
事業戦略
2026/7/13
派遣会社が売上10億円を目指すための経営戦略
売上3〜5億円までは順調に成長してきたものの、その先で伸び悩む派遣会社は少なくありません。営業担当を増やしても利益が残らず、求人を増やしてもスタッフが集まらない。支店を出したものの採算が合わず、経営者自身が現場業務から抜け出せないケースもあります。
本記事は、売上10億円規模を目指す派遣会社の経営者や事業責任者に向けて、売上拡大だけではない「利益を伴う成長戦略」を解説します。結論から言えば、10億円企業へ成長するために必要なのは営業量ではなく、再現性のある経営モデルを構築することです。
売上10億円を実現する派遣会社ほど、売上高そのものよりも粗利を重視しています。派遣事業では売上が増えても、スタッフ募集費や人件費、営業コストが膨らめば利益は残りません。売上だけを追いかける経営は、一見順調に見えても資金繰りを圧迫する可能性があります。
派遣会社の売上は、「稼働人数×派遣料金×稼働時間」で決まります。一方で利益は、派遣スタッフの給与や社会保険料、採用費、営業費などを差し引いた結果として残るものです。つまり、同じ売上10億円でも利益率は会社ごとに大きく異なります。
例えば、高単価案件を多く保有し、採用コストを抑えながら高い定着率を維持している会社と、低単価案件を大量に受注し、広告費をかけ続けている会社では、利益構造はまったく異なります。経営者が毎月確認すべきなのは売上推移だけではなく、「どの案件が利益を生み、どの案件が利益を圧迫しているのか」という視点です。
指標 | 確認する目的 |
|---|---|
稼働人数 | 売上の基盤となる人数を把握する |
粗利額・粗利率 | 利益構造を把握する |
平均派遣単価 | 単価改善の余地を確認する |
採用コスト | 人材確保の効率を測定する |
就業率 | 登録者が売上へ転換されているか確認する |
契約更新率 | 安定した売上基盤を評価する |
営業担当者一人当たり粗利 | 営業生産性を把握する |
重要なのは、これらを個別に見ることではありません。例えば採用コストが高くても契約更新率が高ければ、中長期では利益に貢献する場合があります。数字同士の関係性を見ることが、経営判断の質を高めます。
「営業担当が足りない」「コーディネーターが不足している」と考える経営者は多いですが、売上が伸びない原因は人員数ではなく、組織の設計にあるケースが少なくありません。
売上3億円規模までは、経営者自身が営業や求人獲得、スタッフ対応を兼務していても事業は回ります。しかし事業規模が拡大すると、属人的な運営では限界が訪れます。担当者ごとに営業方法やスタッフ対応が異なり、ノウハウが共有されない状態では、新しい人材を採用しても成果が再現されません。
特に派遣会社では、営業担当とコーディネーターの情報分断が起きやすいという特徴があります。営業担当は求人企業の情報を持ち、コーディネーターは求職者の情報を持っています。しかし両者の情報共有が十分でなければ、マッチング精度が下がり、契約更新率やスタッフ定着率にも影響します。
つまり、営業力だけを強化しても売上は伸びません。営業、採用、マッチング、就業フォローまでを一つのプロセスとして設計し、それぞれの担当者が同じKPIを共有する仕組みを作ることが重要です。
例えば年間売上5億円規模の派遣会社を想定してみましょう。
A社は営業担当ごとに案件管理の方法が異なり、求人企業とのやり取りも個人任せです。スタッフ情報も担当者しか把握しておらず、退職や異動があるたびに顧客対応が滞ります。その結果、新規営業を続けても既存顧客の契約更新率が低下し、売上は伸び悩みます。
一方でB社は、営業履歴やスタッフ情報を一元管理し、営業担当とコーディネーターが同じ情報を共有しています。担当者が変わってもサービス品質が維持されるため、既存顧客から追加発注を受けやすくなり、新規営業に依存しない成長が可能になります。
