契約更新率が高い派遣会社が実践していること

実務ノウハウ

2026/9/17

契約更新率が高い派遣会社が実践していること

更新面談で「特に問題ありません」と言われ、そのまま更新手続きに進む。数か月後、同じ人から更新しない旨の連絡が来る。心当たりのある方は少なくないはずです。

この記事では、更新率が高い会社が更新をどう扱っているかを、業界調査の数字から整理します。確認すべき二つの指標、更新日から逆算した面談の組み方、切れた理由の分け方までを扱います。

目次

結論:更新率が高い会社は、更新を「再提案の機会」にしている

先に結論を書きます。更新率が高い会社に共通しているのは、更新のたびに条件を見直していることです。継続の意思を確認するだけで終えていません。

日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」を見てみます。有期労働契約で働く人のうち、現在の派遣先での通算就業期間が「1年未満」の人は53.9%でした。無期労働契約では「3年以上」が68.0%です。

有期の半数以上は、同じ派遣先で1年も続いていません。裏を返せば、更新の機会は年に何度も訪れているということです。厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」でも、派遣契約の85.7%は3か月以内で終わります(件数ベース)。

年に3回から4回、条件を見直す機会があるということでもあります。その機会を確認作業で終わらせるか、提案の場にするか。更新率の差は、ここで生まれます。

更新のたびに条件を見直す機会が巡ってくることを示す図

更新のたびに動いている二つの数字

更新の場で扱うべき数字は二つあります。給与と、業務範囲です。同じ調査から拾ってみます。

項目

過去1年間

過去3年間

就業中に給与が上がった

46.6%

68.3%

派遣先は同じだが業務範囲が広がった・高度なスキルが必要になった

37.4%

43.5%

派遣先・業務範囲ともに変更なし

33.5%

28.1%

派遣会社を変えた

12.5%

14.8%

派遣先を変えた

3.9%

6.8%

出典:日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」。給与は過去1年N=5,523・過去3年N=4,367、業務範囲の変化も同じ。

給与と業務範囲のずれが示すもの

過去1年で給与が上がった人は46.6%。半数以上は据え置きだったことになります。一方、派遣先は同じまま業務範囲が広がった人が37.4%います。

設問が別なので両者の重なりは分かりませんが、業務の拡大が必ずしも時給の改定につながっていない可能性は読み取れます。広がった仕事を同じ時給で続けている人が、一定数いるということです。

そして過去1年で「派遣会社を変えた」人が12.5%います。派遣先を変えた3.9%より3倍以上多い。働く場所ではなく、間に立つ会社のほうが選び直されていると読むべき数字です。更新のタイミングは、他社へ移る決断のタイミングでもあります。既存取引の深耕については「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」でも整理しています。

業務範囲は広がったのに時給が据え置きになっている状態の図

見落とされている論点──職場には満足、将来には不満

同じ調査の満足度を見ると、更新をめぐる本音が見えてきます。「現在の就業先・派遣先について」満足している人(満足+やや満足)は52.7%。一方、「自身のキャリア形成について」満足している人は23.7%にとどまりました。半分以下です。

さらに、現在の業務が今後どう変化すると思うかという設問では、「今と変わらないと思う」が43.9%で最多でした。「AIや機械などに取って代わられ、業務自体が無くなると思う」も12.5%あります。

つまり、いまの職場そのものには不満がないが、この先が見えないという状態の人が相当数いることになります。更新面談で「特に問題ありません」と返ってくるのは、多くの場合この状態です。

問題がないことと、続けたいと思っていることは同じではありません。「問題がない」は現在についての答えで、更新は将来についての判断だからです。質問が現在を聞いているうちは、将来の不安は出てきません。

キャリアの話をどう切り出すか

では、将来の不安をどう引き出すか。「キャリアについてどうお考えですか」と正面から聞いても、たいていは「特に考えていません」で終わります。抽象的すぎて答えようがないからです。

有効なのは、いまの業務を起点にして時間軸だけを動かす聞き方です。「いまの業務のうち、続けたいものと、そろそろ別のことをやってみたいものを分けるとどうなりますか」。これなら、目の前の仕事の話として答えられます。

もう一つは、他者の例を置く方法です。「同じ職種の方で、半年後に別の業務を任されるようになったケースがあります」と事例を示すと、自分の場合はどうかという質問が返ってきやすくなります。

将来について話せた相手は、他社から声がかかったときに一度こちらへ相談します。キャリア形成への満足が23.7%にとどまる以上、この話ができているかどうかは、そのまま差になります。

