
実務ノウハウ
「フォローはちゃんとやっているのに、辞めてしまう」。コーディネーターの方から、この相談をよく受けます。連絡の回数を増やしても状況が変わらない、と。ところが業界調査を見ると、フォローの頻度そのものは働く側の希望と大きくずれていません。ずれているのは中身のほうです。この記事では、面談で何をいつ話すべきかを、確認項目と会話例まで落として整理します。

ずれているのは、頻度ではなく内容
目次
先に結論を書きます。定着を左右するのは、フォローの回数ではなく話している内容です。
日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査(有効回答5,523人)によれば、営業担当者とのコミュニケーション頻度は「2〜3か月に1回」が51.5%で最多でした。一方、派遣社員が希望する頻度も「2〜3か月に1回」が47.8%で最多です。頻度については、現状と希望がほぼ一致しています。「1か月に1、2回」を希望する人が28.7%いるのに実際は17.7%という差はありますが、これから見る内容のずれに比べれば小さいものです。
問題は中身です。同じ調査から、現在のコミュニケーション内容と、希望する内容を並べてみます。
話している/話してほしい内容 | 現在 | 希望 | 差 |
|---|---|---|---|
時給・仕事内容など就業条件の相談、交渉 | 52.1% | 66.3% | +14.2pt |
派遣先でのトラブルに関する相談 | 35.3% | 40.1% | +4.8pt |
世間話、雑談 | 32.6% | 18.2% | ▲14.4pt |
新たな就業先の提案 | 15.0% | 35.2% | +20.2pt |
キャリアアップの支援 | 5.9% | 22.1% | +16.2pt |
スキルアップの支援 | 4.9% | 19.4% | +14.5pt |
あてはまるものはない | 20.3% | 13.5% | ▲6.8pt |
出典:日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」(有効回答5,523人、複数回答)
差が最も大きいのは「新たな就業先の提案」で、現在15.0%に対し希望は35.2%。20.2ポイントの開きがあります。次いで「キャリアアップの支援」が16.2ポイント、「スキルアップの支援」が14.5ポイントの不足でした。次の仕事とキャリアの話が、決定的に足りていないということになります。
表の中で、大きくマイナスに振れている項目が一つあります。「世間話、雑談」です。現在32.6%に対し、希望は18.2%。14.4ポイントの過剰でした。
関係づくりのためにまず雑談から入る。これは現場で広く共有されている作法だと思います。ただ、データを見る限り、その手法はやや行き過ぎているようです。訪問の時間は限られています。雑談に使った分だけ、次の仕事やキャリアの話は削られる。問題は雑談そのものではなく、雑談で終わってしまう面談だと考えるべきでしょう。

同じ30分を、何に使っているか
もう一つ、見落とされやすい問題があります。用意した支援が本人に届いていないことです。
支援内容 | 派遣元が提供している | 実際に利用している |
|---|---|---|
有給・無料のeラーニングによる教育訓練 | 72.1% | 45.3% |
キャリアコンサルティング | 54.1% | 10.3% |
派遣就業に関するトラブル相談 | 46.3% | 9.0% |
健康に関する相談 | 37.9% | 5.9% |
出産・育児・介護サポート | 23.1% | 2.7% |
特にない | 10.8% | 41.7% |
出典:日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」(有効回答5,523人、複数回答)
労働者派遣法では、派遣元にキャリアコンサルティングの相談窓口を設けることが求められています。実際、提供していると認識されている割合は54.1%。ところが利用は10.3%にとどまります。
さらに踏み込むと、キャリアコンサルティングを受けられるかどうかについて「知らない/わからない」と答えた人が49.9%。受けたことがない理由の最多は「キャリアコンサルティングが何かよく知らないから」で32.7%でした。制度は用意されている。ただ、存在そのものが伝わっていないのです。
では、何をいつ話すか。契約期間の分布から逆算すると、設計はかなり具体的にできます。厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によれば、派遣契約の85.7%は3か月以内です(件数ベース)。多くの現場では、四半期ごとに更新の判断が発生しているということになります。
タイミング | 主に話す内容 | 具体的な確認項目 |
|---|---|---|
就業初日〜1週間 | トラブルの芽 | 業務指示は誰から出るか/休憩と残業の実際/通勤の負担 |
1か月目 | 業務の変化 | 任された範囲の変化/想定との差/気になる人間関係 |
更新の2か月前 | 次の仕事とキャリア | 更新の意向/次に挑戦したい業務/不足しているスキル |
更新の1か月前 | 条件と提案 | 時給改定の要否/他案件の提示/教育訓練と相談窓口の案内 |
会話例を一つ挙げます。1か月目の面談で「困っていることはありますか」と聞くと、多くの場合「特にありません」と返ってきます。そこで止めず、「先月と比べて、任される仕事は増えましたか」「今の仕事を続けた先に、どんな仕事があると思いますか」と、業務の変化と将来に寄せて聞き直す。抽象的な質問からは、抽象的な答えしか返ってきません。
もう一つ、担当者によって差が出るのは記録です。同じ質問をしても、聞いた内容が残っていなければ次の面談では活かせません。更新を断られた事例を振り返ると、直前の面談ではなく、その二回前の面談ですでに兆候が出ていることがあります。担当者ごとの更新率の差は、能力の差ではなく記録の差であることが少なくありません。聞いた項目と回答は、決まった様式で残してください。
まず、直近3か月の面談記録を開き、話した内容を先ほどの項目で分類してください。世間話に分類される割合が3割を超えているなら、そこは削る余地があります。記録が残っていないなら、記録様式をつくることが最初の一歩です。

