
求職者集客・採用
2026/8/25
同じ媒体に、同じような原稿を、同じ予算で出している。それなのに、去年より応募が来ない。中小・中堅の派遣会社で、集客担当者から最も多く聞かれる悩みのひとつです。この記事は、従業員5名から300名規模の派遣会社で求職者集客を担う採用責任者、コーディネーター、経営者に向けて書いています。
目次
先に結論を述べます。反応が悪いとき、原因が原稿にあるケースは一部にすぎません。多くは「露出」「条件」「初動」のどこかで落ちており、どの層で落ちているかを切り分けないまま文言だけを直しても、数字は動きません。
まず、自社の求人がどの段階で失速しているのかを特定してください。原稿の巧拙が効くのは3層のうち1つだけです。背景には、求人側の競争が続いている事実があります。一般職業紹介状況(令和8年6月分)によれば、令和8年6月の有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.16倍で、新規求人は前年同月比3.1%増でした(2026年7月31日公表)。求人の総量が増えれば、同じ予算で得られる露出は相対的に薄まります。去年と同じ出し方で反応が落ちるのは、自社が悪化したというより周囲の掲載量が増えた結果という側面があります。
層 | 確認する数字 | よくある原因 | 打ち手の担当 |
|---|---|---|---|
①露出 | 表示数・クリック数 | 職種名や勤務地の書き方が検索条件と噛み合っていない、掲載枠・期間の不足 | 集客担当 |
②条件 | クリックからの応募率 | 時給・シフト・就業開始日が相場から外れている | 営業・経営 |
③初動 | 応募後の連絡到達率・面談実施率 | 初回連絡が遅い、電話のみで追わない | コーディネーター |
表示数が少なければ、言い回しを変えても効果は限られます。表示もクリックもあるのに応募が伸びないなら、読み手は条件を見て離脱しています。
条件面で最初に疑うべきは時給です。時給の相場そのものが毎年上振れしているため、据え置きは実質的な引き下げに近い意味を持ちます。
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安では、全国加重平均が現行の1,121円から1,176円へ、55円(4.9%)の引き上げが示されました。出典:厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日)。一方、2026年2月度の派遣スタッフ募集時平均時給調査では、三大都市圏の平均時給は1,659円で、前年同月比21円(1.3%)の増加にとどまりました。出典:ジョブズリサーチセンター「派遣スタッフ募集時平均時給調査」(2026年2月度)。
この伸び率の差は見過ごせません。最低賃金が4.9%上がる一方で派遣時給が1.3%しか動かなければ、アルバイト・パートとの差は縮みます。公開データからの考察ですが、「同じ勤務地なら派遣のほうが時給が高い」という優位は、放置すれば毎年目減りすると考えるのが自然です。
ここで派遣特有の構造が効きます。派遣スタッフの時給は、派遣先との料金交渉の結果で決まる従属変数です。集客担当がどれだけ原稿を磨いても、料金が据え置かれている限り条件は変わりません。反応の悪さを集客の問題として処理し続けると、営業と経営が判断すべき料金改定が先送りされます。粗利率を守るために時給を抑えた結果、稼働が立たず粗利額が減る逆転もよく起こります。
条件の見直しは、時給を上げること以外にもあります。派遣で働く人が重視しているのは金額だけではないからです。日本人材派遣協会の2025年度派遣社員WEBアンケート調査では、派遣で働く理由の上位は「働く時間や時間帯を選べるため」39.4%、「すぐに仕事に就けるため」35.8%、「勤務地を選べるため」35.7%でした(2025年12月公表)。
つまり、時間の自由度、就業開始の早さ、勤務地は、時給と並ぶ判断材料です。ところが実際の原稿は、時給と職種名だけが具体的で残りは定型文、というものが少なくありません。ここは費用をかけずに改善できます。
よくある表記 | 改善の方向 |
|---|---|
シフト相談可 | 週3日・9時〜15時など、実際に通っている人の勤務例を書く |
随時募集 | 「最短で来週から就業可能」など、開始時期を数字で書く |
駅チカ・アクセス良好 | 最寄り駅からの徒歩分数、車通勤の可否、駐車場の有無を書く |
未経験歓迎 | 前職の例(販売から製造へ、など)と初日の受け入れ体制を書く |
応募数を増やす打ち手は、「派遣会社の求人広告で応募数を増やす方法と改善策」でも整理しています。
応募が発生しているのに就業につながらない場合、問題は広告ではなく応募後の対応にあります。求職者は応募した瞬間から比較を始めています。
マイナビのアルバイト就業者調査(2026年)では、勤務先を決めた要因の第1位が「応募後にすぐに企業から連絡がきた」で39.9%、次いで「すぐに合否通知の連絡が来た」が30.1%でした(2026年7月公表)。派遣登録者を対象とした調査ではありませんが、同じ時給制の市場で人が動く順番を示す参考値にはなります。
派遣では、応募は登録の入口にすぎず、面談、案件提案、就業へと工程が続きます。評価すべきは応募単価ではなく就業単価です。応募が20件でも就業が1件なら、応募8件で就業3件の媒体のほうが安い、という判断になります。面談の設計は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」も参考になります。
反応が悪い原因が、そもそも「決まる見込みの薄い案件を掲載し続けていること」にある場合があります。例えば、想定してみましょう。営業が受注した案件が、深夜帯のみ、車通勤必須、就業開始は2か月先だったとします。地域の求職者層と噛み合わないまま毎月掲載すれば、広告費は消えます。厄介なのは登録者への案内です。決まらない案件を繰り返し紹介された登録者は、連絡そのものに反応しなくなります。広告費だけでなく、人材プールという資産まで摩耗するわけです。
伸び悩む会社は「掲載を止めると派遣先に説明できない」と考え、掲載を続けます。一方、決めている会社は、一定期間で応募がゼロなら条件の再交渉を持ち込みます。掲載の継続ではなく条件の再交渉が営業の仕事として定義されているかが分かれ目です。広告費に依存しない集客は「広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法」でも扱っています。
直近3か月の掲載案件について、表示数・クリック数・応募数・面談数・就業数を1枚に並べた
どの層(露出・条件・初動)で落ちているかを案件ごとに判定した
主要案件の時給を、同一エリア・同一職種の他社掲載と比較した
時給が相場を下回る案件について、派遣先への料金交渉の可否を営業と確認した
勤務時間、就業開始時期、通勤手段を具体的な数字で書き直した
応募から初回連絡までの平均時間を計測し、当日中の連絡を運用ルールにした
媒体の評価指標を応募単価から就業単価に切り替えた
3か月以上応募がない案件について、掲載継続か条件再交渉かを決めた
原稿の書き直しは最後の工程です。先に見るべきは、露出・条件・初動のどこで落ちているかという分解であり、その次に、時給が今年の相場から外れていないかという確認です。最低賃金が毎年数%上がる局面では、条件の据え置きは静かな競争力低下を意味します。
明日から着手するなら、直近3か月の案件別ファネルを1枚にまとめてください。数字が並んだ時点で、直すべき層はほぼ決まります。条件に原因があると分かった案件は、集客の課題ではなく営業と経営の判断事項として扱ってください。
条件面で無理のある案件を抱え続けないためには、出会える求人の母数を広げておく方法もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会い、営業活動を補完する選択肢のひとつです。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)について」(2026年7月31日)
厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日)
株式会社インディードリクルートパートナーズリサーチセンター(ジョブズリサーチセンター)「2026年2月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査【三大都市圏(首都圏・東海・関西)】」(2026年3月13日)
一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月19日)
株式会社マイナビ「アルバイト就業者調査(2026年)」(2026年7月29日)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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