
求職者集客・採用
応募単価が高い。そう感じたとき、多くの会社はまず広告の設定を見直します。
この記事では、応募単価の前に決めるべきことを整理します。契約の長さから許容できる採用コストを逆算し、職種による応募の集まりやすさの差を確認したうえで、見直すべき5つのポイントを扱います。
目次
応募単価が高いと、多くの会社は「広告予算を増やす」「クリック単価を下げる」といった施策を考えます。しかし派遣会社では、それだけでは改善しないケースが少なくありません。
派遣会社の収益は、派遣スタッフが実際に就業し、一定期間稼働して初めて生まれます。そのため、本来見るべき指標は応募単価だけではありません。登録単価、就業単価、さらには一定期間稼働したスタッフ1人あたりの獲得コストまで含めて判断する必要があります。
応募単価が3,000円の媒体と5,000円の媒体があったとします。前者は応募後の辞退が多く、後者は登録率や就業率が高いのであれば、最終的な費用対効果は逆転します。CPAだけで媒体を評価すると、利益につながる媒体を止めてしまうこともあるため注意が必要です。

派遣会社が確認すべき代表的なKPIは次のようになります。
指標 | 確認すべき内容 |
|---|---|
応募単価(CPA) | 応募1件を獲得するための広告費 |
登録単価 | 登録者1人あたりの獲得コスト |
就業単価 | 就業開始1名あたりの採用コスト |
稼働単価 | 一定期間稼働したスタッフ1人あたりの獲得コスト |
重要なのは、CPAは途中経過の数字に過ぎないという点です。最終的な利益につながる指標まで追うことで、広告費の使い方は大きく変わります。媒体別の配分の決め方は「派遣会社の求人広告費の予算配分の決め方」で扱いました。

そもそも、1人採用するのにいくらまでかけてよいのか。これは契約の長さから逆算できます。
厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)に、判断の土台になる数字があります。派遣料金(8時間換算)の全業務平均は26,257円、派遣労働者の賃金は16,735円。差額は1日あたり9,522円です。
契約の長さ | 稼働日数 | 差額の合計(試算) | 就業単価を1割に抑える場合の上限 |
|---|---|---|---|
1日以下 | 1日 | 9,522円 | 約950円 |
1か月 | 20日 | 190,440円 | 約19,000円 |
3か月 | 60日 | 571,320円 | 約57,000円 |
出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)の全業務平均をもとに試算。稼働日数と1割という基準は仮定値
同じ就業単価5万円でも、3か月契約なら回収できますが、1日契約では大きく割に合いません。許容できる採用コストは、案件によって60倍の開きがあります。
そして令和6年度の集計では、契約の85.7%が3か月以内に終わっています。1日以下だけで25.7%です。社内で単一のCPA目標を置くと、短期案件では必ず赤字になります。
もう一つ、目標値を一本化できない理由があります。職種による差です。
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分、常用・パート含む、全国計)から、関連する職業を抜き出します。
職業 | 有効求人倍率 | 応募の集まりやすさ |
|---|---|---|
建設躯体工事従事者 | 7.94倍 | 極めて集まりにくい |
介護サービス職業従事者 | 3.82倍 | 集まりにくい |
自動車運転従事者 | 2.53倍 | 集まりにくい |
生産工程従事者 | 1.59倍 | やや集まりにくい |
職業計 | 1.05倍 | - |
運搬・清掃・包装等従事者 | 0.65倍 | 集まりやすい |
一般事務従事者 | 0.29倍 | 極めて集まりやすい |
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)参考統計表」常用(パート含む)、全国計
建設躯体の7.94倍と一般事務の0.29倍では、約27倍の開きがあります。同じ広告費で集まる人数が、職種によってまるで違うということです。
CPAが高い職種は、運用が下手なのではなく、母集団そのものが薄い可能性があります。職種を区別せずに平均CPAだけを見ていると、改善すべき場所を取り違えます。
