派遣スタッフから信頼される営業担当の共通点

実務ノウハウ

2026/9/21

派遣スタッフから信頼される営業担当の共通点

同じ会社の中でも、更新率や離職率が担当者によって大きく違うことがあります。人柄の差だと片づけられがちですが、それでは打ち手が出てきません。公的統計を見ると、スタッフが担当者に持ち込む話には明確な偏りがあり、その多くは担当者一人では決められない領域に集まっています。この記事では、その事実を起点に、信頼される担当者が共通して持っている型を整理します。

担当者が決められる範囲を示す円の外側から、賃金や継続に関する相談が矢印で流れ込んでくる構図の図。要望が裁量の外に集中していることを表している。

相談は、決められる範囲の外側から来る

目次

結論:差が出るのは「即答できない要望」の扱い方

先に結論を書きます。信頼される担当者に共通しているのは、要望に応えられたかどうかではなく、応えられない要望の扱い方が決まっていることです。

厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査(派遣労働者調査の有効回答7,119人)によれば、派遣元に対して「要望がある」と答えた人は47.8%でした。派遣の種類別では、登録型が59.3%、登録型以外が37.0%。登録型では6割が、何かしら言いたいことを抱えていることになります。日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査でも、営業担当者とのコミュニケーションに満足している人は47.2%、不満は21.2%と分かれていました。

要望の中身は、担当者が単独で決められない領域に集まっている

では、何が持ち込まれているのか。要望が「ある」と答えた人に、その内容を聞いた結果です。

派遣元への要望の内容

割合

賃金制度を改善してほしい

58.6%

継続した仕事を確保してほしい

29.7%

派遣先での直接雇用に切り替えるよう依頼してほしい

21.6%

福利厚生制度を充実してほしい

17.0%

中途解除された場合、他の派遣先を確保してほしい

16.1%

苦情・要望に迅速に対応してほしい

13.0%

年次有給休暇を取りやすくしてほしい

10.2%

教育訓練を充実してほしい

7.9%

出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」。派遣元への要望が「ある」と回答した人(全体の47.8%)を100とした割合、複数回答3つまで

上位3つは、賃金制度、仕事の継続、直接雇用への切り替え依頼です。いずれも担当者の裁量では完結しません。単価の改定、案件の確保、派遣先との交渉。会社の決裁や相手先の事情が必ず絡みます。

注目したいのは「苦情・要望に迅速に対応してほしい」が13.0%にとどまっている点です。速さそのものを求めている人は、多数派ではありません。折り返しの速さで信頼を得ようとする発想は、要望の実態とはずれています。求められているのは、時間のかかる話を最後まで扱いきることのほうです。

見落とされている論点──営業担当は、実質的な相談窓口になっている

同じ調査に、もう一つ見過ごせない数字があります。派遣元のキャリアコンサルティングの相談窓口について、「置かれている」と答えた人は46.4%、「置かれていない」は7.5%、そして「わからない」が43.9%でした。登録型に限れば「わからない」は56.4%です。

窓口の設置自体は労働者派遣法で派遣元に求められています。それでも、半数近くは存在を認識していない。

さらに、「置かれている」と答えた人にその窓口を聞くと、「キャリアコンサルタント(社内)」60.1%に次いで「営業担当者」が53.9%でした。登録型では営業担当者が68.6%で最も高くなっています。制度上の窓口があっても、スタッフから見れば窓口は組織ではなく個人に張り付いているわけです。担当者が代われば、その人にとっては窓口が消えたのと同じことが起こります。

相談窓口が「置かれている」46.4%に対し「わからない」が43.9%を占めること、窓口があると答えた人の53.9%が営業担当者を挙げていることを並べた図(厚生労働省 令和4年)。

窓口は、組織ではなく個人に張り付いている

派遣元への要望と、派遣先への要望は中身が違う

要望の向き先を比べると、担当者が受け取っている話の性格がはっきりします。

派遣元(派遣会社)へ

派遣先へ

要望が「ある」と答えた割合

47.8%

38.4%

最も多い要望

賃金制度を改善してほしい(58.6%)

派遣契約期間を長くしてほしい(25.6%)

次に多い要望

継続した仕事を確保してほしい(29.7%)

指揮命令系統を明確にしてほしい(17.8%)

話の性格

待遇と就業の継続

日々の運用と契約の長さ

出典:厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」。要望の内容は、それぞれ要望が「ある」と回答した人を100とした割合

派遣先へ向かうのは、指揮命令系統や契約期間といった現場運用の話です。これに対し、派遣元へ向かうのは賃金と継続、つまり生活に直結する話が中心になります。同じ「要望」という言葉でも、重さが違うのです。

だとすれば、担当者が相談を軽く受けると、それだけで信頼は失われます。「確認しておきますね」で流した話が、相手にとっては生活設計の話だったということが起こり得ます。

