派遣スタッフのモチベーション低下を見抜く方法

実務ノウハウ

2026/9/24

派遣スタッフのモチベーション低下を見抜く方法

「最近、少し元気がない気がする」。面談でそう感じても、確証が持てないまま次の月になる。気づいたときには、退職の申し出が来ている。

この記事では、モチベーション低下を気持ちではなく記録の変化と契約カレンダーから捉える方法を整理します。公的統計をもとに、見るべき五つの変化と、確認の言い方までを扱います。

目次

結論:多数派はもともと「派遣以外」を向いている

先に結論を書きます。モチベーション低下を「例外的な状態」として探すのをやめることです。

厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」(派遣労働者調査の有効回答7,119人)を見てみます。今後の働き方について「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」と答えた人は37.0%、「派遣労働者として働きたい」は34.2%でした。前者が上回っています。

しかも「派遣以外」と答えた人の74.3%は正社員を希望しています。登録型に限ると差はさらに開き、「派遣以外」が44.7%、「派遣として」が36.1%です。

別の方向を向いていること自体は、低下の兆候ではなく初期設定だと考えたほうが実態に合います。探すべきは「別の方向を向いているかどうか」ではなく、「その向きが強まった時点はいつか」です。

多数派がもともと別の方向を向いていることを示す図

満足の源と不満の源が、同じ職場に並んでいる

なぜそうなるのか。派遣で働いている理由を見ると構造がわかります。

派遣労働者として働いている理由

全体

登録型

自分の都合のよい時間に働きたいから

30.8%

40.7%

正規の職員・従業員の仕事がないから

30.4%

40.1%

家計の補助・学費等を得たいから

18.6%

24.3%

専門的な技能等をいかせるから

13.8%

8.9%

家事・育児・介護等と両立しやすいから

11.7%

18.0%

出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」(複数回答)。

上位2つがほぼ同率で並んでいます。「自分の都合のよい時間に働きたい」は選んだ理由、「正規の職員・従業員の仕事がない」は選ばざるを得なかった理由です。満足の源と不満の源が、同じ数だけ存在しているということになります。登録型では後者が40.1%まで上がります。

同じ声かけが、人によって逆に働く

この2つは、同じ出来事に逆の反応を示します。

たとえば残業の依頼です。都合のよい時間を理由に選んだ人にとっては、条件の変更にあたります。一方、正規の仕事がないことを理由に挙げた人にとっては、収入の機会になり得ます。同じ声かけが、人によって逆に働きます。

契約期間の話も同じです。「3か月ごとに見直せます」は、ある人には柔軟さの説明になり、別の人には不安定さの確認になります。一律のフォローでは、どちらに転んだのかが分かりません。

だからこそ、就業時に聞いた「選んだ理由」を記録に残しておく意味があります。理由が分かっていれば、同じ出来事でも伝え方を変えられます。面談で何を確認するかは「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」に整理しました。

モチベーションの変曲点が契約カレンダー上にあることを示す図

見落とされている論点──変曲点は制度で決まっている

もう一つ、見過ごされがちな事実があります。モチベーションが動くタイミングの多くは、あらかじめカレンダー上に存在しているということです。

同じ調査で、過去1年間に同一の組織単位での派遣就業期間が3年に到達した人は23.5%でした。そして個人単位の期間制限についての意見を聞くと、「制限は不要」が31.9%で最多。登録型では36.7%にのぼり、「今のままでよい」はわずか15.0%です。

つまり、労働者派遣法が定める抵触日は、多くの人にとって納得された期限ではありません。続けたいのに終わる日が決まっている。

この構造がある以上、抵触日、更新上限、無期転換の申込機会は、そのままモチベーションの変曲点になります。表情を観察するより、契約カレンダーを見るほうが早いのです。なお無期転換のルールは厚生労働省の無期転換ポータルサイトに整理されています。

将来の見通しは、登録型に届きにくい

教育訓練の状況も付け加えておきます。過去1年間に教育訓練を受けたことがある人は65.5%ですが、登録型では54.7%、登録型以外では75.7%と差があります。

将来の見通しをつくる手段が、登録型には届きにくい構造になっています。そして登録型は、もともと「正規の仕事がないから」を理由に挙げる割合が高い層でもあります。不安の強い層ほど、見通しをつくる機会が少ないという重なりがあるということです。

この重なりは、個々の担当者の努力では埋まりません。誰に教育訓練を割り当てるかという設計の問題です。登録型の稼働者に対して、年に一度は訓練の案内が届いているかを確認してください。

