広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法

求職者集客・採用

2026/7/18

広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法

「求人広告の予算を増やしているのに応募数が伸びない」「応募はあるが登録や就業につながらない」と悩む派遣会社は少なくありません。特に中小・中堅派遣会社では、広告費を大幅に増やすことが難しく、限られた予算で成果を最大化する必要があります。

この悩みには構造的な背景があります。厚生労働省の集計では、派遣会社の登録者数は令和6年度に7,528,323人となり、前年度の7,710,857人から182,534人(2.4%)減少しました。1事業所あたりでみると242.4人から226.7人へ、15.7人(6.5%)の減少です。一方で派遣先件数は861,926件と前年度比7.9%増えています。仕事は増え、人は減っている。広告費を積んでも応募が伸びないのは、そもそも母集団が縮んでいるからです。

結論から言えば、広告費を増やさず応募数を増やせる余地は十分にあります。そのためには広告運用だけを見るのではなく、「求人の魅力」「媒体ごとの役割」「応募後の対応速度」「人材プールの活用」といった採用ファネル全体を見直すことが重要です。

本記事では、派遣会社の収益構造も踏まえながら、広告費に頼らず応募数を増やすための具体策を解説します。

目次

広告費を増やさなくても応募数は増やせる

広告費を増やしても応募数が伸びない状況を表すイラスト

広告費を増やせない場合、多くの企業は「より安い媒体を探す」「クリック単価を下げる」といった施策を考えがちです。しかし、応募数は広告費だけで決まるものではありません。

応募数は、次のような複数の要素によって決まります。

応募数=広告表示数 × クリック率 × 応募率

つまり、広告費を変えなくてもクリック率や応募率が改善すれば、応募数は増やせます。

ここで押さえておきたいのが、採用市場そのものの動きです。厚生労働省「一般職業紹介状況」の令和8年8月分では、有効求人倍率が1.18倍、新規求人倍率が2.06倍。求職者1人に対して新規の求人が2件以上ある状態が続いています。さらに正社員有効求人倍率も1.00倍となり、正社員の求人だけでも求職者数と釣り合う水準に達しました。求職者は常に複数の選択肢を持っているということです。

人の動きそのものも鈍っています。厚生労働省「雇用動向調査」によると、令和6年1年間の入職者数は7,473,700人、入職率は14.8%で、前年の16.4%から1.6ポイント低下しました。派遣会社が主戦場とするパートタイム労働者ではさらに顕著で、入職率は22.7%と前年の27.5%から4.8ポイント下がっています。転職する人の絶対数が減っているところへ、求人だけが増え続けている構図です。

実際には、広告運用よりも求人ページや応募導線に課題があるケースも少なくありません。広告費を増やす前に、まず現在の数字を分解して確認することが重要です。

まず確認したいKPI

指標

確認ポイント

クリック率(CTR)

求人タイトルやサムネイルは魅力的か

応募率(CVR)

求人ページで離脱していないか

応募単価(CPA)

媒体ごとに費用対効果を比較しているか

登録率

応募後に連絡が取れているか

就業率

登録後に適切な案件を紹介できているか

応募単価だけを見て判断すると、本当の課題を見誤る可能性があります。派遣会社では、最終的な就業人数まで確認して初めて広告の成果を正しく評価できます。

評価の基準になるのが、1人を稼働させたときに得られる粗利です。令和6年度の8時間換算の平均派遣料金は26,257円、派遣労働者の賃金は16,735円で、その差は9,522円、マージン率にすると約36.3%。1日あたり約9,500円の粗利が出る計算になります。3か月の契約で60日稼働すれば、1人あたりの粗利はおよそ57万円です。この数字を基準に置けば、応募単価が高いか安いかは媒体単位ではなく「就業まで到達したか」で判断すべきだとわかります。応募単価そのものの下げ方は「応募単価(CPA)を下げるために見直すべき5つのポイント」で整理しています。

