人口減少が派遣会社に与える影響とは?逆風か追い風かを解説

市場動向

2026/8/5

人口減少が派遣会社に与える影響とは?逆風か追い風かを解説

「人が減れば人手不足になり、派遣の需要は増える」。この見立ては半分しか正しくありません。市場の売上は伸びていますが、同じ期間に派遣会社が抱える登録者は減り始めました。この記事では、従業員5名から300名規模の派遣会社の経営者・事業責任者に向けて、公的統計から読める人口減少の実際の効き方を整理します。

目次

結論:人口減少は追い風でも逆風でもなく、派遣会社を「選別する力」として働く

人口減少は、市場のパイを広げながら、それを取りに行く原資である「人」を同時に減らします。追い風か逆風かを決めるのは市場ではなく、自社の供給力です。

令和6年度の労働者派遣事業の年間売上高は9兆9,005億円で、前年度比9.4%増となりました。派遣先件数も約86万件(同7.9%増)へと伸びています(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」2026年)。市場は明らかに拡大しています。

一方、同じ集計の登録者数は752万8,323人で、前年度の771万857人から減少しました。1事業所あたりでは242.4人から226.7人へと約16人減っています。需要は増え、供給は減る。この非対称性が人口減少の本質です。

令和6年度の派遣市場は売上高9兆9,005億円が9.4%増、派遣先件数も7.9%増。一方で登録者数は752万8,323人へ2.4%減、1事業所あたりは226.7人へ15.7人減。

業界は、案件は取れても人を出せない会社と、人がいるから案件を選べる会社に分かれます。市場全体の推移は「【2026年最新】人材派遣市場の規模と今後10年の成長予測を徹底分析」の記事も併せて確認してください。

なぜ「人手不足=派遣の追い風」が成立しないのか

人手不足が案件増に直結しないのは、人口減少が労働供給と国内需要を同時に縮小させるからです。

求人倍率は、人口減少が続いても上がっていない

令和8年6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍でした(厚生労働省「一般職業紹介状況」2026年6月分)。人口が減り続けているにもかかわらず、有効求人倍率は1.2倍前後で横ばいです。

人が減れば、働き手が減ると同時に消費する人も減るためです。小売や飲食では、人手が足りない一方で店舗数や営業時間を縮小する動きも起きています。求人が増える経路と、事業縮小で求人が消える経路が同時に走っているのです。この点は「「人材不足」は派遣会社にとって本当に追い風なのか」でも扱っています。

生産年齢人口の減少は、すでに外国人材が埋めている

2026年2月時点の15〜64歳人口は7,342万7千人で、前年同月比の減少は21万人を下回りました。ところが日本人人口は88万8千人減、外国人人口は389万6千人と12.14%増です(総務省統計局「人口推計」2026年)。

生産年齢人口の減少が緩やかに見えるのは、外国人材の流入が下支えしているからです。外国人労働者数も257万1,037人と過去最多です(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」2026年)。

2026年2月の15〜64歳人口は7,342万7千人で、前年同月比の減少は21万人を下回る。日本人人口は88万8千人減、外国人人口は389万6千人で12.14%増。

つまり、外国人材を扱えない派遣会社は労働供給の増加分にアクセスできません。日本人登録者だけを母集団とする会社にとって、市場は統計以上の速さで縮んでいます。

人口減少が損益に効いてくる3つの経路

人口減少は「売上が減る」形では現れず、売上を伸ばしながら粗利を削る形で効いてきます。経路は3つです。

経路

何が起きるか

損益への影響

最初に現れる兆候

①供給の枯渇

登録者が減り、提案できる人材がいない

受注しても稼働に変わらない

案件数は増えているのに稼働人数が横ばい

②獲得コストの上昇

応募単価・登録単価が上がる

採用費が粗利を圧迫する

就業1人あたり採用コストの上昇

③賃金コストの上昇

最低賃金が料金改定より速く上がる

粗利率が低下する

低単価職種の粗利率だけが落ちる

単価は上がっているが、賃金の上昇に追いついていない

令和6年度の派遣料金(8時間換算)は平均26,257円で前年度比3.6%増、賃金は16,735円で同3.4%増でした(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」)。一方、令和7年度の地域別最低賃金は全国加重平均1,121円で、前年度から6.3%の引き上げです(厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」2025年)。

料金の上昇率3.6%に対し、最低賃金の上昇率は6.3%です。料金改定は契約更新時に限られる一方、最低賃金は毎年10月に強制発効します。売上が伸びても利益が残らない会社は、この時間差で低単価案件を抱え続けています。人材獲得競争は、最低賃金帯の職種から粗利を削ります。

見落とされている論点:人口減少はすでに「地域の分配問題」になっている

人口減少の影響は全国平均には表れていません。しかし地域ブロック別に見ると、差はすでに開いています。

地域ブロック

令和6年度 売上高(億円)

