派遣の集客はWeb広告と求人媒体どちらに投資すべきか

求職者集客・採用

2026/8/26

派遣の集客はWeb広告と求人媒体どちらに投資すべきか

求人媒体の掲載料は固定費として毎月出ていく。Web広告に切り替えたいが、運用できる人がいない。かといって両方に出す予算はない。従業員5名から300名規模の派遣会社では、この板挟みがよく起きます。この記事は、集客の投資判断を担う経営者、採用責任者、コーディネーターに向けて書いています。

目次

先に結論を述べます。この問いは「どちらが安いか」ではなく、「固定費で持つ枠」と「変動費で調整する枠」をどう分けるかという配分の問題です。そして配分を決める前に、1名の就業から何円の粗利が生まれるかを確認する必要があります。この順番を飛ばすと、比較の物差しが手に入りません。

二択ではなく「固定費枠」と「変動費枠」に分ける

先に押さえるべきは、集客に出せる金額の上限です。上限が決まらないまま媒体と広告を比べても、判断は感覚に頼ることになります。

上限の計算に使えるのが、公的な平均値です。厚生労働省の労働者派遣事業の事業報告の集計結果によれば、令和6年度の派遣料金(8時間換算)の全業務平均は26,257円、派遣労働者の賃金(8時間換算)の全業務平均は16,735円でした。出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)。差額は1日あたり9,522円です。ただし派遣料金は消費税を含む額であり、この差額からは社会保険料、有給、教育訓練費、営業とコーディネーターの人件費が出ていきます。粗利そのものではない点には注意が必要です。

それでも、この差額を起点にすれば議論は具体化します。1名を就業させて何日稼働するのか。そこから逆算して、1名あたりいくらまで集客に使えるのかを決める。この上限を先に置くのが、媒体と広告を比べる前の作業です。

「どちらが安いか」で比べると判断を誤る理由

比較そのものを否定するわけではありません。しかし、応募単価で比べると結論が毎月変わります。求人側の需給が動くたびに、広告の単価も媒体の反応も変動するからです。

厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年6月分)では、有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.16倍で、6月の新規求人は前年同月比3.1%増でした(2026年7月31日公表)。求人が増える局面では、クリック課金の単価は上がり、媒体の掲載枠も混み合います。市況で動く数字を基準にすると、判断が振り回されます

比較の物差しは就業単価に置くべきです。応募が何件来たかではなく、その経路から何名が就業に至り、1名あたりいくらかかったのかを見ます。応募から就業までの歩留まりは、「派遣会社の求人広告で応募数を増やす方法と改善策」でも整理しています。

求人媒体とWeb広告の境界は、すでに溶けている

そもそも、この二択の前提は古くなっています。求人媒体の一部は、すでにクリック課金へ移行しました。

リクルートホールディングスの新求人配信プラットフォーム「Indeed PLUS」についてによれば、同社は掲載期間に応じて課金する方式から、クリック課金型への移行を進めると説明しています(2024年1月31日公表)。一方、派遣に特化した媒体には別の設計もあります。エン派遣の公式サイトでは、掲載順位は「マッチ度×新着更新順」で決まり、上位表示プランは設けていないこと、新着更新の回数が枠数に応じて1枠あたり月5件と決まることが説明されています。

つまり、分けるべきは「媒体か広告か」ではなく「固定費か変動費か」です。

種類

費用の性質

強み

弱み

掲載枠課金の専門媒体

固定費(前払い)

派遣就業を前提とした層に届く

反応が悪くても止められない

クリック課金の配信型

変動費(上限設定可)

需要に応じて増減できる

運用しないと単価が上がる

運用型のWeb広告

変動費

職種や地域を細かく絞れる

運用工数と学習期間が要る

自社サイト・LINE

工数のみ

蓄積が資産として残る

立ち上がりに時間がかかる

見落とされがちな論点:回収期間は「契約期間」で決まる

ここからが、他業種の広告論では出てこない話です。派遣の集客投資は、回収に使える期間が構造的に短く区切られています。

同じ集計結果によれば、令和6年度の派遣契約の期間は「2月超3月以下」が28.4%で最も多く、「1月超2月以下」が20.9%、「1日以下」が25.7%でした。1契約あたりの期間であり、更新によって就業が続く場合はありますが、短い契約を前提に投資判断をせざるを得ないことは変わりません。

ステップ

計算方法

全業務平均値を使った試算

①1日あたりの差額

派遣料金−賃金

26,257円−16,735円=9,522円

②1か月あたり

①×稼働日数(例:20日)

190,440円

③契約期間分

②×契約期間(例:3か月)

571,320円

④控除

社会保険料・管理費を自社実績で差引

自社の数字を使う

⑤許容採用単価

④の一部を上限として設定

自社で判断

例えば、想定してみましょう。3か月契約が中心の会社が、就業1名あたり15万円の集客費をかけているとします。更新が続けば回収できますが、初回契約で終われば厳しい水準です。更新率が読めない案件ほど、固定費ではなく変動費で取りにいく判断が合理的になります。

配分の決め方:確定枠と検証枠に分ける

実務的な配分は、二段構えが扱いやすくなります。継続的に稼働が読める職種は固定費の枠で押さえ、読めない案件は変動費の枠で試す形です。

固定費枠は、年間を通じて案件が途切れない主力職種に充てます。変動費枠は、新規の派遣先、季節変動のある案件、初めての職種に使います。変動費枠には、必ず停止基準と期限を先に決めておくことが要点です。

もう一つ、上限は毎年見直す必要があります。令和8年度地域別最低賃金額改定の目安では、全国加重平均が1,121円から1,176円へ、55円(4.9%)の引き上げが示されました(2026年7月28日公表)。賃金が上がっても派遣料金の改定が追いつかなければ、1名あたりの差額は縮みます。つまり、去年の許容採用単価は今年には合いません。広告費に依存しない集客の育て方は「広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法」でも扱っています。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 主力職種の派遣料金と賃金の差額を、自社の実績値で算出した

  • 平均的な契約期間と更新率を職種別に確認した

  • 1名就業あたりの許容採用単価を数字で決めた

  • 経路別に応募数ではなく就業数と就業単価を集計した

  • 契約中の媒体を固定費型と変動費型に分類した

  • 変動費枠に停止基準(期間と就業件数)を設定した

  • 最低賃金の改定時期に許容採用単価を見直す予定を入れた

まとめ

Web広告と求人媒体のどちらに投資すべきかは、単価の比較では決まりません。決めるのは、1名の就業から生まれる差額と、その回収に使える契約期間です。この2つが出た時点で、固定費で持てる範囲と変動費で試すべき範囲が自然に分かれます。

明日から着手するなら、主力職種の派遣料金と賃金の差額を1件だけ計算してみてください。数字が出れば、いま払っている集客費が上限の内側なのか外側なのかが判断できます。比較の前に、自社の上限を決めることが先です。

ハケンバンクについて

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参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日)

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)について」(2026年7月31日)

  • 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日)

  • 株式会社リクルートホールディングス「新求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』について」(2024年1月31日)

  • エン株式会社「エン派遣の掲載料金|費用・掲載期間・掲載方法」(2023年10月31日公開)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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