派遣会社は淘汰の時代へ?生き残る会社と消える会社の違い

業界コラム

2026/7/23

派遣会社は淘汰の時代へ?生き残る会社と消える会社の違い

人材不足なのに、なぜ派遣会社の倒産は増えているのか。市場拡大の裏で進む派遣業界の二極化をデータから読み解き、中小派遣会社がこれから生き残るために見直すべき経営戦略を解説します。

「人手不足なら、派遣会社には追い風のはず」。そう考える経営者は少なくありません。ところが現実には、求人企業からの需要がある一方で、派遣スタッフを集められず、売上や利益を伸ばせない会社も増えています。

特に、従業員5〜300名程度の中小・中堅派遣会社にとって重要なのは、「市場が伸びるか」ではなく、伸びる市場の中で自社が選ばれる構造を持っているかです。

結論から言えば、派遣業界全体が縮小して一斉に淘汰されるとは考えにくいでしょう。しかし、会社ごとの差はこれまで以上に広がります。これから起きるのは「派遣会社が不要になる淘汰」ではなく、人材を集め、求人と結びつけ、継続的に稼働を生み出せる会社への集約です。

目次

派遣市場は拡大しているのに、派遣会社の淘汰は同時に進んでいる

まず押さえるべきなのは、「市場縮小=淘汰」という単純な構図ではないことです。厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」によると、派遣事業の年間売上高は9兆9,005億円で前年度比9.4%増、派遣労働者数は約220万人で同3.9%増、派遣先件数も約86万件で同7.9%増でした。

出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年)

つまり、需要そのものが消えているわけではありません。それでも経営が苦しくなる会社があるのは、市場の成長がすべての派遣会社へ均等に配分されるわけではないからです。

指標

令和6年度

前年度比

派遣労働者数

約220万人

+3.9%

派遣先件数

約86万件

+7.9%

年間売上高

9兆9,005億円

+9.4%

平均派遣料金(8時間)

26,257円

+3.6%

平均賃金(8時間)

16,735円

+3.4%

市場が拡大していても、自社が採用できなければ稼働は増えません。案件を持っていても人材がいなければ売上にならず、人材がいても提案できる求人がなければ登録者は離脱します。この「求人」と「人材」の両方を同時に確保できるかが、今後の競争力を左右します。

淘汰を生む最大の変化は「案件不足」より「供給力不足」である

これまで派遣会社の競争力は、求人企業との取引数や営業力で語られがちでした。しかし今後は、必要な人材を必要なタイミングで供給できる力の重要性がさらに高まります。

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」では、2026年1月時点で正社員不足を感じる企業は52.3%と、1月として4年連続で50%を超えています。求人企業が人材を求めている一方、その人材を派遣会社自身も確保できないという構造です。

出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2026年1月)

この状況では、「求人をたくさん持っている会社」が必ずしも強いとは限りません。重要なのは、応募から連絡、登録、案件提案、就業、定着までを一つのファネルとして管理し、案件を実際の稼働へ変換できる会社です。

広告費を増やさず応募数を増やす方法(https://media.hakenbank.com/posts2/D1Bm8W13/)

で考えるべきなのも、応募数だけではありません。応募100件で1人就業する会社と、応募30件で3人就業する会社では、後者の方が採用競争力は高いからです。

従来評価されやすかった力

これから重要性が増す力

求人数

稼働につながる求人の質

応募数

就業転換率

営業担当者の人脈

組織としての営業基盤

求人媒体への投資

自社人材プール

取引社数

顧客別・案件別の粗利

担当者の経験

データと標準化された業務

「小さい会社から消える」とは限らない。危険なのは特徴のない会社である

淘汰という言葉から、大手が残り中小が消える構図を想像しがちです。しかし、会社規模だけで競争力は決まりません。厚生労働省の令和6年6月1日時点の集計では、集計対象となる派遣事業所は44,035事業所で、前年の43,736事業所から0.7%増えています。

出典:厚生労働省「労働者派遣事業の令和6年6月1日現在の状況(速報)」(2025年公表)

むしろ危険なのは、「誰に、何の仕事を、なぜ自社が提供するのか」が曖昧な会社です。あらゆる職種を扱い、営業先も広く、集客も求人媒体頼みになると、大手と同じ土俵で資金力を競うことになります。

一方、中小派遣会社には、特定地域での対応速度、物流・製造・建設・介護など特定職種への理解、スタッフとの距離の近さといった強みがあります。中小派遣会社が大手に勝つための戦略(https://media.hakenbank.com/posts2/Jj4A8b87 )でも重要なのは、「規模を追う前に勝てる市場を狭く定義する」という考え方です。