三つの共通点と、その場での言い方

ここからは具体的な型です。信頼を得ている担当者の行動には、次の三つが共通しています。

共通点

具体的な行動

会話例

決められる範囲を先に開示する

初回面談で、自分の裁量と会社決裁の線を伝える

「時給の改定は私の一存では決められません。派遣先と社内に持ち帰る話になります」

期限を切って持ち帰る

回答日を日付で約束する

「来週の水曜までに、社内でどこまで動けるかをお伝えします」

結論が出なくても返す

進んでいなくても期日に連絡する

「まだ結論は出ていませんが、派遣先には話を上げました。次は来月初めにご連絡します」

三つに共通しているのは、結論ではなく過程を開示しているという点です。要望の中心が賃金や継続である以上、その場で答えが出ることはほとんどありません。答えが出ないこと自体を責める人は多くありません。信頼を失うのは、何も返ってこなかったときです。

失敗が多いのは二つ目です。「確認します」とだけ言って期限を切らないと、こちらが動いていても、相手からは止まって見えます。期限さえ切っておけば、「まだ動いていません」という連絡でさえ、扱われている証拠になります。初回面談での確認項目は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」も参考になります。

担当者差が出るのも、ここです。同じ社内でも、決裁の線を最初に伝える人と、伝えないまま「やってみます」と答える人がいます。後者は、動き出しは良くても、結果が出なかったときに約束を破った形になります。最初に線を引いておくかどうかが、そのまま差になります。

今日からできる改善策

まず、直近3か月にスタッフから受けた相談を一覧化し、「その場で答えた」「持ち帰って返した」「持ち帰ったまま返していない」の三つに分けてください。三つ目の件数が、そのまま信頼の目減り分にあたります。

スタッフからの相談を棚卸しし、未返答を抽出し、回答期限の伝え方を統一し、担当者交代の引き継ぎ様式を直すという4ステップの手順図。

信頼を積み直す四つのステップ

次に、未返答のものへ順に連絡を入れます。時間が経っていても、経過を伝えるだけで扱いは変わります。そのうえで、期限の伝え方を全社で統一してください。「なるべく早く」ではなく日付で伝える、というだけの取り決めで構いません。

最後に、担当者交代の様式を見直します。窓口が個人に張り付いている以上、交代はスタッフから見れば窓口の消失です。引き継ぎ時に、未返答の要望とその経緯を必ず引き渡す欄を設けてください。既存取引の維持については「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」でも整理しています。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 直近3か月にスタッフから受けた相談を一覧化した

  • 相談を「その場で回答」「持ち帰って回答」「未返答」の三つに分類した

  • 未返答の件数を担当者別に集計した

  • 未返答の相談すべてに、経過連絡を入れた

  • 回答期限を日付で伝える運用を、社内の共通ルールとして決めた

  • 初回面談で「自分の裁量で決められる範囲」を伝える文言を用意した

  • 担当者交代の引き継ぎ様式に、未返答の要望を記載する欄を追加した

  • 相談窓口の場所と連絡方法を、稼働中の全員へ改めて案内した

まとめ

信頼される営業担当の共通点は、人当たりの良さでも連絡の速さでもありません。持ち込まれる要望の中心が賃金と継続である以上、その場で答えを出せる場面はほとんどないからです。共通しているのは、決められる範囲を先に伝え、期限を切って持ち帰り、結論が出なくても返すという扱い方の型です。

まずは直近3か月の相談を三つに分け、未返答の件数を数えてみてください。そこに連絡を入れるところから、信頼は積み直せます。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 派遣元への要望として最も多く挙げられているものはどれですか?
A. 苦情・要望に迅速に対応してほしい
B. 賃金制度を改善してほしい
C. 教育訓練を充実してほしい

正解:B
解説:「要望の中身」の章のとおり58.6%で最多です。「苦情・要望に迅速に対応してほしい」は13.0%にとどまりました(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」、要望が「ある」と回答した人を100とした割合)。

Q2. 派遣元のキャリアコンサルティングの相談窓口について、調査はどのような実態を示していますか?
A. 「置かれている」46.4%に対し、「わからない」が43.9%を占める
B. ほぼ全員が窓口の場所を把握している
C. 窓口が置かれていない事業所が半数を超える

正解:A
解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおりです。登録型では「わからない」が56.4%にのぼり、窓口があると答えた人の53.9%は営業担当者を窓口として挙げています。

Q3. スタッフから時給の改定を相談されました。その場での対応として適切なのはどれですか?
A. 「上げられるようにしてみます」と前向きに答える
B. 「私の一存では決められません」と線を伝えたうえで、回答日を日付で約束する
C. 「難しいと思います」とその場で結論を伝える

正解:B
解説:「三つの共通点」の章のとおりです。決められる範囲を先に開示し、期限を切って持ち帰れば、結論が出なくても経過を返せます。

ハケンバンクについて

担当者が「継続した仕事を確保してほしい」という要望に応えられるかどうかは、手元にある案件の数で決まります。扱える案件が少なければ、扱い方を整えても返せる答えは増えません。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、派遣労働者調査の有効回答7,119人)

  • 一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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