スタッフと派遣先の双方へ同じ週に確認を取る進め方の図

更新の前後で、何を確認し何を提案するか

ここからは手順です。3か月契約を前提に、更新日から逆算して次のように組み立てます。

タイミング

スタッフに確認すること

派遣先に提案すること

更新の2か月前

業務範囲が広がっていないか/続ける意向

業務内容の変化を共有する

更新の6週間前

時給への納得感/次に挑戦したい業務

業務拡大に応じた単価改定を打診する

更新の1か月前

改定後の条件を説明し、合意を取る

更新条件を確定する

更新後1週間

変更点が現場で反映されているか

変更内容の運用を確認する

会話例を挙げます。「更新はいかがですか」ではなく、「この半年で、最初にお願いしていた業務から増えたものはありますか」と聞く。増えていれば、その内容を書き留めて派遣先に共有し、単価改定の相談につなげます。

業務が広がった事実を先に共有しておけば、値上げの話は唐突になりません。逆に、更新の直前になって時給だけを持ち出すと、価格の交渉に見えてしまいます。価格競争に巻き込まれない進め方は「派遣会社が価格競争から抜け出せない理由」でも扱っています。

確認の順番を間違えない

もう一つ、失敗しやすいのが確認の順番です。スタッフに更新の意向を聞く前に派遣先へ打診してしまうと、本人が断ったときに気まずさが残ります。

逆に本人の意向だけ確認して派遣先に伝えずにいると、派遣先が別の判断を進めてしまうこともあります。同じ週のうちに両方へ当たり、どちらの返答も一度は保留として扱うのが安全です。

想定ケース|同じ時期に更新を迎えた二人

同じ派遣先で、EさんとFさんが同じ月に更新日を迎えたとします。どちらも就業から9か月、時給も同じでした。

Eさんの担当者は、2か月前の面談で「最初の説明から増えた業務はありますか」と聞きました。データ入力に加えて電話対応が増えていたことが分かり、その週のうちに派遣先へ共有しています。6週間前に単価改定を打診し、1か月前に時給改定込みの条件で合意しました。

Fさんの担当者は、更新の2週間前に「更新は大丈夫そうですか」とだけ聞きました。「特に問題ありません」と返ってきたので、そのまま手続きに進んでいます。更新はされましたが、その3か月後にFさんは他社へ移りました。

二人とも「問題ない」と答えていました。違いは、業務が増えた事実を誰かが拾ったかどうかです。これは構造を説明するための想定ケースですが、拾う仕組みがなければ、増えた業務は誰の目にも触れません。

更新が切れる理由を三つに分ける

更新に至らなかった案件は、理由を本人都合・派遣先都合・自社都合の三つに分けてください。理由が「本人都合」ばかりになっている会社は、切り分けができていない可能性があります。

更新が切れた理由

直前に出やすい兆候

再発防止の打ち手

本人都合(条件)

時給の話題を避ける/他社の話が出る

更新2か月前に時給の納得感を必ず聞く

本人都合(人間関係)

現場の話が具体性を欠く/面談日程の調整が遅い

指揮命令者以外との関係も確認項目に入れる

派遣先都合(業務終了)

繁忙の波の話が増える/増員の話が止まる

抵触日と業務量の見通しを四半期ごとに確認

派遣先都合(評価)

派遣先から改善要望が出ている

要望を記録し、次回面談で改善状況を確認

切り分けで注意したいのは、派遣先側の理由です。派遣先の担当者は、スタッフ本人への不満を直接は口にしません。「業務量が落ち着いたので」という説明の裏に、評価上の懸念が隠れていることがあります。

更新の可否は、断られた理由よりも、その三か月前に受けた要望をどう扱ったかに表れます。要望を記録し、次の面談で改善状況を報告していれば、業務量を理由にした終了は起きにくくなります。

三つ目の「自社都合」は、表には出てきません。本人も派遣先も理由として口にしないからです。更新面談が直前になった、派遣先から受けた要望を次の面談まで放置した、業務が広がっているのに時給改定を提案しなかった。こうした自社側の不作為は、相手の言葉では「条件が合わなかった」に変換されます。

見分け方は一つで、更新2か月前の面談記録が残っているかどうかです。記録がない案件が未更新になっていたら、それは自社都合として数えてください。分類を厳しくするほど、直せる場所は増えます。

更新率は何を分母に数えるか

指標として追うなら、分母の定義を先に決めてください。分母は「当月に更新期日を迎えた契約の件数」です。稼働人数を分母にすると、更新期日が来ていない人まで含まれ、数字が動かなくなります。

