派遣スタッフが本音を話す面談の進め方とコツ

実務ノウハウ

2026/9/17

派遣スタッフが本音を話す面談の進め方とコツ

面談で「特に問題ありません」しか返ってこない。多くの会社で起きていることです。

この記事では、本音が出ない理由を調査データから整理します。そのうえで質問の順番と言い換え、情報の扱い方、担当者による差の測り方まで扱います。

目次

結論:本音が出ないのは、聞き手が「次の仕事を決める人」だから

先に結論を書きます。面談で本音が出にくい最大の理由は、聞き手が次の仕事を決める立場でもあるという関係の構造にあります。評価される可能性のある相手に、不満や迷いをそのまま話す人は多くありません。

日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査は、有効回答5,523人を集めています。「営業担当者とのコミュニケーション」に満足している人は47.2%、不満は21.2%でした。

半数近くは満足している一方、2割は明確に不満を抱えています。同じ会社の中でも、体験が大きく分かれているということです。この差は、聞き方の設計で縮められます。

机をはさんで向かい合う二人の間に仕切りが立ち、互いの顔が見えない面談のイラスト

相談されない理由は「悩みがない」ではない

まず、そもそもなぜ相談が起きないのかを見ておきます。同じ調査で、キャリアコンサルティングを受けたことがない人に理由を聞いた結果です。

受けたことがない理由

割合

キャリアコンサルティングが何かよく知らないから

32.7%

相談するほどの悩みがないから

19.1%

相談しても効果があると思えないから

17.7%

利用できる機会や窓口がわからないから

16.1%

派遣会社から案内がないから

12.2%

時間が取れないから

10.9%

自分には必要ないから

7.9%

相談するのが恥ずかしい・抵抗があるから

4.8%

相談内容が他人に知られそうで不安だから

2.7%

出典:日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」(N=4,545、複数回答)

注目したいのは、「相談するほどの悩みがないから」19.1%と「相談しても効果があると思えないから」17.7%です。合わせて36.8%。話す価値がないと判断されていることになります。

恥ずかしさや情報漏れへの不安は、それぞれ4.8%、2.7%にとどまりました。心理的な壁よりも、話しても何も変わらないという予測のほうが大きいのです。

もう一つ見逃せないのが、最多の「よく知らないから」32.7%です。「窓口がわからない」16.1%、「案内がない」12.2%と合わせると、情報が届いていないことによる不参加が相当の割合を占めます。これは聞き方以前の、案内の問題です。

見落とされている論点──評価すらされていない支援がある

もう一つ、面談の土台を揺るがす数字があります。派遣会社に対する満足度の設問で、「どちらでもない」と答えた人の割合です。

「派遣社員向けの相談窓口の対応」については55.7%、「自身のスキルアップやキャリア形成に対する支援」については58.8%が「どちらでもない」と回答しました。不満ではなく、評価そのものができない状態です。使ったことがなければ、良いとも悪いとも言えません。

一方で、「営業担当者とのコミュニケーション」の「どちらでもない」は31.6%と、これらより明らかに低くなっています。担当者との会話だけは、良くも悪くも評価の対象になっている。だからこそ、その場をどう使うかが効いてきます。

詰まっているのは「希望」の手前

制度の側に不足があるわけではありません。労働者派遣法では、派遣元にキャリアコンサルティングの相談窓口を設けることが求められています。

実施の状況も、厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)に出ています。キャリアコンサルティングを希望した465,798人に対し、実際に実施されたのは454,449人。実施率は97.6%です。

つまり、希望さえ出れば、ほぼ確実に実施されている。詰まっているのは実施の段階ではなく、その手前の「希望が出てこない」段階だということになります。面談で本音を引き出す技術が要るのは、まさにここです。

一言で終わる面談は、いくら分の時間なのか(試算)

面談そのものにも原価があります。簡単に試算してみます。

担当者1人が月に40人と面談し、1回30分かかるとします。合計20時間です。内勤者の時間あたり人件費を2,500円と置けば、月5万円、年間で60万円になります。

このうち半分が「特にありません」で終わっているなら、年間30万円分の時間が、情報を生まないまま過ぎていることになります。担当者が5人いれば150万円です。

数値はすべて仮定を置いた試算です。それでも、面談は「やっているかどうか」ではなく「何が取れたか」で見るべきコストだと分かります。回数そのものの考え方は「派遣スタッフの就業後フォローは何回行うべきか」で扱いました。