この違いは、営業力ではなく「組織として利益を再現できる仕組み」があるかどうかにあります。売上10億円を目指すのであれば、個人の能力に依存する会社から、仕組みで成果を出す会社への転換が欠かせません。
売上を拡大しようとすると、多くの派遣会社は案件数を増やそうと考えます。しかし、案件数が増えることと利益が増えることは同義ではありません。重要なのは、どのような案件構成で売上を作っているかです。
例えば、短期案件は稼働開始までが早い一方で、契約終了も早く採用コストが繰り返しかかります。一方、長期案件は立ち上がりに時間がかかるものの、契約更新率が高ければ利益は積み上がりやすくなります。また、高単価案件ばかりを狙えば人材確保が難しくなり、逆に低単価案件ばかりでは利益率が低下します。
つまり、案件は「数」ではなく「組み合わせ」で考えるべきです。売上10億円規模を目指す会社ほど、高粗利案件・安定稼働案件・将来の取引拡大が期待できる案件などをバランスよく保有しています。
さらに見落とされがちなのが、求人企業との関係性です。新規取引先を100社開拓するよりも、既存顧客から追加発注を継続的に獲得する方が営業効率は高くなります。求人企業が派遣会社を評価するポイントは価格だけではありません。対応スピード、欠勤率、定着率、現場へのフォロー体制なども重要な判断材料になります。
売上10億円企業は営業部門だけで顧客満足を作っているのではなく、営業・コーディネーター・フォロー担当が連携し、既存顧客との取引拡大を実現しています。
売上が伸び始めると、多くの会社は営業担当者を増員します。しかし、それ以上に重要なのが業務を標準化するための投資です。
例えば、営業履歴やスタッフ情報をデータベースで一元管理すること、AIを活用して求人票や営業メールの作成時間を短縮すること、採用媒体ごとの応募単価や就業率を可視化することなどは、直接売上を生まないように見えて、長期的な営業生産性を大きく改善します。
特に中小派遣会社は、大手と同じ広告費や営業人数では勝負できません。一方で、意思決定が速く、現場改善をすぐ実行できるという強みがあります。DXやAIは「最新技術を導入すること」が目的ではなく、経営者が現場から離れても事業が回る状態を作るための手段として考えるべきでしょう。
売上ではなく粗利率・営業担当者一人当たり粗利を毎月確認している
案件ごとの利益率を把握し、高粗利案件と安定案件の構成を分析している
営業・コーディネーター・フォロー担当が同じ情報を共有できる仕組みがある
既存顧客の追加発注率・契約更新率をKPIとして管理している
採用コスト・就業率・定着率をまとめて分析している
属人化している業務を洗い出し、標準化できるものから改善している
売上10億円を目指すために必要なのは、営業担当者を増やし続けることではありません。利益を生む案件構成を作り、組織として成果を再現できる仕組みを整え、現場の判断を数字で支える経営へ転換することです。
特に中小・中堅派遣会社は、大手と同じ戦い方をする必要はありません。高い意思決定スピードや現場との距離の近さを活かし、粗利管理、案件ポートフォリオ、情報共有の3点を見直すだけでも、成長の再現性は大きく変わります。
まずは、自社が毎月確認している経営指標を棚卸しし、「売上以外の数字」で会社を見られているかを確認することから始めてみてください。
売上を伸ばすためには、営業活動の効率化も重要な経営テーマです。自社だけで新規開拓を進めることが難しい場合は、外部の仕組みを活用する選択肢もあります。
ハケンバンクは、求人企業と派遣会社をつなぎ、派遣会社の求人獲得を支援するプラットフォームです。営業活動を補完する手段の一つとして、自社の成長戦略に合わせて活用を検討することも選択肢となるでしょう。
厚生労働省「労働者派遣事業報告書の集計結果」
厚生労働省「一般職業紹介状況」
労働政策研究・研修機構「労働市場に関する各種調査・研究」
中小企業庁「2025年版 中小企業白書」
経済産業省「DXレポート」

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