応募が増えない本当の原因は「求人」ではなく「比較」にある

求職者は一つの求人だけを見て応募しているわけではありません。同じ職種・同じエリアで複数の求人を比較しながら応募先を決めています。

ただし、ここには見落とされがちな変化があります。厚生労働省「派遣労働者実態調査」によると、登録型の派遣労働者が現在登録している派遣元事業所の数は「1か所」が66.1%で最多。2か所が12.8%、3か所が9.4%で、複数社に登録している人は合計32.9%にとどまります。しかも「1か所」の割合は、前回調査の57.9%から8.2ポイント上昇しています。

つまり、求職者はかつてより「とりあえず何社も登録する」ことをしなくなっています。比較はされるが、登録されるのは1社だけ。最初に選ばれなければ、そのあと接点を持つ機会すらないということです。

では何を基準に選ばれているのか。同じ調査で派遣労働者として働いている理由(複数回答)をみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が30.8%、「正規の職員・従業員の仕事がないから」が30.4%。登録型に限るとこれが40.7%と40.1%まで上がり、「家計の補助・学費等を得たいから」24.3%、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」18.0%が続きます。

働き方の自由度と、生活との両立。この2つが登録型の求職者が求めているものです。にもかかわらず、多くの求人票は時給と勤務地しか語っていません。

求職者は次のような情報も重視しています。

・この派遣会社は連絡が早そうか

・就業までスムーズに進めそうか

・福利厚生やフォロー体制は充実しているか

・希望条件に合わせて他の仕事も紹介してくれそうか

つまり、求人票は「仕事内容」を伝えるだけではなく、「この派遣会社なら安心して相談できそう」と感じてもらう役割も担っています。

求人票で改善しやすいポイント

求人内容そのものを変えられない場合でも、伝え方は改善できます。

何を書くべきかは、すでに派遣で働いている人の不満が教えてくれます。派遣労働者実態調査では、派遣元への要望が「ある」と答えた人は47.8%、登録型に限ると59.3%にのぼります。その内容(複数回答3つまで)は次のとおりです。

派遣元への要望の内容

割合

賃金制度を改善してほしい

58.6%

継続した仕事を確保してほしい

29.7%

派遣先での直接雇用に切り替えるよう依頼してほしい

21.6%

福利厚生制度を充実してほしい

17.0%

派遣契約が中途解除された場合、他の派遣先を確保してほしい

16.1%

苦情・要望に迅速に対応してほしい

13.0%

年次有給休暇を取りやすくしてほしい

10.2%

教育訓練を充実してほしい

7.9%

注目したいのは2位の「継続した仕事を確保してほしい」で、登録型に限ると34.3%まで上がる点です。求職者が不安に思っているのは時給だけではなく、「この仕事が終わったあとどうなるのか」。求人票に次の情報を加えるだけでも、応募率は変わる可能性があります。

・就業開始までの流れを明記する

・面談方法(来社・WEB)を分かりやすく記載する

・担当者のフォロー内容を書く

・契約終了後も別案件を紹介する体制があることを伝える

・キャリア相談が可能であることを伝える

求職者は「仕事」を探している一方で、「安心できる派遣会社」も同時に探しています。この視点が抜けている求人は、条件が同じでも比較で負けやすくなります。自社サイト側の改善は「派遣会社の採用サイトで応募率を高める方法」にまとめています。

媒体ごとの役割を理解すると広告効率は大きく変わる

広告費を増やさず成果を上げる派遣会社は、媒体を一律に評価していません。それぞれの媒体が担う役割を理解し、目的ごとに使い分けています。

例えば求人検索エンジンは応募数を集めやすい一方で、比較検討されやすい特徴があります。一方、自社採用サイトやLINE登録は、一度接点を持った求職者との関係を維持する役割があります。

媒体ごとの応募単価だけを見ると、高く見える媒体でも就業率が高ければ十分に投資価値があります。前述のとおり1人を3か月稼働させた場合の粗利はおよそ57万円。仮に応募単価が20,000円でも、応募10件のうち1件が就業に至れば、広告費20万円に対して粗利57万円が立ちます。逆に応募単価5,000円でも、応募30件から1件も就業しなければ15万円がそのまま損失です。

