
実務ノウハウ
就業後のフォローは何回やればいいのか。月1回なのか、週1回なのか。社内で基準を決めようとして、結局「担当者の判断で」に落ち着いていないでしょうか。
この記事では、回数を本人と派遣先の合計で設計する考え方を示します。契約期間からの逆算、増減の判断基準、1回あたりに聞く内容までを公的統計とあわせて整理します。
目次
先に結論を書きます。フォロー回数は本人への連絡回数だけで決めず、派遣先への接触回数と合わせて設計する。目安は、3か月契約なら本人4回・派遣先2回の計6回です。
理由は、情報の入り口が限られているからです。厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」を見てみます。事業所調査の有効回答は8,686事業所。派遣労働者が就業している事業所のうち、受け入れている人数が「1〜4人」である事業所は68.1%でした。
多くのスタッフは、同じ派遣会社の同僚がいない現場で働いています。本人に聞いても、比べる材料がありません。「普通だと思います」という答えが、実は普通ではないこともあります。もう一つの入り口である派遣先に聞かなければ、判断材料はそろいません。

同じ調査に、見過ごせない数字があります。派遣元から情報の提供を求められた経験と、実際に提供した割合です。
情報の種類 | 求められたことがある | 実際に提供した |
|---|---|---|
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室) | 46.5% | 46.1% |
働きぶりや勤務態度に関する評価結果 | 33.1% | 32.2% |
業務に必要な能力を付与するための教育訓練 | 27.8% | 27.6% |
技能や能力向上に関する評価結果 | 27.2% | 25.9% |
成果に関する評価結果 | 25.6% | 25.0% |
同種の業務に従事する労働者の賃金水準 | 18.1% | 16.4% |
出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」。派遣労働者が就業している事業所を100とした割合。
注目したいのは、求められた割合と提供した割合がほとんど同じだという点です。差はどの項目も1ポイント前後にとどまります。つまり派遣先は、聞かれればほぼそのまま出しています。
一方で「働きぶりや勤務態度に関する評価結果」を求められたことがない事業所は64.0%。賃金水準に至っては78.7%が求められていません。情報が入ってこないのは、派遣先が渋っているからではなく、聞いていないからだということになります。
この構造が分かると、回数の議論の前提が変わります。本人への連絡を週1回に増やしても、入ってくる情報の種類は増えません。増えるのは同じ種類の情報の量だけです。種類を増やすには、聞く相手を変えるしかありません。
もう一つ、賃金水準の数字にも触れておきます。「同種の業務に従事する労働者の賃金水準」を求められたことがない事業所は78.7%でした。この情報は、派遣先の社員がいくらで同じ業務をしているかという、単価交渉の土台になるものです。
聞かれれば16.4%が提供しています。求めた18.1%に対して、ほぼそのまま出ている計算です。つまり交渉の材料は、聞けば手に入る場所に置かれていることになります。原価の構造から単価を考える手順は「派遣会社の利益率を改善する方法と見直すポイント」で扱っています。

では何回か。契約期間で割るのが実務的です。厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」によれば、派遣契約の85.7%は3か月以内です(件数ベース)。3か月を基準に組み立てます。
契約期間 | 本人への接触 | 派遣先への接触 | 合計 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|
3か月 | 4回(初日・7日目・1か月・2か月) | 2回(1か月・2か月) | 6回 | 条件のずれと更新意向の把握 |
6か月 | 6回(上記+4か月・5か月) | 3回(1か月・3か月・5か月) | 9回 | 業務範囲の変化と単価の見直し |
1年以上・無期 | 4回(四半期ごと) | 2回(半期ごと) | 6回 | 評価情報の取得とキャリアの確認 |
長期になるほど、1か月あたりの回数は下がります。接触が要るのは期間の長さではなく、変化が起きる時期だからです。就業直後と更新前に集中させ、あいだは薄くする。この配分が基本になります。
現実に回せるかどうかも確認しておきます。同じ集計結果によれば、1事業所当たりの稼働人数は66.3人です。
例えば担当者3人で66人を見ている営業所を想定してみましょう。一人あたり22人、3か月契約が年4回転すると、年間の接触は22人×6回×4回転=528回。営業日を240日とすれば、1日あたり2〜3件です。