前年度比

全国シェア

南関東

44,427

+12.6%

44.9%

東海

15,017

+10.1%

15.2%

近畿

15,092

+6.7%

15.2%

九州

6,252

+4.8%

6.3%

中国

3,123

+2.1%

3.2%

四国

876

▲0.4%

0.9%

北海道

1,760

▲2.5%

1.8%

(出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」2026年をもとに作成)

全国が9.4%伸びる中、北海道と四国はすでに前年度を下回りました。南関東だけで全国売上の44.9%を占めます。人口減少は全国一律に効くのではなく、人が集まる地域に稼働がさらに集中する形で表れるのです。

就業者数は2022年の6,724万人から、ゼロ成長・労働参加現状のシナリオでは2040年に5,768万人まで減ると推計されています(労働政策研究・研修機構「2023年度版 労働力需給の推計」2024年)。地方を地盤とする会社ほど、商圏を広げるのか職種を絞るのかの判断が早く必要になります。

追い風にできる会社と、逆風で終わる会社の違い

分かれ目は、営業力ではなく「供給の設計」にあります。

令和6年度の派遣契約は、2か月超3か月以下が28.4%、1か月超2か月以下が20.9%を占めます。契約が短期化しても1件あたりの営業・コーディネート工数は変わらず、稼働月数だけが短くなります。案件を増やしても粗利が積み上がらない原因です。

例えば、次の2社を想定してみましょう。架空のケースですが、公開データから説明できる差です。

比較項目

逆風で終わる会社

追い風にできる会社

登録者の扱い

案件が出てから募集する

就業終了時点で次の提案を用意している

見ている指標

案件数・応募数

稼働人数・就業1人あたり粗利

案件の選び方

依頼された順に受ける

稼働継続月数の長い案件を優先する

単価交渉

最低賃金改定後に事後交渉

改定を織り込んで契約更新前に交渉

供給の母集団

日本人・特定職種のみ

外国人材・シニアを含めて設計

情報の持ち方

担当者の記憶と個人メモ

稼働履歴とスキル情報を全社で共有

特に効くのは2行目です。案件数を追う会社は、人が採れない局面で失注を抱えます。人口減少下では、新規採用よりも既存稼働者の単価と稼働率を上げるほうが投資対効果は高いからです。中小規模だからこそ取れる戦い方は、「中小派遣会社が大手に勝つための戦略」でも整理しています。

今日からできる改善策

着手すべきは新しい施策ではなく「見る数字の入れ替え」です。案件数と応募数を主指標にする限り、判断を誤ります。

最初に確認するのは直近12か月の稼働人数です。売上が伸びても稼働人数が横ばいなら、単価上昇に支えられているだけで供給力は改善していません。次に、就業1人あたりの採用コストと案件別の平均稼働継続月数を出せば、どの案件が粗利を生んでいるかが判別できます。

今日から実践するためのチェックリスト

  • [ ] 直近12か月の稼働人数の推移を月次で出したか

  • [ ] 売上増が「稼働人数の増加」と「単価上昇」のどちらによるものか分解したか

  • [ ] 就業1人あたりの採用コスト(応募単価ではなく就業単価)を算出したか

  • [ ] 案件別の平均稼働継続月数を出し、短期案件の粗利貢献を確認したか

  • [ ] 最低賃金改定を織り込んだ料金改定の交渉時期を、契約更新前に設定したか

  • [ ] 最低賃金帯の職種だけ粗利率を分けて計測しているか

  • [ ] 就業終了予定者に、終了1か月前に次案件を提案する運用があるか

  • [ ] 外国人材・シニア・短時間就業者を受け入れられる案件を営業が把握しているか

  • [ ] 稼働履歴とスキル情報が、担当者以外でも参照できる状態になっているか

  • [ ] 商圏内の人口動態を確認し、3年後の供給前提で拠点方針を検討したか

まとめ

人口減少は派遣市場を縮小させるのではなく、市場の中の格差を広げます。売上高が9兆9,005億円まで伸びる一方、登録者数は減少に転じました。需要と供給に非対称に効くため、供給力を持つ会社には追い風、持たない会社には逆風となります。

まず取るべき行動は、稼働人数と就業1人あたり粗利を主指標に据え直すことです。そのうえで、最低賃金改定を織り込んだ料金交渉の前倒しに着手してください。人口減少は10年かけて進みますが、粗利の悪化は1回の改定で始まります。

ハケンバンクについて

供給力を高めても、案件を選べるだけの求人接点がなければ粗利は伸びません。求人開拓を自社だけで進めることが難しい場合は、外部の仕組みを活用する選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」(2026年)

  • 厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」(2026年1月30日公表)

  • 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧(令和7年度)」(2025年)

  • 総務省統計局「人口推計(2026年2月確定値、2026年7月概算値)」(2026年7月21日公表)

  • 労働政策研究・研修機構(JILPT)「2023年度版 労働力需給の推計―労働力需給モデルによるシミュレーション―」(2024年)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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