
市場動向
派遣会社はこれからも増え続けるのか。この問いには、厚生労働省が毎年公表している事業所数で答えが出せます。
結論を先に書くと、増加はすでに止まりかけています。この記事では5年分の実数を並べたうえで、代わりに何が増えているのかを数字で確認します。
労働者派遣事業の事業所数は、令和3年から令和7年にかけて42,448から44,110へ増えました。ただし年ごとの増加幅を見ると、様子が変わります。
令和4年は632か所増、令和5年は656か所増でした。ところが令和6年は299か所増、令和7年は75か所増にとどまっています。
つまり「増えている」という表現は間違いではありませんが、伸びはほぼ止まりました。一方で派遣労働者数は前年比5.0%増です。会社は増えず、人だけが増えている状態だと言えます。

出典は厚生労働省の労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)および各年の同資料です。毎年6月1日時点で集計された事業所数です。
時点 | 集計事業所数 | 前年からの増加 | 増減比 |
|---|---|---|---|
令和3年6月1日 | 42,448所 | — | — |
令和4年6月1日 | 43,080所 | +632所 | +1.5% |
令和5年6月1日 | 43,736所 | +656所 | +1.5% |
令和6年6月1日 | 44,035所 | +299所 | +0.7% |
令和7年6月1日 | 44,110所 | +75所 | +0.2% |
令和5年までは年600所台で増えていました。それが令和7年には75所です。4年で増加幅は8分の1以下になりました。
この数字を「まだ増えている」と読むか「もう増えていない」と読むかで、打ち手は変わります。
派遣の事業所数には、もう一つ別の数字があります。年度ごとの事業報告を提出した事業所数です。
こちらは令和4年度43,112所、令和5年度41,793所、令和6年度43,812所と上下しています。提出状況に左右されるため、増減がそのまま事業者数の動きを表すわけではありません。
推移を追うなら6月1日現在の集計事業所数、構造を見るなら年度報告の集計、と使い分けるのが安全です。
年度報告には、提出事業所のうち実際に労働者派遣の実績があった事業所数も載っています。
年度 | 提出事業所数 | 実績のあった事業所数 | 割合 |
|---|---|---|---|
令和4年度 | 43,112所 | 32,639所 | 75.7% |
令和5年度 | 41,793所 | 31,815所 | 76.1% |
令和6年度 | 43,812所 | 33,207所 | 75.8% |
3年とも75〜76%で安定しています。裏を返せば、毎年およそ4分の1の事業所は1年間まったく派遣の実績がありません。
令和6年度でいえば10,605所です。許可は持っているが動いていない事業所が、常時1万所規模で存在していることになります。

ここが今回いちばん重要な数字です。事業所数と派遣労働者数を割り算すると、1事業所あたりの人数が出ます。
時点 | 派遣労働者数 | 集計事業所数 | 1事業所あたり |
|---|---|---|---|
令和4年6月1日 | 1,861,574人 | 43,080所 | 43.2人 |
令和5年6月1日 | 1,924,455人 | 43,736所 | 44.0人 |
令和6年6月1日 | 1,913,646人 | 44,035所 | 43.5人 |
令和7年6月1日 | 2,009,094人 | 44,110所 | 45.6人 |
令和6年から令和7年にかけて、1事業所あたりは43.5人から45.6人へ、2.1人増えました。率にすると4.8%増です。
同じ期間、事業所数は0.2%しか増えていません。増えた人材は、新しい会社ではなく既存の事業所に入っています。
内訳を見ると、もう一段はっきりします。令和7年6月1日現在、無期雇用派遣労働者は874,747人で前年比7.0%増、有期雇用派遣労働者は1,134,347人で同3.5%増でした。
無期の伸びが有期の2倍です。無期雇用は派遣会社が自社で雇い続ける形ですから、会社の数が増えないまま1社あたりの抱える人数が増える構図と整合します。
言い換えると、いま広がっているのは参入ではなく、既存事業者の内部での積み増しです。
年度報告には売上高ランク別の事業所数も載っています。3年分を並べると、動きの向きがはっきりします。
売上高ランク | 令和4年度 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|---|
10億円以上 | 1,714所 | 1,786所 | 1,985所 |
5億円〜10億円 | 2,200所 | 2,304所 | 2,389所 |
1億円〜5億円 | 9,712所 | 9,267所 | 9,669所 |
1,000万円未満 | 4,572所 | 4,703所 | 4,671所 |
10億円以上は1,714所から1,985所へ、2年で271所増えました。15.8%増です。
一方、1,000万円未満は4,572所から4,671所でほぼ横ばいでした。全体に占める1億円未満の割合も58.3%、58.0%、57.7%とわずかに下がっています。
会社の数は変わらないまま、上の層が厚くなる。これが数字から読み取れる構造変化です。価格面の対応は派遣会社が価格競争から抜け出す方法と差別化戦略に整理しています。
事業所の伸びが止まったのは、仕事がなくなったからではありません。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月)では、職業計の有効求人倍率は1.05倍でした。
職種別に見ると差は大きく、建設躯体工事は7.94倍、介護サービスは3.82倍です。人が足りない職種は、むしろはっきりしています。
求人企業の側も派遣を使う姿勢を変えていません。厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査では、派遣を利用する理由の1位は「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」で76.5%でした。
産業別では製造業が23.6%で最も高くなっています。評価されているのはスピードであり、そこは数年単位では動いていません。
市場規模の見通しは【2026年最新】人材派遣市場の規模と今後10年の成長予測を徹底分析にまとめました。需要側の数字だけを見れば、参入が止まる理由は見当たりません。

