倉庫自動化で物流派遣の仕事はなくなる?今後の需要を解説

市場動向

2026/10/13

倉庫自動化で物流派遣の仕事はなくなる?今後の需要を解説

倉庫の自動化が進めば、庫内の派遣の仕事はなくなる。そう聞くことが増えました。

この記事では、公的統計からその前提を確かめます。そのうえで自動化で減る仕事と残る仕事を整理し、単価の不利を試算し、記録業務という新しい領域まで扱います。

目次

結論:庫内作業は、もともと人が余っている

先に数字を示します。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分、常用・パート含む、全国計)によれば、「運搬・清掃・包装等従事者」の有効求人倍率は0.65倍でした。職業計の1.05倍を大きく下回っています。

実数で見るとさらにはっきりします。この区分の有効求人は167,748人に対し、有効求職は258,503人。求職者のほうが約9万人多い計算です(編集部試算)。

一方で「自動車運転従事者」は2.53倍。同じ物流でも、足りていないのはトラックを運転する人であって、倉庫の中で働く人ではありません。運転職側の動きは「物流2024年問題が派遣市場に与えた影響と今後の需要変化」で扱いました。

長い行列に対して通れる扉はひとつだけという、求職者が多い状況を表したイラスト

職業別に並べてみる

参考統計表から、関連する職業を抜き出します。

職業

有効求人倍率

建設躯体工事従事者

7.94倍

介護サービス職業従事者

3.82倍

自動車運転従事者

2.53倍

生産工程従事者

1.59倍

清掃従事者

1.10倍

職業計

1.05倍

運搬従事者

1.03倍

包装従事者

0.82倍

運搬・清掃・包装等従事者(計)

0.65倍

一般事務従事者

0.29倍

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)参考統計表」常用(パート含む)、全国計

運搬従事者は1.03倍、包装従事者は0.82倍。区分全体では「その他の運搬・清掃・包装等従事者」が0.29倍と低く、これが平均を押し下げています。庫内作業は、応募が集まりやすい職種だということです。

この事実は、自動化をめぐる議論の前提を変えます。人がいないから機械で置き換えるという構図ではありません。人はいる。それでも自動化が進んでいるのです。

見落とされている論点──派遣が使われる理由は「人がいないから」ではない

では、なぜ派遣が使われているのか。厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査(事業所調査)で、派遣労働者を就業させる理由を見ると答えが出ます。

派遣労働者を就業させる理由

割合

欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため

76.5%

一時的・季節的な業務量の変動に対処するため

37.2%

軽作業、補助的業務等を行うため

30.9%

出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査(複数回答3つまで)

最も多いのは「迅速に確保できるため」です。人が世の中にいるかどうかではなく、必要なときにすぐ配置できるかどうかが使われる理由になっています。次に多いのが業務量の変動への対処です。

自動化はこの二つを消しません。むしろ設備を入れるほど固定費が重くなり、波の部分を設備で吸収するのは不経済になります。ピーク時に合わせて設備を組めば、閑散期には遊びます。

伸縮する部分は人で持つ。この構図は自動化が進むほど強まると考えるのが自然でしょう。

一点、指標の性質にも触れておきます。有効求人倍率はハローワークに出された求人と求職だけを集計した数字で、求人媒体や派遣を通じた募集は含まれません。それでも職業間の相対的な差を見る指標としては有効です。運転職2.53倍と庫内0.65倍という開きは、募集経路の違いだけで説明できる水準ではないでしょう。

応募が集まる職種は、単価でどれだけ不利なのか(試算)

求人倍率が低いことは、募集が楽であることを意味します。同時に単価が上がりにくいことの裏返しでもあります。その差がどの程度かを、公表値から試算してみます。

令和6年度の職種別データでは、製品製造・加工処理従事者の派遣料金は8時間換算で16,883円、賃金は11,406円、差額は5,477円でした。全業務平均は料金26,257円、賃金16,735円、差額9,522円です。

区分

1日あたり差額

10人・240日の年間差額(試算)

