日本の人材不足はいつまで続く?派遣会社が備えるべき対策

市場動向

2026/8/4

日本の人材不足はいつまで続く?派遣会社が備えるべき対策

「人手不足はいつまで続くのか」。この問いの答えを、業界全体の話として受け取ってはいけません。労働供給の不足は職種と地域で、到来する時期が10年以上ずれるからです。しかも企業が感じている不足感は、すでに低下し始めています。この記事では、従業員5名から300名規模の派遣会社の経営者・事業責任者に向けて、不足がいつ、どこで深刻になるのかと、時間軸ごとの備え方を整理します。

目次

結論:不足は終わらない。ただし来る時期は職種と地域で10年以上ずれる

2022年の労働供給量6,587万人のうち820万人が2040年までに減り、5,767万人になることを示した図。労働供給の不足は2030年に341万人、2040年に1,100万人と推計されている。

日本全体の労働供給不足は、2030年に341万人余、2040年には1,100万人余に達すると推計されています。労働供給量は2022年の約6,587万人から、2040年には5,767万人へ減少する一方、労働需要はほぼ横ばいで推移する見込みです(リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」2023年)。

つまり構造としての人材不足は、少なくとも2040年まで終わりません。しかし、これをそのまま経営判断に使うことはできません。職種別・地域別に分解すると、不足の深さは3倍以上の開きがあります。備えるべきは「不足がいつ来るか」ではなく「自社の主力職種と商圏に、いつ来るか」です。

企業の不足感はすでにピークアウトしている

短期の景況と長期の人口動態は別物です。混同すると、営業計画も採用投資も判断を誤ります。

2026年4月時点で正社員の不足を感じている企業は50.6%、非正社員では28.3%でした。前年同月はそれぞれ51.4%、30.0%で、非正社員は4月として4年ぶりに3割を下回っています(帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」2026年)。

企業が人手不足を感じる割合は、正社員が51.4%から50.6%、非正社員が30.0%から28.3%へ低下。一方で労働供給の減少が加速するのは2027年頃からであることを示した図。

非正社員の不足感は、派遣需要と連動しやすい指標です。その数字が下がっている以上、足元では「人手不足だから発注が増える」という前提が弱まっています。一方で労働供給の減少は、2027年頃から加速すると推計されています。今は踊り場であり、構造的な不足はこの後に本番を迎えます。この時間差の読み違えは、「「人材不足」は派遣会社にとって本当に追い風なのか」でも触れた論点と重なります。

見落とされている論点:事務職は2030年まで「供給過剰」と推計されている

職種別に見ると、派遣の主力である事務職の位置づけが他と大きく異なります。

職種分類

2040年の不足率

2040年の不足人数

介護サービス

25.3%

58.0万人

商品販売

24.8%

108.9万人

輸送・機械運転・運搬

24.2%

99.8万人

建設

22.0%

65.7万人

保健医療専門職

17.5%

81.6万人

接客給仕・飲食物調理

15.1%

56.6万人

生産工程

13.3%

112.4万人

事務、技術者、専門職

6.8%

156.6万人

(出典:リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」2023年をもとに作成)

事務・技術者・専門職は2040年の不足率が6.8%と最も低く、2030年時点では21.3万人の供給過剰と推計されています。介護サービスとは4倍近い差です。

事務系職種を主力とする派遣会社は、2030年頃まで人材不足の追い風をほとんど受けません。登録者は比較的集まる一方、派遣先も採用に困らず、単価交渉の材料が乏しい状態が続きます。逆に介護、物流、建設、販売を扱う会社は、案件は増えるが人を出せない局面に先に入ります。同じ業界で経営課題が正反対になるのです。

地域差も同様です。同推計では2040年に労働需要が充足するのは東京都だけで、他の46道府県はすべて供給不足に陥ると見込まれています。東京中心の会社には、地方の供給制約が見えにくい構造があります。

派遣会社自身が、すでに人材不足の当事者になっている

人材不足の影響を最初に受ける業種のひとつが、派遣業そのものです。

2025年度の人手不足倒産は441件と前年度の350件から約1.3倍に増え、年度ベースで初めて400件を超えました。業種別では建設業が112件で全体の25.4%を占めますが、労働者派遣業も12件と、業種別で過去最多を更新しています(帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」2026年)。

