派遣会社が新規開拓で狙うべき業界ランキング【優先順位】

求人開拓・営業

2026/7/16

派遣会社が新規開拓で狙うべき業界ランキング【優先順位】

新規開拓をどの業界から始めるか。人手不足が深刻な業界を選べばよい、と考えたくなります。

この記事では、その判断がなぜ外れるのかを公的統計で確認します。そのうえで、採れるか・残るか・稼げるかの三つの軸で順位を組み立て、自社の登録者構成で順位がどう動くかまで扱います。

目次

結論:狙う順番は「採れるか×残るか×稼げるか」で決まる

結論からいえば、最初に狙うべき順番は、製造、物流・倉庫、宿泊・観光、介護・福祉、建設周辺職種です。ただし、これは固定の順位ではありません。

需要が強い業界ほど採用難も大きく、自社の供給力とセットで判断する必要があります。人手不足の深刻さだけで営業先を選ぶと、受注してから人が集まらないという事態になります。

見るべきは三つです。その職種の人を採れるか、稼働が続くか、1人あたりいくら残るか。どれか一つが欠けると、営業が成功しても事業にはなりません。

派遣会社が最初に狙うべき業界ランキング

このランキングは、市場規模ではなく、中小派遣会社が初期の稼働をつくりやすい順番です。評価軸は、求人の反復性、人材要件の標準化、採用可能性、契約継続性、競争環境の5点です。

順位

業界

狙う理由

主な注意点

1位

製造

複数名募集や交替勤務が多く、業務を標準化しやすい

工場ごとの定着率と通勤条件

2位

物流・倉庫

物量変動があり、増員需要が発生しやすい

短期案件だけでは粗利が安定しにくい

3位

宿泊・観光

繁閑差が大きく、現場単位の不足が顕在化しやすい

土日勤務、語学、接客適性

4位

介護・福祉

構造的な人材不足が続き、継続需要がある

資格、経験、夜勤対応、定着支援

5位

建設周辺職種

施工管理補助、CAD、事務など専門人材の需要がある

建設作業そのものへの派遣は不可

高い位置の実に手が届かず、低い位置の実に気づいていない担当者のイラスト

人手不足が深刻な業界ほど、採用も難しい

ここが最初の落とし穴です。人手不足が深刻ということは、その職種の求職者が少ないということでもあります。

厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分、常用・パート含む、全国計)から、関連する職業を抜き出します。

職業

有効求人倍率

自社で採用できるか

建設躯体工事従事者

7.94倍

極めて難しい

介護サービス職業従事者

3.82倍

難しい

自動車運転従事者

2.53倍

難しい

生産工程従事者

1.59倍

やや難しい

職業計

1.05倍

-

運搬・清掃・包装等従事者

0.65倍

比較的やさしい

一般事務従事者

0.29倍

やさしい

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)参考統計表」常用(パート含む)、全国計

介護の3.82倍は、求人4件に対して求職者が1人しかいない状態です。案件は取れても、人が出せません。営業の難易度ではなく、採用の難易度が制約になります。

一方、倉庫内作業を含む運搬・清掃・包装等は0.65倍。求職者のほうが多く、応募は集まりやすい職種です。需要の強さと採用のしやすさは、しばしば逆を向きます。

粗利で並べると、順位はさらに動く

三つ目の軸が粗利です。同じ1人を稼働させても、職種によって残る金額はまったく違います。

職種

派遣料金(8時間)

賃金(8時間)

差額

情報処理・通信技術者

34,382円

21,032円

13,350円

建築・土木・測量技術者

34,168円

21,429円

12,739円

製造技術者

28,518円

17,724円

10,794円

一般事務従事者

18,112円

12,231円

5,881円

製品製造・加工処理従事者

16,883円

11,406円

5,477円

介護サービス職業従事者

16,282円

11,093円

5,189円

出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」

介護は求人倍率3.82倍で採用が難しいうえ、差額は5,189円と最も低い部類です。採りにくくて、稼ぎにくいという組み合わせになります。

対して建築・土木・測量技術者は12,739円。建設周辺職種を5位に置きながら「捨てない」理由はここにあります。職種と単価の関係は「派遣会社の未来は専門性で決まる理由」でも扱いました。

三枚の半透明な板が重なり、三つとも重なる狭い部分を指し示す担当者のイラスト

三つの軸を一枚に重ねる

需要・採用可能性・粗利を並べると、順位の根拠がはっきりします。

業界・職種

需要

採用可能性

1日あたり差額

総合

製造(生産工程)

あり

やや難しい(1.59倍)

5,477〜10,794円

最も型をつくりやすい

物流・倉庫

強い

やさしい(0.65倍)

5,000円前後

人は採れるが単価が低い

介護・福祉

非常に強い

難しい(3.82倍)

5,189円

採りにくく稼ぎにくい

建設周辺(技術者)

強い

難しい(7.94倍は作業職)

