派遣会社の本当の価値とは?人を紹介するだけではない理由

業界コラム

2026/9/9

派遣会社の本当の価値とは?人を紹介するだけではない理由

派遣会社は、何を売っている会社なのでしょうか。派遣先からは「人を出してくれる会社」と見られ、求職者からは「仕事を紹介してくれる会社」と見られています。自社の提案書も、その前提で書かれていることが多いはずです。しかし公的統計を開いてみると、派遣会社が実際に担っている仕事は、紹介という言葉ではとても収まりません。この記事では、派遣会社の価値がどこにあるのかを、実績として残っている数字から考えます。

中央の働き手を、雇用・教育・労務・安定という4つの役割が取り囲む構図の図。派遣会社が人の紹介以外に担っている機能の広がりを表している。

目次

結論:売っているのは「人」ではなく「雇用を引き受けること」

結論から書きます。派遣会社が売っているのは人ではありません。雇用主としての責任を引き受けることと、需要の波を自社側で吸収すること。この二つです。派遣先が支払う料金は、労働力の対価であると同時に、自社で雇わずに済むことの対価でもあります。

厚生労働省の令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)によれば、派遣労働者数は約220万人、業界全体の年間売上高は9兆9,005億円でした。この9兆円は、人を右から左へ動かした手数料の集計ではありません。220万人分の雇用主責任を引き受けた対価が、そこに含まれています。

派遣先が本当に買っているもの──「雇わずに働いてもらえる状態」

派遣先が受け取っているのは、労働力そのものよりも「雇わずに働いてもらえる状態」だと言えます。社会保険の手続き、給与計算、労働時間の管理、安全衛生、教育訓練。これらはすべて派遣元の責任として処理されます。派遣先は指揮命令だけを行い、雇用に伴う手続きと責任からは切り離される。ここが請負や業務委託とも、直接雇用とも違う点です。

そして近年、派遣会社が負う雇用責任は重くなっています。同じ集計によると、無期雇用の派遣労働者は908,956人で前年度から7.9%増えました。有期雇用は1,290,683人で1.3%増ですから、伸び方がまったく違います。稼働している派遣労働者に占める無期雇用の比率は、39.8%から41.3%へ上がった計算です。無期雇用とは、派遣先が決まっていない期間も派遣会社が賃金を払い続けるということ。需要の波を吸収する主体が、派遣会社側へさらに移りつつあると読むこともできます。

数字で見る「紹介だけではない」機能

では、紹介以外に何をどれだけやっているのか。同じ集計には、その実績が記録されています。

機能

令和6年度の実績

キャリアアップに資する教育訓練

延べ142,776コース/1年目の受講者2,412,459人

教育訓練の条件

賃金支給は有給が99.7%、費用は無償が99.2%

キャリアコンサルティング

希望465,798人に対し454,449人に実施(97.6%)

雇用安定措置の対象者

1,130,707人

新たな派遣先の提供(第2号措置)

585,483人(対象の51.8%)

派遣先への直接雇用の依頼(第1号措置)

67,887人(うち27,803人が派遣先で雇用)

出典:厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」(令和6年度)

注目したいのは、教育訓練の条件です。賃金支給が「有給」のものが99.7%、費用負担が「無償」のものが99.2%でした。つまり訓練のほぼすべてが、派遣会社の費用負担で、賃金を払いながら行われています。キャリアコンサルティングも、希望者の97.6%に実施されていました。これらは料金表に項目として立つことはありませんが、確実に原価として発生しています。

派遣先が負うのは指揮命令の1項目であるのに対し、派遣元は雇用契約・社会保険・教育訓練・雇用安定の4項目を負うという非対称を並べて示した図。

見落とされている論点──自社の稼働を減らす仕事が、義務になっている

前の表のいちばん下の行に、派遣という事業の性格がよく表れています。

労働者派遣法第30条の雇用安定措置では、一定の要件を満たす派遣労働者について、派遣元が講じるべき措置が定められています。その第1号が「派遣先への直接雇用の依頼」です。令和6年度はこれが67,887人に対して行われ、そのうち27,803人が実際に派遣先の社員になりました。割合にして41.0%です。

考えてみれば、これは自社の稼働を減らす行為です。人材紹介であれば手数料が発生する取引ですが、雇用安定措置として行う直接雇用の依頼は、それとは性格が異なります。多くの場合、派遣会社にとっては稼働と売上を手放す結果になります。年間2万7,803人が、そうやって派遣先へ移っている。ここに、「人を紹介するだけの事業」という理解が成り立たない理由があります。

スタッフから見た価値──選ぶ理由と、続ける理由は違う

価値は派遣先だけに向いているわけではありません。日本人材派遣協会の2025年度 派遣社員WEBアンケート調査(有効回答5,523人)で、現在の派遣会社から就業している理由を見ると、上位は紹介される仕事の条件と内容です。しかし3番目には「同じ派遣会社から就業継続したほうがメリットがあるから」が23.6%で入っています。有給休暇や社会保険の継続といった、雇用が続くことそのものの価値です。