重要なのは、媒体単位ではなく「応募→登録→就業」までを一つの流れとして評価することです。広告担当者だけでなく、コーディネーターや営業担当とも数字を共有することで、改善すべきポイントが見えやすくなります。媒体を何社使うべきかは「派遣会社の求人媒体は何社使うべき?最適な選び方」で解説しています。

応募数だけを追うと利益は残りにくい

応募後の初回対応をすばやく行うことを表すイラスト

応募数が増えれば採用も増えるとは限りません。派遣会社では「応募→連絡→登録→面談→案件紹介→就業」の各段階で離脱が発生するためです。

特に見落とされやすいのが、応募後の初回対応です。登録型の求職者の66.1%が1社しか登録していないという事実は、裏を返せば「最初に話を進めた会社で決める」人が多数派だということでもあります。応募を受けた側が翌日まで動かなければ、その1社の座は別の会社に渡ります。

そのため、広告改善だけでなく、応募後の対応速度も集客施策の一部と考える必要があります。

応募後の離脱を減らす業務フロー

応募 ↓自動返信メール・SMS送信 ↓(できるだけ早く)電話・LINEで初回接触 ↓登録面談 ↓案件提案 ↓就業

広告担当者とコーディネーターの役割が分断されている会社では、「応募数は増えたのに就業が増えない」という状況が起こりがちです。応募後の対応時間や登録率もKPIとして管理することで、広告費を増やさず成果を改善できる可能性があります。

見落とされがちな改善策は「人材プール」の活用

過去の応募者を人材プールとして再活用することを表すイラスト

広告費を抑えながら成果を出している派遣会社に共通する特徴の一つが、過去の応募者を資産として活用していることです。

派遣という働き方は、構造的に「空き」が頻繁に生まれます。令和6年度の派遣契約期間をみると、1日以下が25.7%、1月超2月以下が20.9%、2月超3月以下が28.4%。短期契約の比率が高いということは、同じ人が1年のうちに何度も次の仕事を探しているということです。稼働が終わるたびに関係が切れていれば、その都度ゼロから集め直すことになります。

さらに、転職市場の条件も動いています。「雇用動向調査」では、令和6年の転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した人が40.5%、うち1割以上増えた人が29.4%。逆に「減少」は29.4%でした。前職を辞めた理由をみると、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%、男性は「給料等収入が少なかった」が10.1%。条件や環境が変われば、一度離れた人も再び動くということです。

一度応募したものの就業に至らなかった人や、契約満了後に退職したスタッフは、新しい求人条件であれば再び就業する可能性があります。しかし、こうした人材へ継続的に連絡している会社は決して多くありません。

例えば、LINEやメールで新着求人を定期配信したり、希望条件の変更を確認したりするだけでも、広告を使わず応募を獲得できる可能性があります。

もう一つの切り口が、キャリアの出口を示すことです。派遣労働者実態調査では、今後の働き方について「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」と答えた人が37.0%、登録型では44.7%。そのうち74.3%が「正社員として働きたい」と答えています。一方、令和6年度に紹介予定派遣を実施した事業所は全体の7.0%にあたる2,322所にとどまり、直接雇用に結びついた人数は13,881人、申込91,705人に対する成約率は15.1%でした。正社員になりたい人は4割以上いるのに、その受け皿を用意している派遣会社は1割に満たないということです。

これは「応募を集める施策」ではなく、「応募を活かす施策」です。広告費を増やさず成果を出す会社ほど、この考え方を重視しています。稼働後のフォロー設計は「派遣スタッフの就業後フォローは何回行うべきか」で扱っています。

想定ケースで見る改善前後の違い

例えば、製造派遣を中心に展開する派遣会社を想定してみましょう。

改善前は、応募数が減少すると広告予算を追加し続けていました。しかし、応募後の初回連絡が翌日以降になることも多く、登録率が伸びませんでした。月間の広告費が50万円、応募が50件、応募単価10,000円。そこから登録に至るのが10件、就業が3件という状態だとすると、就業1件あたりの広告費は約167,000円になります。