例えば、地域も職種も広げ続けるA社と、「埼玉県×物流」のように供給力を集中するB社を想定してみましょう。B社は市場規模では劣っても、登録人材、求人企業、採用ノウハウが同じ領域に蓄積されます。結果として、マッチング速度や営業時の説得力で優位をつくりやすくなります。

本当に淘汰されるのは「売上はあるが利益構造を把握していない会社」である

淘汰を考えるうえで見落とされやすいのが、売上と経営体力は別物だという点です。東京商工リサーチによると、2025年1〜11月の労働者派遣業の倒産は82件で前年同期比41.3%増となり、前年通年の68件を11月時点で上回りました。

出典:東京商工リサーチ「2025年1-11月の『労働者派遣業』倒産」(2025年)

派遣事業は売上が大きく見えやすい一方、派遣スタッフの賃金や社会保険料、求人広告費、営業・管理人件費などが発生します。そのため、「稼働人数が増えた=経営が強くなった」とは限りません。

経営者が見るべきなのは、全社売上だけではなく、1稼働当たり粗利、採用コスト、顧客別粗利、職種別収益性、営業担当者1人当たり稼働人数です。低採算案件を大量に抱えながら広告費を増やす経営は、売上成長と同時に資金繰りを悪化させる可能性があります。

危険な状態

強い状態

売上だけを追う

粗利まで管理する

案件数を増やし続ける

稼働可能性で案件を選ぶ

広告費で応募を買い続ける

人材プールを蓄積する

営業担当者ごとに顧客管理

CRM等で情報を共有する

退職後に顧客関係が消える

組織として関係を持つ

淘汰の時代に生き残る会社は「マッチングの再現性」を持っている

これから強い派遣会社に必要なのは、単なる規模ではなく、求人獲得から就業までを繰り返し再現できる仕組みです。厚生労働省の令和6年度集計では、派遣先件数は約86万件で前年度比7.9%増でした。市場に案件が存在していても、自社の登録者と合わなければ売上にはなりません。

出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年)

そのため、まず「案件数」「応募数」という入口の数字だけを見る経営から離れる必要があります。求人獲得→応募→登録→提案→就業→定着までを数値化し、どこで詰まっているかを特定してください。

例えば案件は多いのに稼働が増えないなら、営業不足ではなく求人条件と人材属性の不一致かもしれません。応募が多いのに就業しないなら、広告費不足ではなく初回連絡や案件提案に問題がある可能性があります。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 売上ではなく顧客別・案件別の粗利を把握している

  • 稼働人数と純増・減少を毎月確認している

  • 応募→登録→提案→就業の転換率を把握している

  • 求人媒体ごとの「応募単価」ではなく「就業単価」を確認している

  • 自社が強い地域×職種を明確に言語化できる

  • 営業担当者の顧客情報が社内で共有されている

  • 既存スタッフ・過去登録者を再活用できる仕組みがある

  • 案件数ではなく「決まりやすい求人」を優先できている

  • 特定顧客への売上依存度を把握している

  • 求人獲得と人材集客を別々ではなく一つの需給として管理している

まとめ

派遣業界は、「市場がなくなるから淘汰される」のではありません。市場が拡大していても、人材を集められる会社、良質な求人を獲得できる会社、両者を素早く結びつけられる会社へ成果が偏ることで、結果として二極化が進む可能性があります。

だからこそ、中小派遣会社が最初にすべきことは規模拡大ではありません。自社がどの地域・職種で供給力を持ち、どの求人なら高確率で稼働へ変えられるのかを数字で把握することです。

淘汰の時代とは、小さい会社が消える時代ではありません。「何でもできる会社」よりも、「この領域なら強い」と明確に言える会社が選ばれる時代です。まずは直近6〜12カ月の求人、応募、就業、粗利を並べ、自社が本当に勝てている市場を確認するところから始めてみてください。

ハケンバンクについて

求人開拓を自社だけで進めることが難しい場合、外部の仕組みを活用する方法もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の求人獲得を支援するプラットフォームです。

自社の営業活動を置き換えるものではなく、自社だけでは接点を持ちにくい求人企業との出会いを増やし、案件ポートフォリオを広げる選択肢の一つとして活用できます。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日)

  • 厚生労働省「労働者派遣事業の令和6年6月1日現在の状況(速報)」(2025年3月31日)

  • 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」(2026年2月20日)

  • 東京商工リサーチ「2025年1-11月の『労働者派遣業』倒産 82件」(2025年12月24日)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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