空っぽの吹き出しを持つ人と、中身の詰まった大きな吹き出しを持つ人を並べたイラスト

聞き方を変える──質問の順番と言い換え

では、どう聞くか。原則は三つあります。気持ちではなく事実から聞くこと。抽象語を使わないこと。答えの選択肢を先に示すことです。

よく使われる質問

返ってきやすい答え

言い換えの例

困っていることはありますか

特にありません

先月と比べて、増えた作業はありますか

職場の雰囲気はどうですか

悪くないです

休憩は何時に取っていますか。おひとりですか

更新はどうされますか

まだ考えていません

次の3か月で覚えたいことはありますか

不満はありませんか

大丈夫です

同じ仕事をあと1年続けるとしたら、何が変わっていてほしいですか

事実から入ると、答えが具体的になります。「増えた作業はありますか」に「棚卸しの入力が加わりました」と返ってくれば、そこから業務範囲の話にも、時給の話にもつなげられます。

気持ちを先に聞くと、相手は「言っていいことかどうか」を判断してから答えます。そのため、当たり障りのない返事になりやすいのです。記録に出てくる変化の読み方は「派遣スタッフのモチベーション低下を見抜く方法」でも整理しています。

手元の品を左右どちらの箱に入れるか考えながら仕分けている担当者のイラスト

どこまで派遣先に伝えるかを、先に宣言する

面談の冒頭で情報の扱いを宣言してください。「いまから伺うことのうち、派遣先にお伝えするのは業務内容の変化だけです」。どこまでが自分の中に留まるのかが分かって、はじめて話せることがあります。

宣言するには、社内で線引きを決めておく必要があります。目安は次のとおりです。

聞いた内容

派遣先への共有

理由

増えた作業・減った作業

伝える

契約内容との差を正すために必要

設備や安全に関する不安

伝える

就業環境の改善は派遣先の責任範囲

体調や通院の事情

本人の同意を得てから

機微な個人情報にあたる

他社への登録や転職の意向

伝えない

本人の不利益に直結する

特定の社員への不満

個人を特定せず事象として

関係悪化を避けつつ改善につなげる

この線引きが担当者ごとに違うと、スタッフは安全な範囲を毎回探ることになります。全社で同じ文言に統一するところまでが設計です。初回面談の項目設計は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」も参考になります。

キャリアの案内を、面談の定型項目にする

相談されない理由の最多が「よく知らないから」32.7%だったことを思い出してください。これは説明すれば解ける問題です。

面談の最後に30秒で構いません。「こういう相談ができる窓口があります」「費用はかかりません」「内容は派遣先には伝わりません」。この三点を毎回同じ言葉で伝えるだけで、「知らない」「窓口がわからない」「案内がない」の3項目に届きます。合計すると61.0%です(複数回答)。

希望さえ出れば実施率は97.6%なのですから、案内を定型化することが、そのまま実施数の増加につながります。更新率との関係は「契約更新率が高い派遣会社が実践していること」で扱いました。

担当者による差は、記録で測れる

満足47.2%・不満21.2%という分布は、会社全体の平均にすぎません。実際には担当者ごとに偏っているはずです。

測り方は単純で、担当者別に二つの数字を並べるだけです。面談記録の平均文字数と、担当スタッフの更新率。記録が短い担当者は、聞けていないか、書いていないかのどちらかです。

どちらであっても問題なので、まず本人と記録を一緒に読みます。「特にありません」が並んでいるなら質問の型を、具体的な発言があるのに短いなら記録様式を変えます。

記録様式には「増えた作業」「減った作業」の欄を設けておくと、書く側も聞く側も迷いません。就業直後の対応は「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」もあわせてご覧ください。

想定ケース|同じ研修を受けた二人の担当者

以下は、ここまでの内容から組み立てた想定ケースです。実在の人物ではありません。

W氏は言い換えの一覧をそのまま面談で使い、冒頭の守秘宣言も毎回読み上げました。3か月後、面談記録の平均文字数は約2.4倍になります。業務範囲のずれが4件見つかり、うち2件で時給改定につながりました。

X氏は同じ研修を受けましたが、「不自然だから」と冒頭の宣言を省きました。質問の言い換えは使っています。記録は長くなったものの、出てくるのは作業内容の話だけでした。更新を迷っていた2名は、何も言わないまま契約満了で離れています。

