派遣会社は営業会社か採用会社か?その本質を考える

業界コラム

2026/9/11

派遣会社は営業会社か採用会社か?その本質を考える

「うちは営業会社なのか、採用会社なのか」。派遣会社の経営者と話していると、この問いにぶつかることがあります。営業を強くすれば案件は増える。採用を強くすれば人は集まる。どちらも正しいのですが、両方に同じだけ力を注げる会社はそう多くありません。この記事では、この問いへの答えを、雇用形態の内訳と、派遣先からの申込という二つのデータから考えます。

上段に案件から人へ、下段に人から案件へと矢印が向かう二つの順番を並べた対比図。派遣会社の事業モデルが商社型かメーカー型かで順序が逆になることを示している。

目次

結論:重心は「採用会社」へ動いている。決めているのは需要側

結論を先に書きます。派遣会社は、営業会社から採用会社へ重心を移しつつあります。そしてそれを決めているのは、各社の方針ではなく市場の需要側です。

厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によれば、派遣労働者は約220万人で、内訳は無期雇用が908,956人、有期雇用が1,290,683人でした。この二つは、単なる契約形態の違いではありません。先に人を採るか、先に案件を取るかという、事業モデルそのものの違いです。どちらの比率が高いかで、その会社が営業会社なのか採用会社なのかは、おおむね決まってきます。

二つの型──「商社型」と「メーカー型」

派遣事業には、大きく二つの型があります。案件を取ってから人を集める登録型と、人を採ってから案件をつける無期雇用型です。ここでは前者を商社型、後者をメーカー型と呼んでみます。

観点

商社型(登録型が中心)

メーカー型(無期雇用が中心)

順番

案件を取ってから人を集める

人を採ってから案件をつける

待機のコスト

原則として発生しない

派遣会社が賃金を負担する

ボトルネック

充足のスピード

案件の確保

主に見る指標

受注件数・充足率

稼働率・待機日数

組織の強みが出る場所

営業とコーディネーターの連携

採用・育成と案件開発

案件が途切れたとき

契約が終わって終了

待機として損益に残る

違いがいちばん出るのは、待機のコストです。商社型では、案件が決まるまで賃金は発生しません。メーカー型では、派遣先が決まっていない期間も派遣会社が賃金を払い続けます。つまりメーカー型は在庫を抱える商売であり、稼働率がそのまま損益に直結します。同じ「派遣会社」という看板でも、経営の勘所はまったく違うということです。

受注から就業までしか賃金が発生しない型と、採用直後の待機期間から賃金が発生する型を、時間軸の帯で並べて示した図。

データが示す重心の移動──無期雇用の伸びが意味すること

では、業界全体はどちらへ動いているのか。同じ集計では、無期雇用の派遣労働者が前年度比7.9%増、有期雇用が1.3%増でした。稼働している派遣労働者に占める無期雇用の比率は、39.8%から41.3%へ上がっています。

伸び率の差は6倍以上です。制度的な要因も背景にありますが、結果として業界全体が、在庫を抱える側へ少しずつ移動していることは確かでしょう。在庫を抱えるとは、案件が途切れたときのリスクを自社で負うということです。裏を返せば、採用会社であるほど、案件を切らさない営業力が重要になるという逆説も生まれます。新規と既存のどちらに時間を割くかは、「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」でも整理しています。

見落とされている論点──需要は「採用」に向かっているが、供給が追いつかない

需要側のデータを見ると、もう一つ別の景色が見えてきます。紹介予定派遣の状況です。

段階

令和6年度

前の段階からの通過率

派遣先からの申込人数

91,705人

—

実際に派遣された労働者数

25,535人

27.8%

職業紹介を実施した労働者数

18,219人

71.3%

直接雇用に結びついた労働者数

13,881人

76.2%

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)をもとに算出

令和6年度、派遣先から紹介予定派遣の申込があったのは91,705人分でした。しかし実際に派遣されたのは25,535人で、申込に対する割合は27.8%にとどまります。その先は順調で、職業紹介まで進んだのが18,219人、直接雇用に結びついたのが13,881人です。

詰まっているのは、明らかに入口です。派遣先は「採用につながる人」を求めているのに、供給が追いついていない。しかも紹介予定派遣を実施している事業所は2,322カ所、実績のあった事業所の7.0%にすぎません。この需要に応えられている会社は、まだごく一部だということになります。