無期転換の申込機会は、こちらから伝える

節目のうち、無期転換の申込機会は本人が気づきにくい項目です。抵触日は派遣先との契約に出てきますが、無期転換は自社との雇用契約の話だからです。

通算5年を超えた有期契約者には申込権が発生します。該当者が出る時期を一覧で持っておき、本人から聞かれる前にこちらから伝える運用にしてください。伝えずに過ぎると、後から知った本人との間に不信が残ります。

記録を並べて変化が始まった時点を見つける様子の図

記録から観測できる、五つの変化

では何を見るか。以下は公開データから導ける考察であり、調査で確認された兆候の一覧ではありません。自社の記録で当てはまるかを確かめてください。

観測できる変化

背景として考えられること

確認の仕方

返信の時間帯がずれる

就業時間外に別の活動が入っている

直近3か月の返信時刻を並べる

有給の取り方がまとまる

平日日中に予定が入っている

取得申請の間隔と単位を見る

質問が来なくなる

職場に定着したか、関心が薄れたか

質問の件数を月別に数える

更新の話題に反応が薄い

続ける前提が崩れている

更新の意向確認への返答時間を記録する

期限を本人から聞いてくる

抵触日を意識し始めている

いつ誰から聞かれたかを残す

共通しているのは、いずれも悪化ではなく「変化」だという点です。返信が遅いこと自体は問題ではありません。以前と違うことが情報になります。だからこそ、比較できる基準値がなければ何も見えません。

基準値は3か月分あれば足りる

変化を見るには基準値が要りますが、長期間のデータは必要ありません。直近3か月分で足ります。

連絡の時刻なら、その3か月の返信時刻を並べて中央値を取る。質問件数なら、月ごとの件数を3つ並べる。これだけで、4か月目に起きたずれは見えます。

完璧な平均値を出そうとすると、集計そのものが負担になって続きません。粗くてよいので、同じ方法で毎月更新することのほうが大事です。基準値は、精度ではなく継続性で価値が決まります。

期限を聞かれたときの答え方

注意したいのは、最後の項目です。本人から期限を尋ねられたとき、多くの担当者は制度の説明として答えます。しかし質問の意図は制度ではなく、その先に何があるのかにあることが少なくありません。

制度だけ答えて終えると、答えは出たのに何も伝わらない状態になります。日付を伝えたうえで、「その後はどうされたいとお考えですか」と一つ返してください。

答えが返ってこなくても構いません。聞かれた側が考え始めることに意味があります。そして次の面談日をその場で決めておけば、考えた結果を聞く場が確保できます。

五つのうち、最初の二つは本人に聞かなくても分かる項目です。連絡記録と有給の申請履歴を見るだけで足ります。残りの三つは、面談の場で意識して拾う必要があります。

先に機械的に拾える二つで対象を絞り、そのうえで面談で残り三つを確認する。この順番にすると、全員に等しく時間をかけずに済みます。

変化を捉えるための記録と、確認の言い方

記録は増やすほどよいわけではありません。三つに絞ります。

記録する項目

取り方

変化の読み方

連絡の時刻と間隔

送受信の日時をそのまま残す

平均からのずれを月単位で見る

本人からの質問件数

面談記録に件数欄を設ける

前月比で半減したら確認する

契約の節目

抵触日・更新上限・無期転換申込機会

3か月前を面談予定日として登録する

確認の言い方も決めておきます。「やる気が落ちていませんか」と聞いても答えは返りません。事実と将来の二段で聞くのが実務的です。

「この3か月で、ご自身の仕事の内容は変わりましたか」と事実から入り、続けて「この先1年で、できるようになっておきたいことはありますか」と将来を聞く。後者に答えが出てこない場合、見通しが閉じている可能性があります。

想定ケース|同じ兆候を別々に扱った二人

同じ営業所のIさんとJさんを想定します。どちらも就業から10か月、どちらも直近2か月で本人からの質問が月3件から0件に減っていました。

Iさんの担当者は、質問件数の欄を見て気づきました。面談で「この3か月で仕事の内容は変わりましたか」と聞くと、手順が固まって聞くことがなくなった、という答えでした。続けて将来を聞くと、別の業務も覚えたいという話が出ます。派遣先に相談し、翌月から担当範囲が広がりました。

Jさんの担当者は、質問が来ないことを順調の証と受け取りました。面談でも「問題ありませんか」と聞いて「大丈夫です」で終えています。3か月後、Jさんは自分で見つけた直接雇用の仕事に移りました。

