物流2024年問題が派遣市場に与えた影響と今後の需要変化

市場動向

2026/10/6

物流2024年問題が派遣市場に与えた影響と今後の需要変化

物流の2024年問題は、長らく「ドライバー不足の話」として語られてきました。そして派遣業界では、それが需要の追い風になると受け止められてきたはずです。規制開始から2年半が過ぎ、公的統計が出そろった今、実際に何が起きたのかを確認できます。結論から言えば、動いたのはドライバーの派遣ではなく、市場全体の件数と価格でした。

派遣先件数と売上高の伸び率が令和5年度に落ち込み、令和6年度に前年を上回る水準まで跳ね上がる動きを2本の折れ線で示した図。

反転したのは、件数と価格だった

目次

結論:2024年度に市場は明確に反転した

先に数字を示します。厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によれば、2024年度の派遣先件数は861,926件で前年度比7.9%増、年間売上高は9兆9,005億円で同9.4%増でした。

前年度と比べてください。令和5年度の集計結果では、派遣先件数は0.4%増、売上高は3.3%増にとどまっていました。伸び率が一段跳ね上がっているのです。

2024年度に動いた指標を並べる

主要な指標を3年分並べると、変化の位置がはっきりします。

指標

令和4年度

令和5年度

令和6年度

派遣先件数

795,853件(+6.1%)

799,097件(+0.4%)

861,926件(+7.9%)

年間売上高

8兆7,646億円(+6.4%)

9兆500億円(+3.3%)

9兆9,005億円(+9.4%)

派遣料金(8時間換算)

24,909円(+1.8%)

25,337円(+1.7%)

26,257円(+3.6%)

派遣労働者の賃金(8時間換算)

15,968円(+1.7%)

16,190円(+1.4%)

16,735円(+3.4%)

登録者数

7,969,654人

7,710,857人

7,528,323人

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」各年度。( )内は対前年度増減比

令和6年度は、2024年4月に自動車運転業務の時間外労働へ上限規制が入った初年度と重なります。ただしこの統計に職種別の内訳はありません。伸びのうちどれだけが物流によるものかを特定することはできません。言えるのは、規制が始まった年度に市場全体の指標が同時に反転したという事実までです。

もう一点、見逃せない動きがあります。登録者数は3年連続で減っています。797万人から753万人へ、5.5%の減少です。稼働は増え、母集団は縮んだ。価格が動いた背景には、この需給の食い違いがあります。

念のため付け加えておきます。2024年度は最低賃金の引上げが続いた時期でもあり、料金と賃金がそろって上がった要因を物流だけに帰すことはできません。複数の圧力が同じ方向に重なった年度と見るのが妥当でしょう。

見落とされている論点──増えたのは無期雇用派遣

伸びの中身を雇用形態で分けると、話はさらに具体的になります。

令和6年度の対前年度増減で、無期雇用派遣が7.9%増、有期雇用派遣が1.3%増にとどまることを2本の帯で対比した図(厚生労働省 労働者派遣事業報告書)。

増えたのは、穴埋めではなく置き換え

令和6年度の無期雇用派遣労働者は908,956人で前年度比7.9%増。これに対し有期雇用派遣労働者は1,290,683人で同1.3%増にとどまりました。前年度は無期1.7%増、有期3.3%減でしたから、無期の伸びだけが跳ねていることになります。

これは需要の性格を示しています。繁忙期を乗り切るための一時的な補充であれば、増えるのは有期のほうです。無期が伸びたということは、恒常的に必要な要員として扱われたと読むのが自然でしょう。

物流の側の事情と重ねると、筋は通ります。上限規制は繁忙期だけの制約ではなく、通年の制約です。全日本トラック協会の解説にあるとおり、輸送能力そのものが構造的に目減りします。一時的な応援では埋まりません。

値上げは通ったが、取り分は変わっていない

ここは冷静に見る必要があります。令和6年度の派遣料金は3.6%増、賃金は3.4%増でした。差額は8時間あたり9,522円、料金に占める割合は36.3%です(編集部試算)。

年度

派遣料金

賃金

差額

差額の割合

令和4年度

24,909円

15,968円

8,941円

35.9%

令和5年度

25,337円

16,190円

9,147円

36.1%

令和6年度

26,257円

16,735円

9,522円

36.3%

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」各年度をもとに編集部で算出。差額には社会保険料、有給休暇引当、募集費、管理費などが含まれる

3年で0.4ポイントしか動いていません。値上げは通ったが、価格構造そのものは変わっていないということです。増えた分の大半は賃金として出ていきました。利益が伸びたとすれば、単価ではなく件数の増加によるものです。価格をめぐる構造は「人材派遣市場は価格競争に向かうのか」でも整理しています。

需要はこれから、どこで増えるのか

制度はすでに次の段階に入っています。改正物流効率化法は2025年4月にまず荷主等の努力義務が施行され、2026年4月からは一定規模以上の特定事業者に物流統括管理者の選任と中長期計画の作成が義務づけられました(国土交通省 物流効率化法ポータルサイト)。