1件15分とすれば1日30〜45分。移動を伴う訪問を月に数件混ぜても、現実的な範囲に収まります。回らないのは回数が多いからではなく、予定に入っていないからです。発生してから対応しようとすると、忙しい週に真っ先に消えます。
この試算の前提は担当者3人・22人持ちです。自社の人数を入れて計算し直せば、標準回数を何回に置けるかが決まります。

一律に回すより、条件で増減させたほうが効率的です。
状況 | 回数 | 理由 |
|---|---|---|
受け入れ人数が1〜4人の現場 | 増やす | 社内に比べる相手がいない |
初めての就業、または初めての派遣先 | 増やす | 基準がなく、ずれに気づけない |
業務範囲が広がった | 増やす | 単価と契約の見直しが要る |
抵触日まで3か月を切っている | 増やす | 次の見通しを一緒に決める必要がある |
同一派遣先で1年以上、評価情報も定期的に届く | 減らしてよい | 情報経路が確立している |
ここで注意したいのは、減らす判断には条件が付くという点です。長く続いているから安心なのではありません。派遣先から評価情報が届いている状態になって、はじめて減らせます。届いていないのに回数だけ減らすと、何も見えない期間が長くなります。
判断に迷うのは、派遣先から特に何も言われていない場合です。問題がないから連絡が来ないのか、こちらへの期待が薄いのかは、外からは区別できません。連絡が来ないことは、良い状態の証拠にはなりません。
抵触日が近い案件も、迷いやすい場面です。終了が決まっているなら接触を減らしてよさそうに見えますが、逆です。次の就業先を一緒に決める期間が必要になるため、残り3か月を切ったら本人への接触を月2回に増やすほうが結果的に早く決まります。
同じ営業所の二つの案件を想定します。どちらも3か月契約で、本人への連絡は月1回、合計3回ずつ行っていました。
G案件では、1か月目に派遣先にも連絡し、「勤務態度で気づかれた点はありますか」と聞きました。「報告はきちんとしてくれるが、分からないときに抱え込む傾向がある」という答えが返ってきました。2か月目の本人面談でその点に触れ、聞く相手を決めておく話をしています。更新時には派遣先から継続の希望が出ました。
H案件では、本人にだけ3回連絡しました。毎回「問題ありません」という返事です。更新の2週間前に派遣先から、業務量の見直しを理由に終了の連絡が入りました。後から聞くと、2か月目の時点で指示の通りにくさを感じていたとのことでした。
接触回数はどちらも3回です。違いは、そのうち何回を派遣先に向けたかだけでした。これは構造を説明するための想定ケースですが、本人側だけを厚くしても見えない領域があることは、先ほどの64.0%という数字が示しています。
回数を決めても、中身が同じでは意味がありません。相手ごとに聞くことを分けます。
相手 | 聞くこと | 会話例 |
|---|---|---|
本人 | 事実の変化 | 「この1か月で、最初にお願いしていた業務から増えたものはありますか」 |
本人 | 次の意向 | 「次の3か月で、覚えておきたいことはありますか」 |
派遣先 | 働きぶりの評価 | 「勤務態度や仕事の進め方について、気づかれた点を伺えますか」 |
派遣先 | 業務量の見通し | 「この先3か月で、業務量はどう動きそうでしょうか」 |
派遣先への3つ目が、先ほどのデータで6割超が「求められたことがない」項目にあたります。聞き方は難しくありません。改善要望として聞くと相手は身構えますが、気づいた点として尋ねれば答えは返ります。労働者派遣法でも、派遣元と派遣先には連携して対応することが求められています。
失敗しやすいのは、本人と派遣先で聞いた内容を突き合わせないことです。片方だけ聞いて記録に残すと、食い違いが見つかりません。同じ時期に両方へ当たり、記録を並べて見る。そこではじめて、どちらの認識がずれているのかが分かります。
派遣先への接触を増やそうとしたとき、最初の壁は「用件がない」ことです。問題が起きていない相手に連絡する理由が思いつかない、という声はよく聞きます。
用件は作れます。こちらから先に情報を渡すのが一番確実です。「今月から○○さんに新しい業務をお願いしていると伺いました」「来月から通勤経路が一部変わるとご本人から聞いています」。渡す情報が一つあれば、そのついでに聞くことができます。
渡す材料は、本人への面談で手に入ります。本人に聞いた内容のうち、派遣先に伝えてよいものを一つ選んでおく。この順番にすると、本人面談と派遣先連絡が自然につながります。
連絡の形式も、毎回訪問である必要はありません。電話でもメールでも、記録が残れば同じです。重要なのは頻度と、聞く項目がそろっていることです。
記録の粒度も決めておきます。「問題なし」とだけ書かれた記録は、次の担当者にとって何も残していないのと同じです。
残すのは三つです。誰に聞いたか、何を聞いたか、どう答えが返ったか。「10/15 派遣先○○課長/勤務態度/報告は丁寧、抱え込む傾向あり」のように、一行で足ります。長さではなく、相手と質問と回答がそろっているかどうかが分かれ目です。