12,739円

人がいれば最も稼げる

事務

弱い

やさしい(0.29倍)

5,881円

採れるが案件が少ない

出典:上記2資料をもとに編集部で整理。差額は職種別の全国平均値

一つの軸だけを見ると判断を誤ります。需要だけなら介護、採用だけなら事務、粗利だけなら技術者。三つが最も両立するのが製造です。

1位は製造。案件と人材の型をつくりやすい

製造業は、最初の業界として再現性があります。業務と必要スキルを整理しやすく、同一拠点で複数名の稼働をつくれるためです。

派遣労働者が就業している事業所の割合も、製造業が23.6%と全産業で最も高くなっています(厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査」事業所調査)。使っている工場の数そのものが多い、ということです。

ただし、「未経験者を出せます」だけでは大手との価格競争になります。求人企業が見ているのは、欠勤時の代替対応、入社前説明、初日の同行、離職兆候の把握です。

中小派遣会社は、供給人数よりも現場ごとの定着設計で差別化すべきです。製造業への提案の組み立て方は「製造業の派遣案件を新規獲得する営業のコツと攻め方」も参考になります。

2位は物流・倉庫。需要は強いが短期依存を避ける

物流は、EC、食品、日用品など荷動きが継続し、繁忙期の増員も発生します。応募も集まりやすく、立ち上げは最も容易です。

一方で、スポット案件ばかり取ると、求人広告費と登録対応の負担が増えます。差額も5,000円前後と高くありません。

最初から「繁忙期だけ」ではなく、長期枠、リーダー枠、夜勤枠まで確認してください。案件数ではなく、3か月後も残る稼働人数で営業先を評価することが重要です。自動化が進む中で何が残るかは「倉庫自動化で物流派遣の仕事はなくなるのか、今後の需要」で整理しました。

3位以下は、自社の人材プールで順位が変わる

宿泊・観光は地域や季節が合えば狙いやすい業界です。繁閑の差が大きいため、短期の増員需要が読みやすいという利点があります。一方で土日勤務や接客適性が条件に入りやすく、登録者の属性次第で成否が分かれます。

介護・福祉は継続性が高い一方、資格確認と就業後フォローが重要になります。有資格者の登録が何人いるかで、提案できる案件の範囲がほぼ決まります。

つまり、万人に共通する正解はありません。登録者の居住地、経験職種、希望時間帯を集計し、供給可能な人材が多い業界から営業するほうが、受注後の失注を防げます。

どの職種が伸びるかという視点は「労働人口の減少で需要が伸びる派遣職種・業界の見極め方」でも扱っています。

建設は「周辺職種」に限られる

建設分野は人手不足が最も強い領域です。建設躯体工事従事者の有効求人倍率は7.94倍で、全職業のなかで突出しています。

ただし労働者派遣法により、建設業務への労働者派遣は禁止されています。足場の組立て、資材の運搬、掘削といった現場作業は対象外です。

狙えるのは施工管理補助、CAD、現場事務など、建設業務に該当しない職種です。建築・土木・測量技術者の差額が12,739円と高いのは、この範囲の話になります。

提案前に、依頼された業務が建設業務に当たらないかを必ず確認してください。建設分野への営業は「建設会社から派遣求人を獲得する営業方法」で詳しく扱いました。

危険なのは「案件を取ってから人を集める」営業

人材がいない状態でも求人獲得は必要です。ただし、受注可能性と供給可能性を混同してはいけません。

求人企業は、知名度よりも「いつまでに、何人を、どの条件で提案できるか」を見ています。曖昧な回答を続けると、次回の相談先から外れます。

製造案件を広く受注する会社と、通勤30分圏内・夜勤可能な登録者を把握して提案する会社を比べてください。後者は案件数が少なくても、充足率を高めやすくなります。

成功する会社は営業とコーディネーターが同じ人材データを見ています。うまくいかない会社は、営業が案件を集めた後にはじめて採用難へ気づきます。

充足できなかった依頼は、単に売上にならないだけではありません。次の相談が来なくなるという形で、将来の売上も減らします。受注件数ではなく充足件数で営業を評価すると、この取り違えは起きにくくなります。

営業用の看板を使う前に、手元の登録者を一人ずつ数えている担当者のイラスト

想定ケース|同じ時期に新規開拓を始めた二社

以下は想定ケースです。実在の企業ではありません。

F社は「人手不足が最も深刻だから」という理由で介護分野から開拓を始めました。3か月で8件の依頼を獲得しましたが、充足できたのは2件。有資格者の登録が集まらず、5件は辞退、1件は他社に流れています。

G社は先に登録者を集計しました。通勤30分圏内に交替勤務可能な登録者が24人いると分かり、その条件に合う製造現場から当たります。依頼は5件と少なかったものの、4件を充足し、うち3件が3か月後も稼働していました。