両方を同じ組織でやると、何が起きるか

難しいのは、多くの会社が商社型とメーカー型を同じ組織で回していることです。営業は受注件数で評価され、コーディネーターは充足数で評価される。ところが無期雇用者の稼働率は、どちらの目標にも入っていないことがあります。結果として、待機が発生しても誰の責任にもならない状態が生まれます。

日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査では、現在の派遣会社から就業している理由として「営業担当者とコミュニケーションが取りやすいから」が16.7%、「特に理由はない」が15.4%でした。担当者との関係が価値になっている層と、何も感じていない層が同居している。組織の設計が、そのままスタッフの体験に表れていると読むこともできます。加えて、帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)では、「人材派遣・紹介」業種で非正社員が不足すると回答した企業が60.0%と全業種で最も高くなっています。人を増やして両方を担わせる前提は、置きにくくなっています。

今日からできる改善策

最初にやるべきは、自社がどちらの型かを数字で確かめることです。稼働人数に占める無期雇用の比率を出してください。3割を超えているなら、すでにメーカー型の要素が大きい会社です。その場合、月次で最初に見る指標は受注件数ではなく稼働率になります。

無期雇用比率の算出、待機日数の集計、月次で見る指標の入れ替え、案件開発へと進む4ステップの手順図。

次に、無期雇用者の待機日数を集計します。これが積み上がっているなら、いま必要なのは採用ではなく案件開発です。労働需給そのものは緩みつつあり、有効求人倍率は令和7年度平均で1.20倍と前年度から0.05ポイント低下しました。人が集まりやすくなるほど、採用会社であることの優位は薄れていきます。募集の見直しは「派遣の求人広告で反応が悪い原因と改善方法」、媒体の配分は「派遣の集客はWeb広告と求人媒体どちらに投資すべきか」も参考になります。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 稼働人数に占める無期雇用の比率を算出した

  • 無期雇用者の月間待機日数を集計し、金額に換算した

  • 月次会議で最初に見る指標を、自社の型に合わせて決めた

  • 無期雇用者の稼働率について、担当部署と責任者を明確にした

  • 紹介予定派遣の引き合いが過去1年に何件あったかを数えた

  • 引き合いに対して実際に派遣できた割合を算出した

  • 待機が発生している職種と、案件が不足している職種を突き合わせた

  • 営業とコーディネーターの評価指標が矛盾していないかを確認した

まとめ

派遣会社は営業会社か採用会社か。この問いの答えは、自社の雇用形態の内訳がすでに示しています。無期雇用の比率が上がるほど事業は在庫を抱えるメーカー型に近づき、経営の焦点は受注件数から稼働率へ移ります。

そして需要側を見れば、採用につながる人材への申込は供給を大きく上回っていました。どちらか一方を選ぶ話ではありません。自社がどちらの型で戦っているのかを自覚したうえで、見る指標と評価をそろえる。まずはその一点から始めるのが、現実的な出発点になるはずです。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 派遣会社の事業モデルを「商社型」と「メーカー型」に分けたとき、待機中の賃金コストが発生するのはどちらですか?
A. 案件を取ってから人を集める商社型
B. 人を採ってから案件をつけるメーカー型
C. どちらも発生しない

正解:B
解説:「二つの型」の章のとおり、無期雇用が中心のメーカー型では派遣先が決まっていない期間も賃金が発生し、稼働率が損益に直結します。

Q2. 紹介予定派遣について、令和6年度の集計はどのような状況を示していますか?
A. 派遣先からの申込91,705人に対し、実際に派遣されたのは25,535人(27.8%)
B. 申込のほぼ全員が派遣され、直接雇用にも至っている
C. 派遣先からの申込自体がほとんどない

正解:A
解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおり、詰まっているのは入口です。実施事業所も2,322カ所と、実績のあった事業所の7.0%にとどまります(厚生労働省、令和6年度)。

Q3. 自社の稼働人数に占める無期雇用の比率が3割を超えていると分かった場合、月次会議で最初に見るべき指標はどれですか?
A. 新規受注件数
B. 無期雇用者を含む稼働率と待機日数
C. 登録者数の累計

正解:B
解説:「今日からできる改善策」の章のとおり、メーカー型の要素が大きい会社では待機がそのまま損益に残るため、受注件数より稼働率を先に見る必要があります。

ハケンバンクについて

メーカー型に寄っている会社ほど、待機を埋める案件を継続的に確保する必要が出てきます。条件に合う案件を自社の営業だけで積み上げるには時間がかかるため、外部の仕組みを併用する選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

  • 厚生労働省「令和5年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」(2025年)

  • 一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」(2026年)

  • 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日公表)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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