書式に欄を作れば、担当者による差はかなり小さくなります。自由記述の一枚にすると、書ける人と書けない人の差がそのまま出ます。初日からの設計は「就業初日に派遣スタッフが辞めないための準備」、立ち上がりの条件確認は「就業30日以内に離職する派遣スタッフを減らす方法」で扱っています。
記録の形式は、Excelでも業務システムでも構いません。ただし本人の記録と派遣先の記録が同じ画面で並ぶことだけは満たしてください。別々のファイルに分かれていると、突き合わせる作業が発生し、その作業は必ず後回しになります。
まず、直近3か月の記録を開いて、派遣先へ接触した回数を数えてください。本人への連絡回数ではありません。多くの場合、こちらが極端に少なくなっているはずです。
次に、契約期間ごとの標準回数を決めます。3か月契約なら本人4回・派遣先2回、というように数字で決めてください。決めた回数は、契約開始時にまとめて予定表へ登録します。
そのうえで、増減の条件を明文化します。受け入れ人数、就業経験、抵触日までの残り。三つ程度で十分です。条件が多いと、どれに当てはまるか判断する手間のほうが大きくなります。
最後に、本人と派遣先の記録を並べて確認する日を月1回設けてください。面談での確認項目は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」、更新時の進め方は「契約更新率が高い派遣会社が実践していること」も参考になります。接触回数を指標として追う場合の置き方は「派遣会社の経営者が毎月確認すべき経営指標一覧」にまとめました。
・直近3か月で、派遣先へ接触した回数を案件ごとに数えた
・本人への接触回数と並べて、比率を確認した
・契約期間ごとの標準回数を、本人と派遣先に分けて決めた
・契約開始時に、標準回数分の予定を一括登録する運用にした
・増減の条件を三つに絞って明文化した
・受け入れ人数が1〜4人の現場を抽出した
・派遣先へ「働きぶりや勤務態度」を尋ねる定型の質問文を用意した
・記録の書式に、相手・質問・回答の三つの欄を作った
・本人と派遣先の記録を並べて確認する日を、月1回設けた
フォローを何回行うべきかという問いは、本人への連絡回数だけを見ているうちは答えが出ません。受け入れ人数が1〜4人の現場が68.1%を占め、働きぶりの評価を求めたことがない派遣先は64.0%あります。足りていないのは、派遣先への接触である可能性が高いということです。
まずは直近3か月の派遣先への接触回数を数えてください。そのうえで、3か月契約なら本人4回・派遣先2回という標準を決め、契約開始時に予定として入れる。回数の議論は、そこから具体的になります。
Q1. 派遣労働者を受け入れている事業所について、受け入れ人数はどのような分布ですか?
A. 「1〜4人」が68.1%と最も多い
B. 「10人以上」が過半数を占める
C. ほとんどが20人以上を受け入れている
正解:A 解説:「結論」の章のとおりです。多くのスタッフは同じ派遣会社の同僚がいない現場で働いており、本人の話だけでは比べる材料が出てきません(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査)。
Q2. 派遣先への「働きぶりや勤務態度に関する評価結果」の提供について、調査は何を示していますか?
A. 求められたことがある33.1%に対し実際に提供したのは32.2%で、求められたことがない事業所が64.0%
B. 求められても大半の事業所が提供を拒んでいる
C. ほぼすべての事業所が定期的に提供している
正解:A 解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおりです。求めた割合と提供した割合はほぼ一致しており、情報が入らないのは聞いていないためだと読めます。
Q3. 同一の派遣先で2年間続いているスタッフがいます。フォロー回数を減らす判断として適切なのはどれですか?
A. 期間が長いので、そのまま回数を減らす
B. 派遣先から評価情報が定期的に届いているかを確認し、届いていれば減らす
C. 抵触日が近いので、むしろ本人への連絡だけを増やす
正解:B 解説:「増やすべき場合と、減らしてよい場合」の章のとおりです。減らせるのは情報経路が確立している場合に限られます。
派遣先への接触を増やすと、業務量の見通しや増員の話が先に入ってきます。とはいえ、既存の取引先だけでは案件の幅は広がりません。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。
・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査の有効回答8,686事業所)
・厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
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