4番目は「営業担当者とコミュニケーションが取りやすいから」で16.7%でした。選ばれる理由は案件、選ばれ続ける理由は雇用の継続とフォローという構造が見えます。一方で「特に理由はない」も15.4%あります。ここは、提供している価値が伝わっていない層と読むこともできるでしょう。初回面談での確認事項は「派遣スタッフとの初回面談で必ず確認すべき10項目」、就業直後のフォローは「就業初日に派遣スタッフが辞めないためのフォロー術」で整理しています。

今日からできる改善策

価値を高める前に、まず言語化することをおすすめします。多くの派遣会社は、教育訓練もキャリアコンサルティングも雇用安定措置も実施していますが、提案書や求人票にはほとんど書いていません。法律上の義務だから当然のこと、という受け止め方をしているためです。

教育訓練やフォローの実施件数を数え、金額に換算し、提案書と求人票へ反映していく4ステップの手順図。

しかし派遣先から見れば、それは自社が負わずに済んでいる業務そのものです。年間の実施件数と時間、そこにかかった費用を数字で出し、提案書に一枚加えるだけで、料金の説明の仕方は変わります。帝国データバンクの人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)では、「人材派遣・紹介」業種で非正社員が不足すると回答した企業が60.0%と全業種で最も高くなっています。人を集める難易度が上がるほど、価格ではなく機能で選ばれる必要性は高まります。

今日から実践するためのチェックリスト

  • 直近1年に実施した教育訓練の延べ時間と受講人数を集計した

  • 教育訓練にかかった費用(講師費・システム費・賃金分)を金額で算出した

  • キャリアコンサルティングの実施件数と実施率を出した

  • 雇用安定措置の対象者数と、措置ごとの内訳を整理した

  • 派遣先への直接雇用の依頼を行った人数と、成立した人数を数えた

  • これらの数字を1枚にまとめ、提案書の添付資料として用意した

  • 求人票と登録案内に、教育訓練とフォロー体制の具体的な内容を記載した

  • 「特に理由はない」で就業している登録者に、自社の支援内容を伝える機会を設けた

まとめ

派遣会社は、人を紹介する会社ではありません。雇用主としての責任を引き受け、需要の波を吸収し、教育とキャリア支援を担い、ときには自社の稼働を手放してでも本人の就業を安定させる。統計に残っていたのは、そういう仕事の記録でした。

まずは自社が昨年一年で実施した教育訓練、キャリアコンサルティング、雇用安定措置の件数を数えてみてください。その数字は、料金の根拠であり、スタッフに選ばれ続ける理由でもあります。義務として処理してきたものを価値として説明できるかどうかが、これからの差になっていくはずです。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 派遣会社が実施する教育訓練について、令和6年度の集計はどのような条件を示していますか?
A. 賃金支給が有給のものが99.7%、費用は無償のものが99.2%
B. 費用の半分程度を派遣労働者が負担している
C. 大半が無給かつ自己負担で実施されている

正解:A
解説:「数字で見る『紹介だけではない』機能」の章のとおり、教育訓練のほぼすべてが有給かつ無償で提供されています(厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」令和6年度)。

Q2. 雇用安定措置の第1号措置(派遣先への直接雇用の依頼)は、令和6年度にどのような結果になりましたか?
A. 依頼はほとんど行われていない
B. 67,887人に対して行われ、うち27,803人が派遣先で雇用された
C. 依頼した全員が派遣先の社員になった

正解:B
解説:「見落とされている論点」の章で述べたとおり、依頼に対する成立割合は41.0%です。派遣会社にとっては稼働を手放す結果になります(厚生労働省、令和6年度)。

Q3. 「特に理由はない」で自社から就業している登録者が一定数いると分かった場合、まず取るべき対応はどれですか?
A. 単価の高い案件だけを優先的に紹介する
B. 提供している教育訓練やフォロー体制の内容を、本人に具体的に伝える機会をつくる
C. 登録者数をさらに増やすため広告費を追加する

正解:B
解説:「スタッフから見た価値」の章のとおり、この層は価値が伝わっていない可能性があります。日本人材派遣協会の調査では「特に理由はない」が15.4%でした(2025年度、有効回答5,523人)。

ハケンバンクについて

自社が担っている機能を言語化できても、それを伝える相手と出会えなければ提案は始まりません。新しい求人企業との接点を自社の営業だけで増やすには時間がかかるため、外部の仕組みを併用する選択肢もあります。ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

  • 厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

  • 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

  • 一般社団法人日本人材派遣協会「2025年度 派遣社員WEBアンケート調査結果」(2025年12月公表)

  • 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」(2026年5月19日公表)

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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