そこで、求人票の情報を見直し、応募後すぐに自動返信とLINE案内を送る運用へ変更しました。また、過去応募者へ新着求人を定期配信する仕組みを整えました。広告費50万円は変えないまま、応募が55件、登録が15件、就業が5件になったとすると、就業1件あたりの広告費は100,000円まで下がります。稼働1人あたりの粗利を3か月で57万円とすれば、就業が2件増えた分だけで114万円の粗利増です。

もちろん実際の成果は地域や職種によって異なりますが、このように広告だけではなく採用ファネル全体を見直すことが重要です。

今日から実践するためのチェックリスト

・応募単価だけでなく登録率・就業率まで確認している

・1人が3か月稼働したときの粗利(目安57万円)を把握したうえで広告費を判断している

・求人票に「派遣会社を選ぶ理由」が伝わる内容を記載している

・「継続した仕事を確保してほしい」という要望(登録型で34.3%)に答える記載がある

・応募後すぐに連絡できる運用になっている

・媒体ごとの役割を整理し、成果を比較している

・過去応募者・登録スタッフへの再アプローチを実施している

・正社員志向の求職者(派遣以外希望者の74.3%)に向けた出口を用意している

・広告担当者と営業・コーディネーターがKPIを共有している

まとめ

広告費を増やさず応募数を増やすためには、広告運用だけを改善する発想から脱却することが重要です。応募数は、求人票の魅力、媒体の使い分け、応募後の対応速度、人材プールの活用など、多くの要素によって決まります。

登録者数は前年度比2.4%減、パートタイム労働者の入職率は4.8ポイント低下。一方で派遣先件数は7.9%増、新規求人倍率は2.06倍。この環境では、広告費を積んで母集団を増やす戦い方は年々割に合わなくなります。

特に派遣会社では、応募数よりも「就業につながる応募」を増やすことが利益改善につながります。まずは応募単価だけではなく、登録率・就業率まで可視化し、自社の採用ファネル全体を見直すことから始めてみてください。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 登録型の派遣労働者が現在登録している派遣元事業所の数で、最も多いのはどれですか?
A. 1か所(66.1%)
B. 2〜3か所(22.2%)
C. 5か所以上(6.7%)

正解:A 解説:「応募が増えない本当の原因は『求人』ではなく『比較』にある」の章のとおりです。前回調査の57.9%から8.2ポイント上昇しており、複数社に登録している人は32.9%にとどまります(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)。

Q2. 派遣労働者が派遣元に求めている要望で、2番目に多いものはどれですか?
A. 教育訓練を充実してほしい(7.9%)
B. 継続した仕事を確保してほしい(29.7%)
C. 年次有給休暇を取りやすくしてほしい(10.2%)

正解:B 解説:「求人票で改善しやすいポイント」の章のとおりです。1位は「賃金制度を改善してほしい」58.6%で、登録型に限ると「継続した仕事を確保してほしい」は34.3%まで上がります(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)。

Q3. 広告費を増やせない状況で応募を増やしたい。最初に手をつけるべきはどれですか?
A. より安い求人媒体に乗り換える
B. 応募後の初回連絡を当日中に行う運用へ変える
C. 掲載する求人件数を倍に増やす

正解:B 解説:「応募数だけを追うと利益は残りにくい」の章のとおりです。登録型の66.1%が1社にしか登録していないため、最初に話を進めた会社で決まりやすくなっています(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)。

ハケンバンクについて

広告費を抑えながら事業を成長させるためには、求職者集客だけでなく、安定して紹介できる求人案件を確保することも重要です。自社営業だけでは接点を持ちにくい求人企業へのアプローチを補完する選択肢として、求人企業と派遣会社をつなぐプラットフォームを活用する方法もあります。ハケンバンクは、そのような営業活動を支援する仕組みの一つとして運営されています。

参考文献

・厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)令和8年8月分」(2026年10月2日公表)

・厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)令和6年度」(2026年3月31日公表)

・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2023年11月24日公表)

・厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」

・総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」(2026年1月30日公表)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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