制度が求めること

現場で必要になる作業

派遣で応えられる領域

荷待ち時間の短縮

入出荷の時間枠管理、予約受付

庫内の進行管理、事務

荷役時間の短縮

パレット化、仕分けの前倒し

倉庫内作業、検品

1回あたり積載量の増加

積合せの計画、拠点間の調整

配車補助、データ入力

中長期計画・定期報告

実績の集計と文書化

物流事務、資料作成

注目したいのは右の列です。いずれもドライバーではありません。荷待ちや荷役を減らすのは倉庫と事務の仕事であり、計画や報告をつくるのは管理部門の仕事です。2024年問題への対応は、結果としてトラックの外側の人員需要を生んでいます。

つまり物流業界向けの提案は、「ドライバーを出します」ではなく「待たせない体制をつくります」という形になります。荷主の側にも義務が課された以上、話を持ち込む先は運送会社だけではありません。新規の接点づくりについては「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」も参考になります。

ただし、この需要には上限もあります。荷待ちや荷役の削減は、突き詰めれば作業そのものを減らす取り組みです。人を増やして解決する期間は、長くは続かないと見ておくほうが安全でしょう。提案の軸を人数に置いたままでは、効率化が進んだ段階で外されます。

今日から備えるために

まず、自社の取引先を「運送会社」と「荷主」に分けてください。改正法で義務が生じたのは荷主側にも及びます。荷主のほうが、まだ手つかずである可能性が高いからです。

取引先を運送会社と荷主に分け、提案職種を並べ、無期雇用化を検討し、作業時間の実績を残すという4ステップの手順図。

物流需要に備える四つのステップ

次に、提案できる職種を庫内作業・検品・物流事務・データ入力に整理します。ドライバー以外で何を出せるかを先に決めておくほうが、話が早く進みます。

そのうえで、無期雇用への切り替えを検討してください。市場全体で無期が7.9%伸びたのは、恒常的な要員として求められたからです。短期の補充だけを前提にしていると、この需要は取りこぼします。最後に、荷待ち時間や作業時間の実績を残す仕組みを用意しておくと、荷主の報告義務に直接役立ちます。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 取引先を「運送会社」と「荷主」に分類した

  • 荷主側で改正法の対象になり得る規模の企業を抽出した

  • ドライバー以外で提案できる職種を一覧化した

  • 庫内作業・検品・物流事務・データ入力の経験者を登録者から抽出した

  • 無期雇用に切り替える候補者と条件を決めた

  • 荷待ち時間・荷役時間の実績を記録できる様式を用意した

  • 派遣料金の改定時期を、最低賃金の改定時期とあわせて計画した

  • 自社の料金と賃金の差額率を、直近3年で算出した

まとめ

物流2024年問題が派遣市場に与えた影響は、ドライバー派遣の増加としては現れませんでした。現れたのは、派遣先件数7.9%増、売上高9.4%増という市場全体の反転と、無期雇用派遣の7.9%増です。同時に登録者数は3年で5.5%減りました。需要は増え、供給は縮んでいるというのが2024年度の姿です。

一方、料金に占める差額の割合は36%前後で動いていません。件数が伸びただけで、構造は変わっていないのです。2026年4月からは荷主側にも義務が課されました。次の需要は、トラックの外側で生まれます。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 2024年度(令和6年度)の派遣市場について、公的統計は何を示していますか?
A. 派遣先件数は前年度比7.9%増、売上高は9.4%増と、前年度の0.4%増・3.3%増から反転した
B. 件数・売上高ともに前年度から減少した
C. 前年度とほぼ同じ伸び率だった

正解:A 解説:「結論」の章のとおりです。ただしこの統計に職種別の内訳はなく、伸びのうちどれだけが物流によるものかは特定できません(厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和6年度速報)。

Q2. 2024年度に伸びたのは、どの雇用形態の派遣労働者ですか?
A. 無期雇用派遣が7.9%増と突出し、有期雇用派遣は1.3%増にとどまった
B. 有期雇用派遣だけが大きく伸びた
C. 無期・有期ともに同じ割合で伸びた

正解:A 解説:「見落とされている論点」の章のとおりです。一時的な補充であれば有期が伸びるはずで、無期の伸びは恒常的な要員として求められたことを示唆します。

Q3. 物流会社から「2024年問題で人が足りない」と相談されました。提案として適切なのはどれですか?
A. ドライバーの増員だけを提案する
B. 荷待ち・荷役時間を減らす庫内作業や物流事務など、トラックの外側の要員を含めて提案する
C. 制度上できることがないと伝える

正解:B 解説:「需要はこれから、どこで増えるのか」の章のとおりです。改正物流効率化法が求める荷待ち時間の短縮や報告書の作成は、いずれもドライバー以外の業務にあたります。

ハケンバンクについて

改正法で義務が生じたのは運送会社だけではありません。荷主側にも荷待ち時間の短縮などが求められており、物流の要員を必要とする企業の範囲は広がっています。とはいえ、その接点を自社の営業だけで見つけるには時間がかかります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

  • 厚生労働省「令和5年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2025年3月31日公表)

  • 国土交通省「物流効率化法」理解促進ポータルサイト

  • 公益社団法人全日本トラック協会「知っていますか?物流の2024年問題」

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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