実績のない1万所を「まだ空きがある」と読むのは危険です。許可を取っただけでは案件も人も付かないことを、この数字は示しています。
労働者派遣事業の倒産は2025年1〜11月で82件、前年同期比41.3%増でした。詳しくは派遣会社の倒産件数から見る業界の未来|生き残る会社に共通する経営戦略で扱っています。
つまり1万所の休眠は参入余地ではなく、退出の待機列と見るほうが実態に近いでしょう。
令和6年度の集計から、実績のある1事業所の平均像を出すとこうなります。
項目 | 令和5年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
売上高 | 約2億8,400万円 | 約2億9,800万円 |
稼働している派遣労働者 | 66.6人 | 66.3人 |
派遣先件数 | 25.1件 | 26.0件 |
登録者数 | 242.4人 | 226.7人 |
売上と派遣先件数は増え、稼働人数と登録者数は減りました。登録者は6.5%減です。
案件は増えているのに、供給側が細っている。1事業所あたりで見ると、この形になっています。
ここからは試算です。実績のある1事業所の平均、稼働66.3人で考えます。
派遣料金と賃金の差額は1人1日あたり9,522円です。稼働を10%増やして73人にすると、差額ベースの粗利は年約1,110万円増える計算になります。ただし採用費と内勤の工数も増えます。
一方、稼働は66.3人のままで料金を5%上げると、粗利は年約1,360万円増えます。人を増やさずに済むぶん、採用費も内勤の負担も変わりません。
どちらを選ぶかは状況次第ですが、事業所数が頭打ちの局面では後者のほうが取りやすくなります。取引先が他社に乗り換える先が増えていないためです。
登録者が前年度比6.5%減っていることも、この判断を後押しします。人を増やす前提の計画は、供給側の数字と合わなくなってきています。
見る数字 | 全国の目安 | 確認する理由 |
|---|---|---|
内勤1人あたり稼働人数 | — | 規模の拡大余地がわかる |
1事業所あたり稼働人数 | 66.3人 | 平均との距離がわかる |
登録者に対する稼働の比率 | 66.3÷226.7=29.2% | 名簿の実働率がわかる |
登録者のうち実際に動いているのは3割弱です。名簿の数ではなく、動く人の数で考える必要があります。毎月の指標は派遣会社の経営者が毎月確認すべき経営指標一覧にまとめています。
自社の稼働人数を出し、全国平均の66.3人と比べる
登録者数に対する稼働の比率を計算し、29.2%と比べる
派遣先件数を数え、26.0件との差を確認する
売上高が1億円未満か以上かで、全体のどの層にいるかを把握する
直近1年で稼働人数と登録者数がどちらに動いたかを並べる
料金改定と稼働増のどちらが自社で取りやすいかを試算する
事業所数は令和7年6月1日時点で44,110所、前年比0.2%増でした。4年前の増加幅632所に対し、直近は75所です。
同じ時期に派遣労働者数は5.0%増え、1事業所あたりは43.5人から45.6人になりました。増えているのは会社の数ではなく、1社あたりの規模です。
売上10億円以上の事業所は2年で15.8%増えました。1,000万円未満はほぼ横ばいです。層の厚みが上に移っています。
「増え続けるか」を気にするより、自社が66.3人という平均のどちら側にいるかを確認するほうが先です。次の一手は派遣会社が成長するための経営ロードマップの描き方で段階別に整理しています。
Q1. 令和7年6月1日現在の集計事業所数は、前年からどれだけ増えたでしょうか。
A. 75所
B. 299所
C. 656所
正解:A
解説:44,035所から44,110所へ、75所の増加でした。299所は令和6年、656所は令和5年の増加幅です。
Q2. 年度報告を提出した事業所のうち、労働者派遣の実績があった割合はおよそどれくらいでしょうか。
A. 約6割
B. 約7割半
C. 約9割
正解:B
解説:令和4年度75.7%、令和5年度76.1%、令和6年度75.8%と、3年とも75〜76%で安定しています。
Q3. 令和4年度から令和6年度にかけて、売上10億円以上の事業所数はどう動いたでしょうか。
A. 1,714所から1,985所へ増えた
B. ほぼ横ばいだった
C. 減った
正解:A
解説:2年で271所、15.8%の増加です。同じ期間、1,000万円未満は4,572所から4,671所でほぼ横ばいでした。
事業所数が頭打ちということは、取引先が乗り換える先も増えていないということです。既存の関係を深めるほど、料金面の交渉はしやすくなります。
ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。
・厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」
・厚生労働省「労働者派遣事業の令和6年6月1日現在の状況(速報)」
・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)
・厚生労働省「令和5年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
・厚生労働省「令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
・厚生労働省「一般職業紹介状況」(職業安定業務統計)
・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査)
この記事の監修者

山本 凌大
CLEAR INNOVATION株式会社代表取締役
大学在学中に「非常識を新常識に変える」をミッションに、CLEAR INNOVATION株式会社を創業。全国の派遣企業と求人企業を繋げる国内初のプラットフォーム「ハケンバンク」を提供。

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