たとえば稼働70人の会社で、ある月に更新期日を迎えたのが18件、そのうち更新されたのが15件なら、更新率は83.3%です。これを稼働人数70人で割ってしまうと21.4%となり、何を表しているのか分からない数字になります。

そのうえで、担当者別に出します。会社合計の更新率が85%でも、担当者別に見れば70%台と95%が混ざっていることがあります。差が大きい担当者の面談記録を読めば、何が効いているのかはすぐに分かります。月次で追うべき指標の全体像は「派遣会社の経営者が毎月確認すべき経営指標一覧」にまとめました。

なお、分類は四半期ごとに見直してください。打ち手を入れた項目の件数が減っているか、別の項目に移っているだけなのかは、同じ基準で数え続けないと分かりません。

今日からできる改善策

まず、直近1年で更新に至らなかった案件を並べ、先ほどの三つに分類します。件数を数えるだけで、直す場所は一つに絞れます。

次に、全稼働者の更新日を一覧にし、2か月前と6週間前の面談日をカレンダーに登録します。更新日は契約時点で決まっているので、就業開始と同時に入れてしまうのが確実です。

そのうえで、更新時の単価改定を制度として組み込みます。厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」では、全国加重平均が1,176円と前年度から4.9%引き上げられる水準が示されました。賃金が上がる年に時給を据え置けば、更新は切れやすくなります。

最後に、過去1年で時給を改定していない稼働者の人数を数えてください。この人数が多いほど、更新のたびに離脱の確率が上がっています。そもそもの立ち上がりで条件がずれていないかは「就業30日以内に離職する派遣スタッフを減らす方法」で扱いました。初日の対応は「就業初日に派遣スタッフが辞めないための準備」にまとめています。

今日から実践するためのチェックリスト

・直近1年の未更新案件を、本人都合・派遣先都合・自社都合の三つに分類した

・分類ごとに件数を数え、最も多い理由を特定した

・全稼働者の更新日を一覧化し、2か月前と6週間前の面談日を登録した

・更新面談で「業務範囲が広がったか」を必ず聞く項目として様式に加えた

・業務が広がった案件について、派遣先へ共有した記録を残した

・過去1年で時給を改定していない稼働者の人数を集計した

・最低賃金の改定時期に合わせた単価改定の提案スケジュールを作成した

・更新率の分母を「当月に更新期日を迎えた契約件数」と定義した

・担当者別に更新率を算出し、差の大きい担当者の面談記録を確認した

まとめ

更新率が高い会社は、更新を確認作業にしていません。業務範囲の変化を先に押さえ、それを派遣先へ共有し、条件の見直しにつなげています。有期契約の53.9%が同じ派遣先で1年未満という現実の中では、更新は年に何度も訪れる再提案の機会です。

まずは直近1年の未更新案件を三つの理由に分け、件数を数えてみてください。そのうえで、更新日から逆算した面談日をカレンダーに置く。更新率は、この二つを整えるだけでも動きはじめます。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 有期労働契約の派遣スタッフについて、現在の派遣先での通算就業期間はどのような分布ですか?
A. 「1年未満」が53.9%で半数以上を占める
B. 「3年以上」が過半数を占める
C. ほとんどが2年から3年に集中している

正解:A 解説:「結論」の章のとおりです。無期労働契約では「3年以上」が68.0%と対照的でした(日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」)。

Q2. 派遣スタッフの満足度について、調査はどのような差を示していますか?
A. 就業先への満足52.7%に対し、キャリア形成への満足は23.7%
B. どちらもほぼ同じ水準
C. キャリア形成への満足のほうが高い

正解:A 解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおり、いまの職場に不満はないが将来が見えないという状態が読み取れます(同調査、満足+やや満足の計)。

Q3. 更新面談で「特に問題ありません」と返ってきた場合、次に取るべき対応はどれですか?
A. 問題がないと判断し、そのまま更新手続きに進む
B. この半年で業務範囲が広がっていないかを具体的に聞き、広がっていれば派遣先へ共有する
C. 時給を上げられないか、その場で派遣先に電話する

正解:B 解説:「更新の前後で、何を確認し何を提案するか」の章のとおりです。業務が広がった事実を先に共有しておけば、単価改定の相談は唐突になりません。

ハケンバンクについて

更新面談で「次の仕事」を示せるかどうかは、手元にある案件の数で決まります。選択肢がなければ、更新の話は現状維持の確認で終わってしまいます。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。

参考文献

・一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

・厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」(2026年7月28日答申)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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