同じ「質問ゼロ」でした。違いは、それを変化として数えていたかどうかです。これは構造を説明するための想定ケースですが、件数の欄がなければ、そもそも減ったことに気づけません。

今日からできる改善策

まず、稼働中の全員について、抵触日・更新上限・無期転換の申込機会が発生する日を一覧にしてください。3か月以内にその日が来る人が、今いちばん見るべき対象です。

次に、直近3か月の連絡記録から、一人ひとりの返信時刻と間隔の目安を出します。平均でかまいません。基準値がなければ、変化は判断できないからです。

そのうえで、面談記録に「本人からの質問件数」の欄を追加してください。数えるだけの欄ですが、数えていないものは減っても気づけません。

最後に、節目の3か月前を面談予定日として登録します。前もって置いておけば、変化が見えたときにすぐ話す場があります。

担当者差が出るのもここです。同じ社内でも、契約の節目を予定表に入れている人と、更新月になってから動く人がいます。後者は変化を見つけても打ち手を持てません。気づく力の差ではなく、気づける時期の差です。

就業初期の設計は「就業初日に派遣スタッフが辞めないための準備」と「就業30日以内に離職する派遣スタッフを減らす方法」で扱いました。

接触の回数設計は「派遣スタッフの就業後フォローは何回行うべきか」、更新時の進め方は「契約更新率が高い派遣会社が実践していること」にまとめています。

最後にもう一点。変化に気づける体制は、担当者が替わると途切れます。基準値も、節目の一覧も、前任者の頭の中にあると引き継がれません。記録の様式に組み込んでおけば、引き継ぎのたびにゼロに戻ることはなくなります。

なお、ここで挙げた変化はいずれも、確認の必要を示すだけで結論ではありません。質問が減ったからといって、意欲が落ちたとは限らないからです。変化は、話しかけるきっかけとして使ってください。兆候を根拠に判断すると、見当違いの対応になります。

今日から実践するためのチェックリスト

・稼働中の全員の抵触日を一覧化した

・有期契約者について、更新上限の有無と内容を確認した

・無期転換の申込機会が発生する時期を一覧に加えた

・3か月以内に節目を迎える人を抽出した

・直近3か月の連絡記録から、返信時刻と間隔の目安を出した

・面談記録に「本人からの質問件数」の欄を追加した

・就業時に聞いた「派遣を選んだ理由」を記録に残す運用にした

・登録型の稼働者に教育訓練の案内が届いているかを確認した

・節目の3か月前を面談予定日として予定表に登録した

・「この先1年でできるようになりたいこと」を聞く項目を面談様式に加えた

まとめ

モチベーション低下は、気持ちの問題として観察するには曖昧すぎます。多数派がもともと派遣以外を志向し、登録型では4割が正規の仕事がないことを理由に挙げている以上、低下は例外ではありません。

見るべきは表情ではなく、記録の変化と契約カレンダーです。まずは抵触日と更新上限を一覧にして、3か月以内に節目を迎える人を抜き出してください。話す相手が決まれば、対応は具体的になります。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 派遣で働く人の「今後の働き方の希望」について、調査はどのような結果を示していますか?
A. 「派遣労働者以外の就業形態で働きたい」37.0%が「派遣労働者として働きたい」34.2%を上回る
B. 8割以上が派遣を続けたいと回答している
C. ほぼ全員が正社員を希望している

正解:A 解説:「結論」の章のとおりです。「派遣以外」と答えた人の74.3%は正社員を希望しており、登録型では「派遣以外」が44.7%にのぼります(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」)。

Q2. 個人単位の期間制限について、登録型の派遣労働者はどう考えていますか?
A. 「制限は不要」36.7%に対し、「今のままでよい」は15.0%にとどまる
B. 大半が現行の3年制限に納得している
C. 「制限をもっと短くすべき」が最多

正解:A 解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおりです。抵触日は、多くの人にとって納得された期限ではないことが読み取れます。

Q3. 稼働中のスタッフから「私の抵触日はいつですか」と聞かれました。適切な対応はどれですか?
A. 制度の仕組みと日付だけを正確に説明する
B. 日付を伝えたうえで、その後どうしたいかを本人に聞き、次の面談日を決める
C. 「まだ先の話ですよ」と伝えて終える

正解:B 解説:「期限を聞かれたときの答え方」で述べたとおり、期限の質問は制度の確認ではなく、その先の見通しについての質問であることが少なくありません。

ハケンバンクについて

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参考文献

・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、派遣労働者調査の有効回答7,119人)

・厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」(無期転換ルールの解説)

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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