派遣スタッフとのLINE運用で気を付けるポイント

実務ノウハウ

2026/9/23

派遣スタッフとのLINE運用で気を付けるポイント

派遣スタッフとの連絡にLINEを使っている会社は少なくありません。つながりやすく、返信も早い。一方で、どこまで使ってよいのかを社内で決めている会社は多くないはずです。問題が起きるのは使いすぎたときではなく、扱ってはいけない用件を扱ったときです。この記事では、法令上の線引きと、用件ごとの具体的な運用を整理します。

散らばった紙片の山と、一枚にまとまった書面を見比べている担当者のイラスト

結論:決めるべきは使い方ではなく「LINEで扱わないこと」

先に結論を書きます。整えるべきは返信の速さやスタンプの可否ではなく、LINEで扱わない用件をあらかじめ決めておくことです。

前提として、利用率を確認しておきます。総務省の令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(N=1,800)によれば、LINEの利用率は全年代で91.1%。年代別では40代94.8%、50代94.5%、60代91.1%と高水準ですが、70代は71.8%と差が出ます。使う前提で設計しつつ、連絡手段をLINEだけに絞らないことが必要になります。

この差は実務に直結します。70代の3割近くは、そもそもLINEで届きません。登録時に主たる連絡手段を本人に選んでもらい、台帳へ記録しておく必要があります。

労働条件と就業条件は、トーク本文に書いてはいけない

最も注意すべきはここです。労働条件の明示は書面の交付が原則ですが、平成31年4月から、労働者が希望した場合に限り、FAX・メール・SNSのメッセージ機能でも明示できるようになりました。厚生労働省のリーフレットには、LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能が例として明記されています。

ただし条件があります。出力して書面を作成できるものに限るという点です。同じリーフレットでは、SNS本文に直接記載して労働条件を細切れに明示することを「良くない例」として、印刷する際に途切れてしまうため望ましくないと説明しています。

用件

LINEでの扱い

理由

労働条件・就業条件の明示

PDFを添付。本人の希望確認が前提

出力して書面を作成できる必要がある

契約更新の条件、時給改定

PDFを添付

同上。本文に書くと記録が断片化する

案件の紹介

概要はトークで可、条件はPDF

概要と条件を混ぜない

出退勤・遅刻の連絡

可。ただし勤怠記録へ転記する

トーク履歴は勤怠の記録ではない

本人確認書類、マイナンバー

送らせない

個人データが端末に残る

苦情・ハラスメントの申告

受けたら窓口へ回す

LINEで完結させない

さらに重要なのは、労働者が希望していないにもかかわらず電子メール等のみで明示することは、労働基準関係法令の違反になるという点です。リーフレットには、最高で30万円以下の罰金となる場合があると記載されています。派遣の場合は労働者派遣法に基づく就業条件の明示も重なります。「LINEでもいいですか」と一言確認したかどうかが、実務上の分かれ目になります。

派遣ではもう一段あります。労働基準法に基づく労働条件の明示と、派遣法に基づく就業条件の明示は別建てで、どちらも必要です。

就業条件の明示には、派遣先の名称や所在地、就業場所、業務内容、派遣期間といった項目が含まれます。本文に書き散らすと、どちらの義務を果たした記録なのかが後から判別できなくなります。

見落とされている論点──2024年4月から明示事項が増えている

もう一つ、運用の危険度を押し上げた変更があります。厚生労働省の2024年4月からの労働条件明示ルールの変更により、明示すべき事項が追加されました。

追加されたのは、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約の更新上限の有無と内容、そして無期転換申込権が発生する更新時における無期転換申込機会です。いずれも派遣で日常的に発生する論点ばかりです。

上段より下段のカードが3枚多く、増えた分を指さしている担当者のイラスト

明示すべき事項は、以前より増えている

項目が増えたということは、トーク本文で断片的に伝えたときの危険も増えたということです。「今回は〇〇支店ですが、ゆくゆくは△△もあるかもしれません」という一文は、変更の範囲についての説明として記録に残ります。書面と食い違えば、あとから読まれるのはトーク画面のほうです。

保存・端末・到達──運用側の三つの穴

法令の線引きとは別に、運用の側にも穴があります。厚生労働省のリーフレットは、SNSなどの一部サービスでは情報の保存期間が限られている場合があると説明しています。そのうえで、なるべく出力して保存するよう労働者に伝えることを求めています。つまりトーク履歴は、記録の保管手段としては当てにできないということです。

穴

何が起きるか

対処

保存期間

履歴が遡れず、言った言わないになる

条件はPDFで送り、社内にも保存する

私物端末

担当者の退職・交代で履歴ごと消える

業務用端末か公式アカウントに寄せる

到達確認

既読がつかない、通知に埋もれる

重要な連絡は電話や書面で到達を確認する

とくに私物端末は見落とされがちです。個人アカウントで運用していると、会社側は何が伝えられたかを確認できません。担当者が代われば、スタッフから見れば連絡先そのものが消えます。前任者の携帯にだけ履歴が残っている状態は、個人情報の管理という意味でも望ましくありません。

到達についても補足します。リーフレットは、本当に到達したかを労働者に確認するよう求めています。既読は本人が読んだことの証明にはなりません。重要な連絡ほど、LINE以外の手段を重ねてください。