全業務平均

9,522円

約2,285万円

製品製造・加工処理従事者

5,477円

約1,314万円

差

4,045円

約971万円

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)をもとに試算。稼働日数は仮定値

同じ10人を動かしても、年間で約971万円の開きが出ます。応募が集まる職種は、価格で比較されやすい。人数で受けるほど、この圧力は強くなります。

この構図から抜けるには、人数ではない受け方へ寄せるしかありません。何を単価の根拠にするかは「製造業の国内回帰で伸びる派遣需要と狙うべき職種」でも同じ論点として扱いました。

なお、この試算は職種の平均値を当てはめたものです。実際の単価は地域や取引先によって上下しますし、庫内でも役割を限定した枠なら平均を上回ることがあります。桁の感覚として受け取ってください。

自動で流れるコンベヤから、形の崩れた荷物だけを人が取り上げているイラスト

自動化で減る仕事と、残る仕事

以下は公開データから導ける考察です。断定ではないので、自社の取引先で確かめてください。

庫内の仕事

自動化との関係

見通し

保管・搬送

自動倉庫・搬送機の中心領域

減りやすい

定型のピッキング

仕分け機との相性が良い

減りやすい

検品・検数

判断が入り、例外が残る

残りやすい

返品・不良の処理

定型化しにくい

残りやすい

流通加工・ラベル貼り

案件ごとに仕様が変わる

残りやすい

入出荷の時間枠管理

記録と調整の仕事

増える可能性がある

分かれ目は、手順が固定できるかどうかです。同じ形のものを同じ場所へ運ぶ仕事は機械に向きます。届いた荷物が想定と違ったときにどうするかは、機械には渡しにくい。

並んだトラックの前でストップウォッチと用紙を手に時間を記録する担当者のイラスト

記録の仕事は、どれだけの時間になるのか(試算)

表の最後の行について補足します。改正物流効率化法では、2025年4月から荷待ち時間・荷役時間の短縮が荷主等の努力義務となりました。さらに2026年4月からは、一定規模以上の特定事業者に中長期計画の作成が義務づけられています(国土交通省 物流効率化法ポータルサイト)。

努力義務から計画義務へ、段階的に重くなっている領域です。計画を作るには実績の数字が要り、実績を出すには日々の記録が要ります。

時間を測り、記録し、報告する仕事が現場に加わっています。これがどの程度の分量になるのか、仮の数字で置いてみます。

1日にトラックが30台出入りする倉庫で、1台あたり到着・荷役開始・終了の記録に5分かかるとします。1日150分、月20日で50時間です。月50時間なら、1人の役割として切り出せる水準になります。

数値はすべて仮定を置いた試算です。それでも、義務化されたばかりで様式も固まっていない領域には、人手が足りていない可能性があります。物流企業への提案の組み立て方は「物流会社から派遣案件を獲得する営業のポイント」も参考になります。

需要はどこへ向かうのか

以上を踏まえると、庫内派遣の需要は「なくなる」のではなく、中身が入れ替わると見るのが妥当です。

減るのは、人数で押す部分。増えるのは、例外処理と記録の部分です。前者は単価が上がりにくく、後者は経験が効きます。同じ人を長く置けるほうが有利になるという点では、製造の現場と同じ方向を向いています。

だとすれば、備えるべきは提案の中身より先に定着です。例外処理を任せられる人は、その現場を知っている人に限られます。就業初期の設計は「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」でも整理しています。

自動化の計画を聞いたら、何を確認するか

判断に迷うのは、取引先が自動化の計画を口にした段階です。撤退を急ぐと、実際には数年先だったということが起こります。逆に何もしなければ、稼働が始まってから慌てることになります。

まず確認すべきは導入時期ではなく、自動化の対象になる工程がどこかです。対象から外れる工程が残っていれば、そこが次の提案先になります。

聞く順番としては、どの工程を機械に任せるのか、その工程にいま何人いるのか、残る工程は誰が担うのか、の三つです。三つ目に答えが出てこなければ、そこが提案の余地になります。

また、自動化の直後は不具合や例外が増えます。立ち上げ期に人を厚くしたいという要望は、むしろ自動化を機に出てくることがあります。撤退の相談ではなく、立ち上げの相談として聞いておくほうが実態に近いでしょう。

想定ケース|自動仕分け機の導入を聞いた二社

以下は、ここまでの内容から組み立てた想定ケースです。実在の企業ではありません。

C社は取引先から「来期に自動仕分け機を入れる」と聞き、庫内案件の縮小を見込んで新規開拓を別業種へ振りました。半年後、導入は2年先に延期され、その間に別の派遣会社が返品処理の枠を取っています。