ここからは、実際に手を入れる順番で5つに整理します。広告の設定より前に効く順です。
求人原稿には仕事内容や給与、勤務地が細かく記載されている一方で、「なぜこの派遣会社を選ぶべきなのか」が伝わっていないケースが多く見られます。
求職者は同じ職種で複数の求人を比較しています。製造職や物流職、事務職などでは、仕事内容が似通うことも珍しくありません。
その中で応募を決める要素になるのは、担当者のフォロー体制、職場見学の有無、就業開始までのスピード、福利厚生、相談のしやすさなど、派遣会社ならではの価値です。
つまり、仕事内容を詳しく書くだけでは差別化は難しく、「応募後に安心して働けそうか」という不安を解消する情報を盛り込むことが重要です。反応が鈍いときの見直し方は「派遣の求人広告で反応が悪い原因と改善方法」でも整理しています。
応募単価を改善できない会社では、「応募数が多い媒体=良い媒体」と考えがちです。しかし実際には、媒体ごとに集まりやすい人材層や就業率は異なります。
短期案件との相性が良い媒体もあれば、長期就業希望者が多い媒体もあります。若年層に強い媒体と経験者が集まりやすい媒体では、その後の登録率や定着率にも違いが生まれます。
そのため、媒体を評価する際は、「応募数」ではなく「自社が採用したい人材をどれだけ集められるか」という視点が欠かせません。同じCPAでも、ターゲットとの適合度が高い媒体のほうが就業単価は下がります。媒体の選び方は「派遣会社の求人媒体は何社使うべきか」が参考になります。
応募単価の改善というと広告運用に目が向きがちですが、実際には応募後の対応品質も大きく影響します。広告費をかけて獲得した応募者が連絡待ちのまま離脱してしまえば、その広告費は実質的に無駄になります。
求職者は複数の派遣会社へ同時に応募することが一般的です。そのため、最初に連絡が取れた会社へ登録するケースも少なくありません。
派遣先が派遣を使う理由の最多は「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」で76.5%でした(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査)。スピードは求職者側にも派遣先側にも効く価値だということです。
応募から初回連絡までの時間、電話がつながらなかった場合のSMSやLINEでのフォロー、面談日程の調整方法。ここを標準化すれば、広告費を増やさずに登録率を改善できます。応募から面談までの動線は「派遣会社の採用サイトで応募率を高める方法」でも扱いました。
応募数が減少すると、「広告の効果が落ちた」と判断し、新しい媒体へ切り替えるケースがあります。しかし、原因は求人条件そのものにある場合も少なくありません。
同一エリアで時給相場が上昇しているにもかかわらず募集条件を据え置いている、勤務時間の柔軟性がない、勤務地が分かりづらい。こうした広告以外の要因が応募率を下げていることがあります。
求人市場は常に変化しています。競合他社の募集条件や地域の求人動向を定期的に確認し、自社の求人条件が市場と合っているかを見直すことも、CPA改善には欠かせません。

広告運用の改善が中心に語られることが多い一方で、見落とされがちなのが人材プールの活用です。
一度応募したもののタイミングが合わず就業に至らなかった求職者や、過去に登録したスタッフも重要な資産です。新規応募だけに依存している会社ほど、広告費が増え続ける傾向があります。
登録スタッフへの定期連絡やLINE配信、希望条件の更新確認を続けている会社はどうか。既存のデータベースから就業者を確保できる割合が高まり、新規広告への依存度を下げられます。
新規案件が入るたびに広告を出稿するのではなく、まず既存登録者へ案内し、それでも不足する分だけ広告を使う。この順番にするだけで長期的な採用コストは抑えられます。広告に頼らない集め方は「広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法」にまとめました。
以下は想定ケースです。実在の企業ではありません。
E社は応募単価だけを基準に媒体を選定していました。応募数は多いものの登録率が低く、就業まで進む人は限られています。広告費は増える一方で利益は伸びませんでした。
そこで媒体ごとの登録率と就業率を集計し、応募後の初回連絡体制を見直します。応募数はほぼ変わらないまま登録率が改善し、就業単価が下がりました。