用件別の運用と、実際の文面

ここからは実際の言い方です。判断に迷いやすい三つの場面を挙げます。

場面

避けたい対応

実際の文面例

労働条件を伝える

本文に条件を並べて送る

「労働条件の通知をLINEでお送りしてよろしいでしょうか。ご希望であればPDFを添付します。ご希望でなければ書面をお渡しします」

更新条件を伝える

「時給は据え置きです」とだけ送る

「更新条件をPDFでお送りします。内容をご確認のうえ、ご不明点はお電話ください」

苦情を受けた

トーク上で解決しようとする

「お知らせいただきありがとうございます。正式に記録して対応しますので、あらためてお電話させてください」

三つに共通しているのは、LINEを入口として使い、結論はLINEの外に置いているという点です。連絡の速さは活かしつつ、記録が必要なものは別の形で残す。この切り分けができていれば、使い方の細かいルールは要りません。

失敗しやすいのは二つ目です。更新条件は本人にとって重い話であるにもかかわらず、短い文で済ませやすい用件でもあります。「据え置きです」の一文だけが記録に残ると、説明したはずの理由は残りません。初回面談での確認項目は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」も参考になります。

担当者差が出るのもここです。同じ社内でも、条件を必ずPDFにする人と、そのつど本文に打つ人がいます。後者は速い代わりに、問題が起きたときに会社を守る記録が残りません。

今日からできる改善策

まず、直近3か月のトーク履歴を担当者ごとに開いて、労働条件や就業条件に触れた発言を数えてください。件数がそのまま、書面と食い違い得る記録の数です。

4段の階段の一段目に足をかけ、次の段へ上がろうとしている担当者のイラスト

LINE運用を整える四つのステップ

次に、用件を「LINEで完結してよい」「PDFを添付する」「LINEでは扱わない」の三つに分類します。分類そのものは30分あれば作れます。そのうえで、条件を伝える書式をPDFのひな形として用意してください。明示した日付、送信した担当者の氏名、法人名を入れておくと、あとの確認が楽になります。

連絡の頻度そのものを決めたい場合は派遣スタッフの就業後フォローは何回行うべきか、体制づくりは派遣スタッフの定着率を改善するフォロー体制の作り方にまとめています。

最後に、使用する端末とアカウントを決めます。私物端末の個人アカウントで運用しているなら、業務用の端末か公式アカウントへの移行を検討してください。就業直後の連絡設計は「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」もあわせてご覧ください。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 直近3か月のトーク履歴で、労働条件・就業条件に触れた発言を数えた

  • 用件を「LINEで完結」「PDFを添付」「LINEでは扱わない」の三つに分類した

  • 労働条件をLINEで送る前に、本人の希望を個別に確認する運用にした

  • 条件通知のPDFひな形に、日付・担当者氏名・法人名を入れた

  • 出退勤の連絡を勤怠記録へ転記する担当と手順を決めた

  • 本人確認書類やマイナンバーをLINEで送らせない旨を、登録時に案内した

  • 業務で使う端末とアカウントの種類を決め、私物端末の扱いを定めた

  • 担当者交代・退職時に、トークの引き継ぎと削除の手順を明文化した

まとめ

LINEを使うかどうかは、もはや論点ではありません。全年代で91.1%が使う手段である以上、連絡経路として組み込むほうが自然です。ただし労働条件の明示には、本人の希望確認と、出力して書面を作成できる形という条件が付きます。本文に細切れで書く運用は、厚生労働省が明確に望ましくないとしている方法です。

まずは用件を三つに分け、条件を伝えるPDFのひな形を1枚作ってください。それだけで、LINEは速さだけを担う安全な入口になります。

確認クイズ(FAQ)

Q1. LINEで労働条件を明示する場合、法令上どのような条件がありますか?
A. 労働者が希望した場合に限られ、出力して書面を作成できるものである必要がある
B. 会社が決めれば、いつでもLINEだけで明示できる
C. LINEでの明示は一切認められていない

正解:A
解説:「労働条件と就業条件」の章のとおりです。労働者が希望していないにもかかわらず電子メール等のみで明示することは、労働基準関係法令の違反となります。最高で30万円以下の罰金となる場合があります(厚生労働省リーフレット)。

Q2. 2024年4月から追加された労働条件の明示事項に含まれるものはどれですか?
A. 就業場所・業務の変更の範囲
B. 通勤経路の詳細
C. 派遣先の担当者名

正解:A
解説:「見落とされている論点」の章のとおり、変更の範囲に加えて、有期契約の更新上限、無期転換申込機会も明示事項に追加されました。

Q3. スタッフから更新条件について聞かれました。LINEでの返し方として適切なのはどれですか?
A. 「時給は据え置きです」とトークで返す
B. 更新条件をPDFで送り、不明点は電話で受ける旨を添える
C. 「更新の件は会ったときに話しましょう」とだけ返す

正解:B
解説:「用件別の運用」の章のとおりです。LINEは入口として使い、条件そのものは出力して書面にできる形で残すのが安全です。

ハケンバンクについて

連絡手段を整えても、提示できる案件が少なければ、スタッフとのやり取りは現状確認で止まります。扱える案件の幅は、日々の連絡の中身そのものを変えます。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」(労働基準法施行規則改正のお知らせ)

・厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」(有期契約労働者の無期転換ポータルサイト)

・総務省情報通信政策研究所「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年6月公表、N=1,800)

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
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