
求職者集客・採用
2026/8/19
媒体を1社増やしたのに、応募も就業も目立って増えなかった。逆に、成果が薄いと分かっていても、止めた後が怖くて解約できない。この2つが同時に起きている派遣会社は少なくありません。この記事は、従業員5名から300名規模の派遣会社で求職者集客を担う採用責任者、コーディネーター、経営者に向けて書いています。
目次
結論から述べます。適正な媒体数は「何社」ではなく「いくつの役割を埋めているか」で決まります。役割は3つしかなく、それを2〜3本の契約でカバーできていれば十分です。社数を増やす前に、いま契約している媒体を使い切れているかを確認するほうが、費用対効果は上がります。
媒体の適正数を考えるとき、最初に整理すべきは役割の分担です。派遣会社が求職者集客で必要とする役割は、①派遣で働きたい層が集まる専門媒体、②検索経由で幅広く拾う配信型、③広告費に依存しない自社チャネルの3つに整理できます。
役割で考えるべき理由は、競争環境が緩んでいないからです。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年6月分)では、有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.16倍、6月の新規求人は前年同月比3.1%増でした(2026年7月31日公表)。求人の総量が増える局面では、露出は自然には増えません。しかし、同じ役割の媒体を重ねても、届く相手は重複します。重ねるべきは社数ではなく、性質の異なる役割です。
媒体を増やしても成果が伸びにくい理由は、増えるのが露出だけではないからです。1本増えるたびに、原稿作成、更新作業、応募対応という3つの業務が同時に増えます。
とりわけ効くのが応募対応です。マイナビのアルバイト就業者調査(2026年)では、勤務先を決めた要因の第1位が「応募後にすぐに企業から連絡がきた」で39.9%でした(2026年7月公表)。派遣登録者を対象とした調査ではありませんが、時給制の求人市場で人が動く順番を示す参考値にはなります。応募が3つの管理画面に分散すれば、初回連絡は確実に遅れます。媒体を1本増やしたことで既存媒体の初動が鈍れば、全体の就業数はむしろ減ります。
派遣では、応募は登録の入口にすぎません。面談、案件提案、就業へと工程が続くため、評価すべきは応募単価ではなく就業単価です。この考え方は「派遣会社の求人広告で応募数を増やす方法と改善策」でも整理しています。
もう一つ押さえておきたいのは、掲載先を自社で選べない領域が生まれたことです。求人媒体は、個別に契約する広告枠から、配信プラットフォーム経由で振り分けられる面へと構造が変わりつつあります。
リクルートホールディングスの新求人配信プラットフォーム「Indeed PLUS」についてによれば、同サービスは求人内容に基づき、連携するジョブボードの中から最も適したものを自動で選んで配信する仕組みです。2024年3月にはリクナビ派遣も連携先に加わる予定と説明されています。あわせて、掲載期間に応じて課金する方式から、クリック課金型への移行が進められました。出典:株式会社リクルートホールディングス「新求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』について」(2024年1月31日)。
つまり、「A社とB社に出す」という発想そのものが、一部では成立しなくなっています。配信面に1本出せば複数のサイトに載る可能性がある一方、どこに載るかは選べません。媒体を社数で管理する意味は薄れ、役割で管理する必要が出てきます。
役割ごとに、期待する成果も見るべき数字も異なります。同じ「応募数」で3つを横並びに比較すると、判断を誤ります。
役割 | 期待する成果 | 課金の考え方 | 主に見る指標 |
|---|---|---|---|
①派遣専門媒体 | 派遣就業を前提とした層からの応募 | 掲載枠・期間に応じた固定費が中心 | 就業単価、面談実施率 |
②配信型・検索型 | 職種や勤務地で探す幅広い層への露出 | クリック課金が中心で変動 | クリック単価、応募単価 |
③自社チャネル | 過去登録者の再稼働、指名での応募 | 広告費ではなく運用工数 | 再稼働人数、広告費比率 |