このように、CPA改善は広告費削減ではなく、採用プロセス全体の最適化によって実現するケースが少なくありません。
まず、直近3か月の広告費と、応募・登録・就業の件数を並べてください。応募単価だけでなく、登録単価と就業単価が出せる状態にします。
次に、案件を契約の長さで三つに分けます。1か月以内、1か月超3か月以内、3か月超。それぞれで許容できる就業単価の上限を決めてください。短期案件に長期案件と同じ採用コストをかけていないかが分かります。
そのうえで、職種別にCPAを並べます。有効求人倍率が高い職種でCPAが高いのは当然なので、問題は倍率が低いのにCPAが高い職種です。そこは運用か原稿に原因があります。
最後に、応募から初回連絡までの時間を計測します。測っていなければ、まず測ることから始めてください。
直近3か月の広告費と、応募・登録・就業の件数を並べた
応募単価だけでなく登録単価・就業単価を算出した
案件を契約の長さで三つに分けた
区分ごとに許容できる就業単価の上限を決めた
職種別にCPAを並べ、有効求人倍率と突き合わせた
媒体ごとの登録率・就業率を比較した
応募から初回連絡までの時間を計測している
電話がつながらなかった場合の代替連絡手段を決めている
求人条件を競合や地域相場と比較した
登録スタッフへの再アプローチを定期的に実施している
新規案件でまず既存登録者へ案内する運用になっている
応募単価を下げることは、広告費を削減することではありません。応募から登録、就業までを一つのファネルとして捉え、それぞれの歩留まりを改善することです。
許容できる採用コストは契約の長さで決まります。試算では、1日以下の契約と3か月契約で60倍の開きが出ました。契約の85.7%が3か月以内である以上、単一のCPA目標は成り立ちません。
職種による差も同様です。建設躯体7.94倍と一般事務0.29倍では、約27倍の開きがあります。CPAが高い職種は、運用の問題ではなく母集団の問題かもしれません。
まずは、自社が「応募単価しか見ていない状態」になっていないかを確認することから始めてみてください。
Q1. 許容できる採用コストは、何から逆算するのが適切ですか?
A. 広告媒体が提示する相場から決める
B. 契約の長さから、1人あたりで回収できる差額を計算して決める
C. 全社で単一の目標CPAを決めて運用する
正解:B
解説:「許容できる採用コストは、契約の長さで決まる」の章のとおりです。全業務平均の差額9,522円で計算すると、1日以下の契約と3か月契約では回収額に60倍の開きが出ます。
Q2. 職種による応募の集まりやすさの違いについて、公的統計は何を示していますか?
A. 建設躯体工事従事者7.94倍と一般事務従事者0.29倍で、約27倍の開きがある
B. どの職種もおおむね同水準である
C. 事務職のほうが人手不足が深刻である
正解:A
解説:「職種によって、応募の集まりやすさは27倍違う」の章のとおりです(厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年7月分、常用・パート含む)。
Q3. 応募単価が同じ2つの媒体を比べるとき、優先して見るべき指標はどれですか?
A. 応募数の多さ
B. 媒体ごとの登録率と就業率
C. クリック単価の低さ
正解:B
解説:「応募単価だけで判断すると利益を見誤る」および「媒体ごとの役割」の章のとおりです。CPAは途中経過の数字であり、利益につながるのは就業と稼働です。
採用コストの許容額は、案件の長さと単価で決まります。短期で単価の低い案件ばかりになれば、どれだけ運用を改善しても広告費は回収しにくくなります。
ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。
・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)
・厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和8年7月分 参考統計表、職業別・常用(パート含む)・全国計)
・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査の有効回答8,686事業所)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
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