D社は同じ話を聞いて、対象工程を確認しました。自動化されるのはピッキングと搬送で、検品と返品処理は対象外。そこで検品2人と返品処理1人の枠を提案し、あわせて荷待ち時間の記録を引き受けました。導入後も稼働は減っていません。

違いは縮小の話として聞いたか、工程の話として聞いたかでした。自動化は現場の全部を置き換えるわけではありません。

今日から備えるために

まず、庫内案件を「手順が固定できる仕事」と「例外が入る仕事」に仕分けてください。後者の比率が、自動化後に残る割合の目安になります。

次に、例外処理を担っている人が誰かを特定します。仕様変更の対応、イレギュラー品の判断、返品の仕分け。名前が挙がる人がいる案件は、置き換えが効きにくい案件です。

そのうえで、荷待ち・荷役時間の記録を引き受ける提案を用意してください。2026年4月から義務が始まった領域であり、現場では手が足りていない可能性があります。

最後に、例外処理を任せられる人を増やすための引き継ぎ手順を決めます。新規の接点づくりについては「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」も参考になります。

今日から実践するためのチェックリスト

庫内案件を「手順が固定できる/例外が入る」で仕分けた

例外が入る案件の比率を算出した

庫内案件の1人1日あたり差額を算出し、社内平均と比べた

例外処理を担っているスタッフを案件ごとに特定した

その人が抜けた場合の代替可否を確認した

荷待ち・荷役時間の記録を提案できる様式を用意した

記録業務に必要な時間を試算し、人数の目安を出した

取引先の自動化投資の予定を確認した

自動化の対象工程と、対象外の工程を書き分けた

人数で受けている案件と、役割で受けている案件を分けて集計した

例外処理の引き継ぎ手順を文書化した

まとめ

倉庫自動化で庫内派遣の仕事がなくなるという見方は、統計の前提と合いません。運搬・清掃・包装等従事者の有効求人倍率は0.65倍で、求職者のほうが約9万人多い状態です。自動化は人手不足を埋めるために進んでいるわけではありません。

派遣が使われている理由の上位は「迅速に確保できるため」76.5%と「業務量の変動への対処」37.2%でした。自動化はこの二つを消さない。減るのは手順が固定できる部分で、残るのは例外処理と記録です。

一方で、応募が集まる職種は単価で不利になります。試算では10人・年240日で約971万円の差が出ました。人数で受けるほど価格競争にさらされます。

まずは自社の庫内案件を、手順が固定できる仕事と例外が入る仕事に仕分けるところから始めてみてください。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 「運搬・清掃・包装等従事者」の有効求人倍率について、公的統計は何を示していますか?

A. 0.65倍で、職業計の1.05倍を下回り、求職者のほうが多い
B. 3倍を超える極端な人手不足である
C. 職業計とほぼ同じ水準である

正解:A
解説:「結論」の章のとおりです。同じ時点で「自動車運転従事者」は2.53倍でした(厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年7月分、常用・パート含む)。

Q2. 派遣労働者を就業させる理由として最も多いものはどれですか?

A. 欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため(76.5%)
B. 人件費を削減するため
C. 教育訓練を派遣元に任せるため

正解:A
解説:「見落とされている論点」の章のとおりです。次いで「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」37.2%が続きます(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査)。

Q3. 取引先の倉庫に自動仕分け機が導入されることになりました。営業としてまず確認すべきことはどれですか?

A. 導入の時期だけを確認し、それまでの売上を見込む
B. 自動化の対象になる工程と、対象から外れる工程を確認する
C. 人数を増やす提案で対抗する

正解:B
解説:「自動化の計画を聞いたら、何を確認するか」の章のとおりです。検品・返品処理・流通加工といった例外の入る仕事は残りやすく、そこが次の提案先になります。

ハケンバンクについて

例外処理や記録の仕事は、求人票では「軽作業」と一括りにされがちです。実際に何を任せたいのかは、話してみないと分かりません。

ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和8年7月分 参考統計表、職業別・常用(パート含む)・全国計)

・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査の有効回答8,686事業所)

・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
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