フォローを設計し直す四つのステップ
次に、面談の最後に必ず伝える定型文を一つ決めます。「当社ではこの研修と、キャリアの相談窓口をご利用いただけます」。これだけで、「知らない」という理由による未利用はかなり減らせるはずです。同じ調査では派遣会社の推奨度について、9〜10点をつけた人が19.8%、NPSは−29.3でした。フォローの質は、紹介や再登録という形で採用コストにも返ってきます。就業直後の対応は「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」、面談項目の設計は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」もあわせてご覧ください。
直近3か月の面談記録を、話した内容の種類別に分類した
「世間話・雑談」に分類された面談の割合を算出した
「新たな就業先の提案」を話題にした面談の割合を算出した
更新日から逆算して、2か月前と1か月前の面談日を全稼働者分カレンダーに登録した
タイミングごとの確認項目を一覧にし、担当者全員に配布した
面談の最後に伝える研修・相談窓口の定型文を決めた
自社の教育訓練とキャリアコンサルティングの利用率を集計した
担当者別に、更新率と面談実施率を並べて比較した
定着のためのフォローは、回数を増やしても効きません。頻度は現状と希望がほぼ一致している一方、内容には最大20ポイントのずれがありました。足りないのは、次の仕事とキャリアの話。多すぎるのは、雑談です。
まずは直近3か月の面談記録を分類し、何を話してきたのかを数字で確かめてください。そのうえで、更新日から逆算して面談日を置き、タイミングごとに聞くことを決める。フォロー体制とは、この設計そのものです。
Q1. 営業担当者とのコミュニケーションについて、派遣社員の希望と現状の差が最も大きい話題はどれですか?
A. 世間話、雑談
B. 新たな就業先の提案
C. 派遣先でのトラブルに関する相談
正解:B
解説:「内容のずれ」の章のとおり、現在15.0%に対し希望35.2%で20.2ポイントの開きがあります(日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」有効回答5,523人)。
Q2. 派遣会社が提供するキャリアコンサルティングについて、調査はどのような状況を示していますか?
A. 提供54.1%に対し利用は10.3%で、受けられるか「知らない/わからない」が49.9%
B. 提供している会社がほとんどない
C. 提供されていれば、ほぼ全員が利用している
正解:A
解説:「制度はあるのに、届いていない」の章で述べたとおりです。受けたことがない理由の最多は「キャリアコンサルティングが何かよく知らないから」で32.7%でした(同調査)。
Q3. 面談記録を分類したところ、雑談が中心の面談が全体の4割を占めていると分かりました。まず取るべき対応はどれですか?
A. 面談の回数を倍に増やす
B. 更新日から逆算して面談日を置き、タイミングごとに聞く項目を決める
C. 雑談を一切禁止する
正解:B
解説:「面談の設計」の章のとおり、契約の85.7%が3か月以内である以上、更新サイクルに合わせた設計が現実的です。雑談そのものではなく、雑談で終わることが問題になります。
更新の2か月前に「次の仕事」を提案するには、提案できる案件が手元にあることが前提になります。選択肢が乏しければ、面談は現状確認で終わってしまいます。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。
一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索
この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム
ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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