
求職者集客・採用
2026/8/19
求人広告費を、どの媒体にいくら配分すべきか。応募が集まらない、応募はあるのに就業につながらないと悩む会社にとって、毎月の利益を左右する判断です。結論から言えば、配分は「応募単価」ではなく「就業単価」で決めるべきです。安い応募をたくさん集めても、就業に至らなければ広告費は回収できません。この視点の違いが、同じ予算で稼働人数を伸ばせるかを分けます。
目次
求人広告費の配分は、媒体ごとの就業単価、つまり1人を就業させるのにかかった広告費を基準に決めるのが原則です。応募単価が安い媒体でも、連絡・登録・面談・就業と進むうちに離脱が多ければ、就業単価はかえって高くなります。まずは媒体別に就業までの単価を出し、就業単価の低い媒体へ配分を寄せます。そのうえで既存登録者の再稼働やリファラルを配分の一角に固定します。
背景には、集客チャネルの構造変化があります。インターネット広告費は総広告費の50.2%を占め、初めて過半数に達しました(電通「2025年 日本の広告費」)。求人を含む従来型の案内広告が縮小し、運用型のWeb広告が主戦場となるなか、配分の巧拙が成果に直結します。
配分でつまずく根本は、採用市場が「応募を集めにくく、条件で差がつきにくい」状態にあることです。有効求人倍率は1.18倍(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」)で、求職者より求人が多い売り手市場が続いています。応募のハードルが上がれば、応募単価は自然と上昇します。
加えて、賃金の底上げが競争をさらに難しくしています。最低賃金の全国加重平均は1,121円で、前年度から過去最大の66円引き上げられました(厚生労働省「地域別最低賃金の引上げ」令和7年度)。時給の下限が上がると各社の条件は似通い、時給の高さだけでは選ばれにくくなります。広告費を積むより先に、応募後の対応やマッチングの質で差をつける発想が要ります。応募後の離脱を防ぐ初動については、[就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術]も参考になります。
広告費の効果は、応募数ではなく、その先の就業と定着で決まります。派遣の採用は「応募→連絡→登録→面談→案件提案→就業→定着」という長いファネルで進み、各段階で人が抜けていきます。応募単価に各段階の通過率を掛け合わせた結果が就業単価で、離脱の大きい媒体ほど、見かけの応募単価が安くても実際は高くつきます。
求職者が会社を選ぶ基準も、この見方を裏づけます。現在の派遣会社から就業している理由は、「希望に合った条件の仕事を紹介してくれるから」が38.6%、「希望に合った業務内容の仕事を紹介してくれるから」が37.6%と上位です(日本人材派遣協会「2024年度 派遣社員WEBアンケート調査」)。求職者は広告の量ではなく自分に合う案件を出せるかで会社を選び、広告費の回収は集めた後のマッチング力に強く左右されます。
多くの派遣会社が見落とすのは、応募単価の最適化がかえって就業単価を押し上げる場面があることです。求職者は複数社に同時登録し、就業まで各社を比較します。応募は入口にすぎず、先に連絡し先に案件を提案できた会社が就業を勝ち取ります。安い応募を大量に集めても、連絡と面談の工数がふくらむだけで就業に結びつきません。
派遣で働く理由の全体トップは「働く時間や時間帯を選べるため」(42.4%)ですが、30歳未満では「すぐに仕事に就けるため」が33.2%で最多です(2024年度・同調査)。すぐ働きたい層ほど、最初に案件を出した会社に流れます。応募単価の安さを競うより、初回連絡のスピードとマッチング精度に投資するほうが就業単価は下がります。
想定ケースで配分の考え方の違いを見てみましょう。失敗しやすいのは、応募単価が最も安い媒体に広告費を集中させるパターンです。例えば応募数は増えても、連絡が追いつかず登録前に離脱が続き、就業した人数はほとんど増えません。就業単価はむしろ上がり、コーディネーターは対応に追われます。
うまくいく会社は、媒体別に就業単価を算出してから配分を組み替えます。就業単価の低い媒体へ予算を寄せ、浮いた分を既存登録者への再連絡やリファラルに回します。応募総数は伸びなくても、同じ広告費で就業と稼働の人数が増えます。両者を分けるのは広告費の総額ではなく、どの単位で成果を測りどこへ配分するかの設計です。
媒体は「応募単価の安さ」ではなく、役割で分けて考えると配分しやすくなります。まずは自社の媒体を次の型で整理してください。
媒体タイプ | 主な役割 | 単価の傾向 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
応募型求人サイト | 応募数を確保する | 応募単価は中〜高、就業単価は要検証 | 母集団が不足している |
検索連動・運用型Web広告 | 顕在層を捕まえる | 運用次第で就業単価を下げやすい | 特定職種・エリアを狙う |
SNS・動画広告 | 認知と潜在層の掘り起こし | 応募単価は変動、就業まで距離 | 中長期で候補者を育てる |
リファラル・既存登録者 | 低コストで就業・定着 | 就業単価が最も低くなりやすい | 定着重視・広告費を抑えたい |
配分に使う単位も応募単価だけで見ないことが重要です。指標をファネルに沿って並べると、どこで予算が漏れているかが見えます。
指標 | 計算の考え方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
応募単価 | 広告費 ÷ 応募数 | 入口の集めやすさ |
登録単価 | 広告費 ÷ 登録数 | 連絡・登録での離脱 |
就業単価 | 広告費 ÷ 就業人数 | 実際に稼働に変わった効率 |
回収の目安 | 就業単価 ÷ 想定稼働月数 | 定着まで含めて回収できるか |
広告に頼らない母集団も忘れてはいけません。登録者数は全国で約753万人にのぼり(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」)、各社の中にも稼働していない登録者が眠っています。ここへの再アプローチは就業単価を下げる余地があります。
まず着手すべきは、直近3か月の媒体別に応募数・連絡率・登録数・就業人数・就業単価を並べることです。応募単価ではなく就業単価の順に媒体を見直すと、削るべき媒体と増やすべき媒体がはっきりします。次に、既存登録者への再連絡とリファラルを予算に固定し、広告に依存しない母集団を育てます。あわせて、応募から初回連絡までの時間に目標を設け、初動の遅れによる離脱を減らします。
直近3か月の媒体別に応募数・登録数・就業人数を集計したか
媒体ごとの就業単価(広告費÷就業人数)を算出したか
応募単価ではなく就業単価の順で配分を見直したか
応募から初回連絡までの目標時間を決めたか
既存登録者への再連絡・リファラルを予算に組み込んだか
就業単価を想定稼働月数で割り、回収可否を確認したか
定着率の低い媒体・経路を特定したか
集めた人材も、就業させる案件がなければ稼働に変わらず、広告費は回収できません。集めた人材に対して案件が不足しがちな場合は、案件との接点を外部の仕組みで補う選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。案件獲得の考え方は「派遣会社が新規案件を獲得する営業手法」でも整理しています。
求人広告費の配分は、応募単価ではなく就業単価で判断するのが出発点です。媒体を役割で分け、就業単価の低い媒体へ配分を寄せ、初回連絡のスピードと既存登録者の再稼働で回収力を高めることが要になります。まずは直近3か月の媒体別就業単価を並べ、どこに予算が漏れているかを確かめてみてください。
電通「2025年 日本の広告費」(2026年)
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」(2026年)
厚生労働省「地域別最低賃金の引上げ(令和7年度)」(2025年)
一般社団法人日本人材派遣協会「2024年度 派遣社員WEBアンケート調査」(2025年)
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
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