①が重要なのは、派遣を選ぶ理由が正社員やアルバイトと異なるためです。日本人材派遣協会の2025年度派遣社員WEBアンケート調査では、派遣で働く理由の上位は「働く時間や時間帯を選べるため」39.4%、「すぐに仕事に就けるため」35.8%、「勤務地を選べるため」35.7%でした(2025年12月公表)。時間や勤務地で絞り込む行動が中心である以上、条件検索の精度が高い場所は外しにくいと言えます。③の育て方は「広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法」でも扱っています。
媒体を増やす前に確認すべきなのは、既存の契約に含まれる露出をどこまで使い切っているかです。ここが手つかずのまま社数を増やしている会社は少なくない、というのが構造から見た推察です。
例えば、エン・ジャパンが運営するエン派遣の公式サイトでは、求人の掲載順位は「マッチ度×新着更新順」で決まり、上位表示プランは設けていないと説明されています。新着更新できる回数は枠数に応じて決まり、1枠あたり月5件、5枠なら25件、20枠なら100件です。媒体ごとに仕様は異なりますが、露出量を決めているのが社数ではなく「枠数×更新回数」である構造は、押さえておく価値があります。
想定してみましょう。2媒体でそれぞれ5枠を契約し、更新できる25件のうち月10件しか使っていない会社があるとします。この状態で3社目を契約しても、増えるのは固定費と管理画面です。先に着手すべきは、応募の少ない案件を狙って更新に回す運用でしょう。三大都市圏の派遣スタッフ募集時平均時給は1,659円でした(出典:ジョブズリサーチセンター「派遣スタッフ募集時平均時給調査」2026年2月度)。他社原稿の水準を把握したうえで、どの案件を押し上げるかを決めることになります。
判断 | 目安となる状態 |
|---|---|
継続 | 更新枠を使い切っており、就業単価が他媒体と同水準か下回っている |
運用見直し | 更新枠に余りがある、または原稿が3か月以上更新されていない |
撤退検討 | 更新枠を使い切って3か月経っても、就業がゼロまたは就業単価が突出して高い |
契約中の媒体を①専門媒体②配信型③自社チャネルの3区分に振り分けた
同じ役割の媒体が2本以上重複していないかを確認した
媒体ごとに応募数だけでなく面談実施数と就業数を集計した
媒体別の就業単価を算出し、応募単価との順位の違いを確認した
各媒体の更新枠・掲載枠を月あたり何件使えているかを数えた
応募の受信経路を一本化し、当日中に初回連絡できる体制を確認した
継続・運用見直し・撤退の判断期限を媒体ごとに決めた
媒体の適正数は業種や地域で変わりますが、判断の順序は共通です。まず役割で分類し、重複を外し、残った媒体の更新枠を使い切る。社数を増やすかどうかは、その後で検討すれば十分です。
明日から着手するなら、契約中の媒体を3区分に並べ、それぞれの就業数と就業単価を書き出してください。応募単価の順位と就業単価の順位が入れ替わる媒体が見つかれば、そこが最初に見直す対象です。増やす判断より、やめる判断のほうが数字の裏づけを必要とします。
媒体を整理して集客の効率が上がっても、紹介できる案件が不足していれば稼働は増えません。求人開拓を自社だけで進めることが難しい場合、外部の仕組みを活用する選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)について」(2026年7月31日)
株式会社リクルートホールディングス「新求人配信プラットフォーム『Indeed PLUS』について」(2024年1月31日)
一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月19日)
株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2026年)」(2026年7月29日)
株式会社インディードリクルートパートナーズリサーチセンター(ジョブズリサーチセンター)「2026年2月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査【三大都市圏(首都圏・東海・関西)】」(2026年3月13日)
エン株式会社「エン派遣の掲載料金|費用・掲載期間・掲載方法」(2023年10月31日公開)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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