れている間の賃金も会社が負担するため、案件の連続性を自社が保証することになる
C. 派遣料金が自動的に上がるため、負担は生じない

正解:B
解説:「無期41.3%は、守りではなく別のリスク」の章のとおりです。無期化はリスクをなくすのではなく、置き場所を移す判断になります。

ハケンバンクについて

両端のどちらへ寄るにしても、必要になるのは自社の方針に合った案件です。無期・専門型に寄せるなら一定の期間と単価が見込める案件が、日単位に寄せるなら件数をさばける取引先が要ります。

ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

・リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」(2023年)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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