差を生んだのは営業力ではなく、供給できる人材を先に数えたかどうかでした。新規と既存の配分の考え方は「派遣営業は新規開拓と既存深耕どちらを優先すべきか」も参考になります。

今日からできる改善策

まず、登録者を職種・居住地・勤務可能時間・資格で分類してください。どの業界に何人出せるかが、そのまま狙うべき順番になります。

次に、候補の業界ごとに想定単価と募集賃金を置き、1日あたりの差額を試算します。全業務平均の9,522円を基準線にすると、高いか低いかが判断できます。

そのうえで、有効求人倍率を確認します。倍率が高い職種は、営業が成功しても採用で詰まる可能性が高い領域です。

最後に、1業界・1エリア・1職種へ営業資源を集中してください。広く当たるより、型を1つつくるほうが早く稼働につながります。

型とは、提案書と募集原稿と面談項目が一式そろっている状態を指します。1件目で作り、2件目から使い回す。これができると、同じ業界の2社目以降は立ち上げが一気に速くなります。

逆に毎回ゼロから組み立てていると、件数が増えても一向に楽になりません。最初の1業界で型をつくれたかどうかが、翌年の伸び方を決めます。

今日から実践するためのチェックリスト

登録者を職種、居住地、勤務時間、資格で分類した

業界別に、供給できる登録者の人数を数えた

業界別に想定派遣単価、募集賃金、採用費、粗利を試算した

1日あたりの差額を全業務平均9,522円と比較した

狙う職種の有効求人倍率を確認した

倍率が高く差額が低い職種を、優先度から外した

必要人数、開始日、継続期間、競合社数を確認した

建設分野では、依頼業務が建設業務に当たらないか確認した

まず1業界・1エリア・1職種に営業資源を集中した

3か月後に残っている稼働人数で、営業先を評価する基準を決めた

まとめ

最初に狙う業界は、需要の大きさではなく、自社が安定して人材を供給し、継続稼働をつくれるかで決めるべきです。

基本順位は製造、物流・倉庫、宿泊・観光、介護・福祉、建設周辺職種ですが、自社の登録者構成によって入れ替わります。

人手不足が深刻な業界は、同時に採用が難しい業界でもあります。介護は求人倍率3.82倍で差額5,189円。採りにくく、稼ぎにくい。需要という一つの軸だけで選ぶと、ここに行き着きます。

最初の行動は、営業リストを増やすことではありません。既存登録者を分析し、「誰を、どの業界へ、何日以内に提案できるか」を言語化してください。その答えが、最も勝ちやすい市場です。

確認クイズ(FAQ)

Q1. 介護・福祉分野を営業先として評価するとき、公的統計からどのような注意点が読み取れますか?

A. 有効求人倍率3.82倍で採用が難しく、1日あたり差額も5,189円と低い
B. 採用が容易で、粗利も最も高い
C. 需要が小さいため、案件自体がほとんどない

正解:A
解説:「人手不足が深刻な業界ほど、採用も難しい」「粗利で並べると」の章のとおりです。需要の強さと採用のしやすさ、粗利は別の軸で見る必要があります。

Q2. 建設分野へ営業する際に、必ず確認すべきことはどれですか?

A. 依頼された業務が建設業務に当たらないか
B. 現場の作業員が何人必要か
C. 足場の組立てを何日で終えられるか

正解:A
解説:「建設は『周辺職種』に限られる」の章のとおりです。労働者派遣法により建設業務への派遣は禁止されており、狙えるのは施工管理補助・CAD・現場事務などに限られます。

Q3. 新規開拓を始めるとき、最初にやるべきことはどれですか?

A. 営業リストをできるだけ多く集める
B. 既存登録者を職種・居住地・勤務時間・資格で分類し、どの業界へ何人出せるかを数える
C. 人手不足が最も深刻な業界から順に当たる

正解:B
解説:「今日からできる改善策」の章のとおりです。供給できる人材を先に数えることで、受注後の失注を防げます。

ハケンバンクについて

狙う業界を決めても、その業界の求人企業と接点がなければ案件は増えません。新しい領域の取引先を自社の営業だけで開拓するには時間がかかります。

ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の案件獲得を支援するプラットフォームです。自社だけでは接点を持ちにくい求人企業と出会う手段として、営業活動を補完する位置づけでご検討ください。

参考文献

・厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和8年7月分 参考統計表、職業別・常用(パート含む)・全国計)

・厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)

・厚生労働省「令和4年派遣労働者実態調査の概況」(2024年2月公表、事業所調査の有効回答8,686事業所)

・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)/e-Gov法令検索

この記事の監修者

ハケンバンク運営チーム

ハケンバンク運営チームは、人材派遣会社と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」の運営を通じて、派遣業界の市場動向や現場課題を日々分析しています。
派遣会社の経営者・営業担当者・コーディネーターの実務に役立つ情報を発信し、「派遣会社の経営を変える知識」をテーマに、業界の構造や最新トレンド、実践的なノウハウを分かりやすくお届けしています。

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