
求人開拓・営業
2026/8/12
「物流は人手不足と聞くのに、なぜ自社には案件が回ってこないのか」。中小・中堅の派遣会社で営業を担う方なら、一度は感じたはずです。人手不足は事実でも、案件を安定して獲得できる会社とそうでない会社に分かれます。その差は営業の熱量ではなく、物流会社が派遣を発注する構造を捉えているかどうかです。本記事は、従業員5〜300名規模の派遣会社の経営者・営業責任者・担当者に向けて、物流会社から案件を継続獲得する着眼点を、公的データと現場構造から整理します。
目次
物流会社から案件を得る鍵は、価格の安さでも訪問回数でもありません。現場の波動(繁閑差)と恒常的な欠員を、どれだけ具体的に言い当て、埋める段取りを見せられるかです。市場は大きく、労働者派遣の派遣先件数は全国で約86万件、年間売上高は9兆9,005億円に達します(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」)。物流も主要な需要先であり、案件の総量は不足していません。獲得できないのは、発注側の事情に営業の言葉が届いていないからです。
物流会社が「人が足りない」と言いながら派遣を発注しない背景には、募集職種のミスマッチと発注タイミングのズレがあります。まず職種です。トラックドライバーの有効求人倍率は2.18倍で、全職業平均の1.17倍を大きく上回ります(国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」、令和4年度データ)。ただしドライバーは、派遣が法的に可能でも、大型免許や車両手配の問題から埋めにくい領域です。物流会社が派遣に最も期待するのは、ピッキングや仕分けなどの庫内作業です。ここを外して「ドライバーを紹介します」と提案しても、需要とかみ合いません。
次にタイミングです。物流の欠員は突発的というより、EC需要期や月末月初など、ある程度読める波動として現れます。この波の前に接点を持てない営業は、欠員後に電話をしても、すでに他社が入った後になりがちです。
物流会社の派遣発注は、現場長(センター長・倉庫長)の裁量で動く一方、単価と定着は本社の管理部門が見ます。営業は、この二者に別々の言葉で話す必要があります。現場長が評価するのは「言った人数が、言った時間に、使えるスキルで来るか」です。数合わせで人を送り、初日に無断欠勤が出れば、その一度で信頼は崩れます。本社が見るのは、粗利に直結する単価と、採用・教育コストを左右する定着率です。
2024年問題以降、この構造はさらに動いています。時間外労働の上限規制でドライバーの稼働が制約され、輸送能力は2024年時点で約14.2%不足すると試算されました(NX総合研究所「改めて『物流の2024年問題』の理解と対応を考える」)。運べない分を補う在庫前倒しや中継拠点の新設が進み、庫内作業の需要はむしろ増えています。営業が見るべきは「ドライバー不足」の表面ではなく、その裏で膨らむ庫内・拠点運営の人手です。
多くの営業は職種と時給で提案しますが、現場が本当に困っているのは、早朝・深夜・土日祝という「人が集まらない時間帯」と、需要期の急な増員です。ここを埋められる会社は、単価が多少高くても選ばれます。前掲のNX総合研究所は、対策が進まなければ2030年には輸送能力の約34.1%が不足すると試算します。この流れは、庫内・仕分けの人材需要を中長期で押し上げます。
だからこそ営業の武器は「何名出せるか」ではなく「どの枠を埋められるか」に変わります。「深夜に動ける人が何名いるか」を数字で語れる営業は、それだけで差別化になります。
架空の想定で整理します。同じEC物流センターに営業した二社があるとします。A社は「庫内スタッフを時給1,300円で20名手配できます」と、人数と単価だけを提示しました。B社は事前に商圏の登録者を確認し、「11月の繁忙期に向け、平日日中15名に加え、集まりにくい土日枠を5名、深夜帯を3名確保できます。初日の欠員リスクを下げるため、開始3日は当社担当が現地に立ちます」と、時間帯・立ち上げ・欠員対策まで示しました。
選ばれるのは、多くの場合B社です。時給が50円高くても、現場が恐れる欠員による出荷遅延の損失は、時給差を大きく上回るからです。単価で競うA社は受注できても薄利で、フォローに手が回らず更新が続きません。受注の質は提案の解像度で決まる点が、両社を分けます。
下表は、受注につながりにくい営業と、つながりやすい営業の違いです。基礎指標も押さえておきましょう。派遣料金は8時間換算で全業務平均26,257円、派遣スタッフの賃金は同16,735円です(厚生労働省、令和6年度)。この差に、募集費・教育費・フォロー工数・自社の粗利が含まれます。単価だけで受注すると、フォローに人を割けず定着が落ち、更新されない悪循環に陥ります。
観点 | 受注しにくい営業 | 受注しやすい営業 |
|---|---|---|
提案の軸 | 人数と時給 | 埋めにくい枠(時間帯・波動) |
話す相手 | 現場長のみ | 現場長と本社を使い分け |
立ち上げ | 人を送って終わり | 初日フォローと欠員対策を明示 |
商圏理解 | 依頼が来てから確認 | 繁忙期の手前で先回り |
収益 | 単価勝負で薄利 | 定着で更新・粗利を確保 |
指標(8時間換算・全業務平均) | 数値 | 出典 |
平均派遣料金 | 26,257円 | 厚生労働省 令和6年度報告(速報) |
派遣スタッフ賃金 | 16,735円 | 厚生労働省 令和6年度報告(速報) |
派遣先件数(全国) | 約86万件 | 厚生労働省 令和6年度報告(速報) |
ドライバー有効求人倍率 | 2.18倍 | 国土交通省 令和4年度データ |
明日から着手できるのは、既存の接点と自社データの棚卸しです。まず、過去に取引や問い合わせのあった物流会社を一覧化し、繁忙期の1〜2か月前に増員予定を先回りで確認します。次に、登録スタッフを稼働可能な時間帯で分類し、深夜・土日に動ける人数を把握します。この二つが揃えば、人数ではなく「埋めにくい枠を埋める提案」ができます。新規開拓の型を見直す場合は、[派遣会社の新規案件を獲得する営業手法]もあわせて確認してください。
商圏内の物流施設(配送センター・倉庫・宅配拠点)をリスト化したか
既存・休眠先の繁忙期を把握し、1〜2か月前に接触する予定を組んだか
自社登録スタッフを「稼働可能な時間帯」で分類したか
深夜・早朝・土日に動けるスタッフの人数を数字で言えるか
提案時に、初日フォローと欠員時の代替手段を示しているか
現場長向けと本社向けで、伝える価値を分けているか
受注案件の粗利と定着率(更新率)を案件ごとに確認しているか
物流の人手不足は今後も続き、案件の総量が減ることは考えにくい状況です。差がつくのは、ドライバーという表面ではなく、庫内・拠点運営の需要を捉え、時間帯と波動で提案できるかどうかです。まず取り組むのは、既存・休眠先への繁忙期前アプローチと、自社スタッフの時間帯別棚卸しの二点です。人数と単価の勝負から「埋めにくい枠を埋める会社」への転換が、継続獲得の出発点です。
物流会社の新規開拓を自社の営業だけで広げにくい場合、外部の仕組みを併用する選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会い、既存の営業活動を補完する用途で活用できます。
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2025年公表)
国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」(令和4年度データ/資料)
株式会社NX総合研究所「改めて『物流の2024年問題』の理解と対応を考える」(2023年公開)
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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