差を生んだのは質問の技術ではなく、何が外に出ないかを先に伝えたかどうかでした。宣言は形式的に見えますが、話す範囲を決めるのは聞き手ではなく話し手のほうです。

今日からできる改善策

まず、直近の面談記録を10件開いて、記録された発言の長さを見てください。回答が一言で終わっている面談が多いなら、質問の型が原因である可能性が高いといえます。

次に、自社でよく使われている質問を5つ書き出し、それぞれに事実ベースの言い換えを用意します。そのうえで、冒頭に伝える守秘の範囲を全社で統一してください。

担当者ごとに扱いが違えば、スタッフは安全な範囲を毎回探ることになります。担当者による体験の差は、こうした細部から生まれます。

最後に、キャリアコンサルティングの案内を面談の定型項目に加えます。ここまでをひとまとまりの型にして、全員が同じ手順で面談できる状態を作ってください。

今日から実践するためのチェックリスト

直近の面談記録10件を開き、回答が一言で終わっている件数を数えた

自社でよく使われている質問を5つ書き出した

それぞれについて、事実から入る言い換えを1つずつ用意した

面談の冒頭で伝える守秘の範囲を、文言として決めた

派遣先へ共有する情報の種類を、あらかじめ一覧にした

その一覧を全担当者で共有し、同じ文言に統一した

キャリアコンサルティングの案内を、面談の定型項目に加えた

案内で伝える三点(窓口・費用・派遣先に伝わらないこと)を文言化した

担当者別に、面談記録の平均文字数と更新率を並べて比較した

記録様式に「増えた作業」「減った作業」の欄を追加した

面談にかかっている時間を人件費に換算し、年額を把握した

まとめ

面談で本音が出ないのは、相手が心を開かないからでも、担当者の腕が悪いからでもありません。聞き手が次の仕事を決める立場にあること、そして「話しても変わらない」と思われていることが理由です。

相談されない理由の上位に「悩みがない」「効果があると思えない」が並び、心理的な抵抗はわずか数%でした。一方で最多は「よく知らないから」32.7%。案内の不足も大きな要因です。

打ち手は聞き方の設計です。気持ちではなく事実から聞き、抽象語を避け、情報の扱いを先に伝える。そして案内を定型化する。まずは自社の定番質問を5つ書き出し、言い換えを用意するところから始めてみてください。

確認クイズ(FAQ)

Q1. キャリアコンサルティングを受けたことがない理由として、心理的な抵抗はどの程度を占めていますか?

A. 「恥ずかしい・抵抗がある」4.8%、「他人に知られそうで不安」2.7%にとどまる
B. 半数以上が心理的な抵抗を理由に挙げている
C. 心理的な抵抗が最大の理由になっている

正解:A
解説:「相談されない理由」の章のとおり、上位は「よく知らない」32.7%、「悩みがない」19.1%、「効果があると思えない」17.7%でした(日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査」N=4,545)。

Q2. キャリアコンサルティングの実施状況について、公的統計は何を示していますか?

A. 希望者465,798人に対し454,449人に実施され、実施率は97.6%
B. 希望しても半数程度しか実施されていない
C. ほとんどの派遣会社が実施していない

正解:A
解説:「詰まっているのは『希望』の手前」の章のとおり、実施の段階ではなく希望が出てこない段階に課題があります(厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和6年度)。

Q3. 面談で聞いた内容のうち、派遣先への共有を控えるべきものはどれですか?

A. 増えた作業・減った作業
B. 設備や安全に関する不安
C. 他社への登録や転職の意向

正解:C
解説:「どこまで派遣先に伝えるかを、先に宣言する」の章のとおりです。本人の不利益に直結する情報は共有しません。業務内容の変化や安全に関する不安は、改善のために伝える範囲です。

ハケンバンクについて

面談で「次の仕事」の話ができるかどうかは、手元にある案件の幅で決まります。提示できる選択肢が少なければ、質問を工夫しても会話は現状確認で止まります。

ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

[PR]ハケンバンクは、人材派遣会社の成長を実現する求人プラットフォームです。求人開拓を効率化し、さらなる売り上げアップをサポートしています。人材派遣事業でお困りの際はぜひお気軽にご相談ください。

サービス資料ダウンロード

vertical_align_bottom