さらに前掲の動向調査では、非正社員の不足を感じる企業の割合が6割を超えたのは「人材派遣・紹介」だけでした。派遣会社は、顧客の人材不足を解決する立場でありながら、自社の非正社員不足が全業種で最も深刻な業種という位置にあります。

例えば、案件を増やし続けたのに稼働人数が伸びず、コーディネーターの負荷だけが上がる会社を想定してみましょう。受注残が積み上がるほど既存派遣先への対応が薄くなり、更新を落とす。売上は横ばいで採用費だけが増えます。生き残る会社との違いは「派遣会社は淘汰の時代へ?生き残る会社と消える会社の違い」でも整理しています。

備えるべき対策は、時間軸で分けて考える

「今すぐやること」と「5年かけて仕込むこと」を分けなければ、どれも中途半端に終わります。推計の時間軸に合わせると、次のように整理できます。

時期

市場で起きること

派遣会社が備えること

〜2030年頃

不足感は緩む一方、供給減少が加速し始める

広告依存を減らし人材プールを厚くする。低粗利案件の整理

2030〜2035年頃

生活維持サービス職種で不足が顕在化

介護・物流・建設など不足率の高い分野への案件シフト

2035年〜

地方を中心に供給制約が常態化

商圏の再設計、外国人材・シニアを含む供給源の多様化

同レポートは、機械化・自動化が進めば2030年の不足を28.7万人にとどめられるとし、これを「10年の猶予」と表現します。ただし派遣会社には両義的です。派遣先の省人化が進めば労働需要そのものが減り、単純作業中心の案件は縮小しうるからです。

そのうえで、最優先は登録者の確保です。同レポートは、労働供給が年々細るため「今が一番人材を獲得しやすい」状態が続くと指摘しています。採用の先送りは、来年より今年のほうが安く済むという意味で、確実にコストが増える判断です。広告費に頼らない集客の考え方は「広告費を増やさず派遣の応募数を増やす方法」にまとめています。

今日からできる改善策

最初にやるべきは、自社を上の表のどこに位置づけるかの確認です。主力職種と商圏を推計に当てはめれば、自社に不足が来る時期はおおよそ見当がつきます。

次に、稼働人数と登録者数の推移を12か月分並べます。全国の登録者数は752万8,323人と前年度から減少しました(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」2026年)。母集団が細っている以上、自社の登録者が横ばいなら実質的には縮小しています。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 自社の主力職種を、職種別の不足率推計に当てはめたか

  • 主力商圏の都道府県が、供給不足の顕在化が早い側か遅い側か確認したか

  • 直近12か月の登録者数と稼働人数の推移を並べたか

  • 応募単価ではなく就業単価で、採用投資の効率を測っているか

  • 広告に依存しない登録経路(紹介、就業者からの再登録)の比率を出したか

  • 不足率の高い職種で、自社が扱える案件があるか営業と棚卸ししたか

  • 派遣先の省人化投資が進んだ場合に減る案件を、事前に洗い出したか

  • 外国人材・シニア・短時間就業者を受け入れられる案件を把握しているか

  • 採用予算を「今年より来年のほうが高くなる」前提で組んでいるか

  • コーディネーター1人あたりの担当稼働人数の上限を決めているか

まとめ

人材不足は2040年まで終わりませんが、効き方は一律ではありません。介護や物流の不足率が25%前後に達する一方、事務系は2030年まで供給過剰と推計されています。まず自社の主力職種と商圏を推計に当てはめ、不足が来る時期を特定してください。

そのうえで、今年やるべきは登録者の確保です。労働供給は年々細るため、採用を先送りするほど条件は悪化します。案件の獲得と人材の確保のどちらを先に動かすかは、自社がどの時間軸にいるかで変わります。

ハケンバンクについて

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参考文献

  • リクルートワークス研究所「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」(2023年3月28日公表)

  • 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日公表)

  • 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」(2026年4月9日公表)

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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